何回か報告している、三位一体改革と農業がらみの反対討論。
12月議会の最後を飾ったこの討論、本会議最終日から1週間以上が経ちますが、この数日でも、議員同士で集まると必ずと言っていいほど話題になります。
「いやあ中山にこてんぱんに言われたなあ」「批判されてほんとに恥ずかしかった」「賛成した俺は恥をかいた」「くやしいが非の打ち所の無い主張だった」等々。
相当のインパクトだったみたいです。実際僕もがんばりました。
僕と反対の立場の相手方にも「大好評」のようなので、反対演説原稿を収録しておきます。
■以下、演説内容です==========
御存知の通り、この議員提案第35号は、さきほど採択された、農業団体から提出された請願第195号に基づいて提案されているものです。
私は、命にとって最も大切な食糧の重要性や環境保全・国土保全の観点から、国が責任をもって担うべき農業の基本的な政策体系とそのための制度や措置が必要であるということも理解し、支持します。また、農業の再生と発展を願うという点では、多くの議員の皆さんや請願者と同じ立場に立ちます。
しかし、だからこそ、補助金ずっぷりの建設土木系の基盤整備事業などで画一的な条件や制限がつけられて莫大な事業費となり、農家も自分にとっての必要性に疑問があるような事業にまでその何割かの負担を強いられるような無駄な事業が湯水のようにおこなわれ、結果的に真の農業の自立を阻むようなあり方など、現在の農業政策をよしとする立場には立てません。
真の農業再生に向けて、関係者のさらなる真剣な取り組みや検討に期待しつつ、本意見書には反対する立場で討論します。反対の理由を以下述べます。
この意見書は、地方6団体がまとめた改革案でリストアップされた農林水産関係補助金について、6団体の意見とは逆に、国庫補助負担金は必要不可欠だ、廃止ではなく交付金化で対処せよ、という趣旨です。
まずそもそも本議会の多数派の皆さんは、この意見書で触れられている地方6団体による三位一体改革案の実現を求める意見書を先の9月議会において諸手をあげて賛成されました。
私自身は、地方案の全体的な方向性については賛同するとともに、地方が大同団結した経緯や理念も尊重しますが、しかし当時の(市議会議長会から送付された意見書案は)慌ただしい中で作成されたものであり、無批判に「実現を求める」とまで断言してしまうと議論の余地を無くすということ、文案の内容もはなはだ未整理であることなどから、9月議会において、私も含めいくつかの会派はその意見書には賛同せず、修正案と呼ぶべき対案も提案させていただきましたが、かないませんでした。
今回、地方案について総論賛成、各論でいろいろ問題があると言うなら、多数派の皆さんは、私が指摘したことを自らお認めになったということになります。
しかし、これは総論賛成・各論云々というレベルの話ではありません。
多数派の皆さんが支持し実現を求めた6団体の地方案の立場から見れば、今回の意見書の内容は、交付金への鞍替えも含めて、地方案と対立する農水省案ほとんどそのものであります。これに対して地方団体側は「単なる衣替え」「税源移譲にはならない」と強く反発・批判しているのです。
先ほど述べたように、これは総論賛成各論云々というレベルの話ではなく、関係省庁VS地方側の考え方や方向性の根本的相違であり、このような意見書は6団体側の立場から見れば「足並みを乱す」と言われかねず、事実、国や既得権益を守ろうとする省庁や関連団体は、このような形で地方側を切り崩し、「(ほうら)地方側も言うことがバラバラだ」とか「だから補助金は必要なのだ」とプロパガンダの材料としているのです。
私自身、国が農政の基礎に責任を持つべきという立場から、当面は一部は補助金から交付金へという流れも否定しませんが、今まで通り全部必要不可欠、という立場には立てません。地方と国との対立の構図の中で、この意見書がどういう役割を果たしてしまうのか、その重大性を考えるべきです。
特にこの意見書の3行目「(地方案では)地方交付税による財政措置が前提条件になっているがそれは現実的には困難である」旨書かれています。私もまあ確かに同じ気持ちを感じないわけではありませんが、しかしその「前提条件」こそ、「絶対に譲れないもの」として地方側が強硬に主張してきたことであり、9月議会の意見書においても、皆さんが強く要求したことではなかったのですか。
一方で「これが守られなかったら絶対ダメ」と言っておきながら、一方で「いやあこれは成り立たない」などと言っていては、ケンかもできません。
三位一体改革そのものに多くの問題があり無条件に賛同できないとする立場の会派の議員の皆さんや、農業を重視する立場のわが会派の大野・岡本両議員が、中身はどうあれ農業関連事業の総額を確保する必要性を重視する立場から、前回の多数派意見書には反対、今回の請願および意見書には賛成、というのは、論理的に言えば筋が通っており、理にかなっています。
しかし地方案断固支持、農水省案にも賛成、というのは、自己矛盾、支離滅裂と言わざるを得ません。
しかも、地方6団体を構成する重要な一団体である全国市議会議長会で重責を果たされている本議会議長を擁する会派の皆さんからこれが積極的に提案・支持されるというのは、全くもって理解に苦しむものであります。9月議会の意見書で何を求めたのか、今回の意見書でいったい何を求めようとしているのか、きちんと検討すらしていないと言わざるを得ません。
もちろん、事態や情勢の推移・変化に伴い、議会は過去の態度と異なる立場を取りうることは充分にあり得ます。しかし、今回の経緯で言えば、むしろこの意見書の元となった請願が危惧していた地方案は骨抜きとされ、国会のいわゆる農政族議員と言われる方々が高笑いするシーンがテレビで報道されるような方向へと向かっています。その経緯から単純に考えても、この内容は的はずれであり、仮に文句をつけるとしても対象が間違っているし、時期も逸しています。
今むしろ必要なのは、地方案の理念を根底から覆すような主張ではなく、むしろ、三位一体の美名のもとで進められている、国の農業政策そのものへの批判と提言です。
今、農村ではどのような事態が進行しているか。−一連の三位一体改革の流れの中で、基盤整備事業への補助金などにはほとんどいっさい手がつけられず、例えば県の農村改良普及センターなど、地域の農家と直接接しながら営農をサポートしているような国の制度は廃止され、それに伴い改良普及所設置を義務づけていた法律や条令も改廃、普及所への交付金は廃止、現場では、県の政策責任もありますが、統廃合・合理化されつつあります。つまり、ゼネコン予算は確保、生活営農密着予算は廃止という実態です。
そういう意味では、地方側も単に税源移譲を求めて一般財源を拡大・確保するための綱引きではなく、本来の目的である「地方の自立」・「農業の自立」に向けて積極的な提案へと踏み込んでいかなければなりません。
そうした観点も含め、必要性に疑問のあるような事業などを再整理し、真に地域農業を自立させるため農業政策を再構築するという方向性から考えても、このような、無批判的に「補助金は必要不可欠」とする意見書の考えは、地方分権の流れからも逆行するものであり、反対するものです。
また、三位一体改革の地方案を推進しようとする立場の多くの議員諸氏の混乱・矛盾した立場を批判し、皆さんの今後の混乱を、老婆心ながら心よりご心配いたします。
今、地方案を強く批判するこの意見書を、市長はじめ執行部の皆さん、地方6団体、市議会議長会、そして本議会の議長も、複雑な想いで、固唾を飲んでその動向を注視していると思います。
議長の複雑な心中を心よりお察し申し上げ、反対討論を終わります。
(↑一同、爆笑・苦笑の渦、拍手喝采。演説は執行部や議長席を背におこなうのですが、証言によれば議長も苦笑、執行部も一様にウケてたとのこと)

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