11月29日の土曜日は、浦尻貝塚の現地説明会が終わった後、クリさんのご案内をいただいて、念願の初発神社スダジイ林に行くことができました。
一度きちんと観察しておきたい北限のスダジイ林、ご案内頂きましたクリさんには、感謝感激です!!!
なにせ、スダジイには特別敏感な僕なもので、とっても嬉しかったです。
初発神社は「はじめじんじゃ」と呼ぶそうです。
初発神社は、南相馬市原町区江井(えねい)に所在し、常磐線磐城太田駅の南部に鎮座されておられます。
地形的に見ると、太田川により開析された平野部の南側丘陵裾部に立地し、縄文時代前期の海進時には、近くまで入り江状に海水が入り込んでいたものと考えられます。
縄文時代後期から晩期にかけては、小高区の塚原から太田川河口まで浜堤が延び、現在の磐城太田駅あたりまでは潟湖となっていたのではないかと、僕は推定いたしました。
ホントかな???
たぶん、ホントでしょう。
このような砂泥性の内湾に臨んだ丘陵斜面に暖温帯常緑広葉樹のスダジイ林が自生するという姿は、いわき市の海岸線ではごく普通に見ることができます。特にいわき市神谷あたりはそうでなかったかなと思います。
初発神社スダジイ林は本邦北限のスダジイ林ということで、福島県の天然記念物に指定されておりますが、かつて、縄文時代から弥生時代にかけては、相双地区海岸に臨む丘陵縁辺には断続的にスダジイ林が自生していたのではないかと考えています。
まず、初発神社のスダジイ林を見ましょう。
初発神社の入口です。
昭和44年に福島県の天然記念物に指定されたそうです。
これが、樹齢700年と推定されているスダジイ古木です。本当に太い幹廻りですね。
樹冠を見上げました。
スダジイ独特のモッコリとしたドーム形樹冠が、下から見上げてもわかります。
太い古木の主幹に、ドーム形樹冠群。
ダイナミックな樹形ですね。
古木の樹肌には、ノキシノブが着生しておりました。
林床には、ヤブコウジが群れています。
すなわち、ヤブコウジ−スダジイ群集がここに残されているわけですね。
拝殿に向かう階段の両側にもスダジイが林立しております。
おそらくは実生更新によるものでしょう。
比較的若いスダジイの樹幹。
独特の樹肌です。
初発神社の拝殿に参拝いたしました。
拝殿近くの素敵なスダジイ高木の樹冠です。
初発神社は、相馬氏の一族である江井氏の護神であり、妙見尊をお祀りしているそうです。
江井氏は永仁年間(13世紀末)に、主君相馬氏の命により常陸国相馬郡より奥州行方郡に移り住み、江井村周辺を統治したそうです。
初発神社は13世紀末から14世紀初頭にかけて建立されたのでしょうか?
今から600年も昔の事ですが、その頃にはここにスダジイ林が自生し、初発神社建立後には「鎮守の森」として伐採されずに現在に至っているのかもしれませんね。
もし、古木の樹齢が推定どおり700年だとすれば、江井氏がここに初発神社を建立した時には、その古木はすでに立っていたということになります。
そうだとすれば、素晴らしい歴史遺産でもありますよね。
拝殿から参道を眺めました。
参道の両側にスダジイ林が広がっていることがわかると思います。
参道の階段と比較しても、スダジイ古木の太さを実感して頂けると思います。
ここの鎮守の森では、スダジイはご神木。
他に暖温帯常緑広葉樹の高木としてはアカガシを見ることができます。
福島県浜通りにおけるスダジイ林分布の研究は、僕のライフワークです。
今年までに、楢葉町、いわき市末続・久ノ浜・沼の内・薄磯・豊間・江名と、鮫川河口のいわき市植田町について観察して歩きました。
双葉郡の楢葉町では、北田地区にスダジイの巨木(おそらく樹齢500年以上)があり、北田や井出地区にスダジイの高木が点在し、富岡町と接する波倉地区には波倉稲荷神社のスダジイ樹叢、さらに波倉地区の丘陵にはスダジイの高木が点在しています。すなわち楢葉町では、かつては海岸に沿った丘陵にスダジイ林が普通にあったことを示しているのです。
ところが、楢葉町からここ南相馬市原町区の間には、スダジイがどのように分布しているか記録されておりません。
これも、これからの課題なのですよね。
おそらく、スダジイの単樹や亜高木、低木など、点々とその痕跡はあると思いますので、これから注意して調べたいと思います。
スダジイなど暖温帯常緑広葉樹の観察は、落葉広葉樹の葉が落ちるこれからの季節が最も良いのです。
また、スダジイについて言えば、花が咲いてスダジイの樹冠が黄色く輝いて見える5月中旬も最高です。
これからが楽しみです!!!