このたびの御嶽山噴火によって亡くなられた方々の御霊に、謹んで哀悼の誠を捧げたいと思います。
御嶽山頂上付近で火山噴火により遭難された方々の御霊に報いることは、同じ悲劇を二度と起こさないようにすることだと思います。
ご案内のとおり、日本は火山列島です。
火山の近く、または火口に至近距離という観光地が数多くあります。
登山ルートが火口の縁とかカルデラの外輪山という例も、当たり前のようにあります。
火山地形が観光や登山の売りになっています。
しかし、火山である以上、いつ噴火しても不思議でありませんよね。
火山噴火は自然現象です。私たち日本人は、火山と共に歴史を歩んできました。
これ以上火山噴火により遭難者を出さないためにはどうするかといえば、やはり、火山のことを知識として頭に入れておく必要がございます。
そこで、今回は、私たちの郷土である福島県の火山について調べてみました。
専門的ながら分かりやすい論文を入手することができました。
地質学雑誌 第117巻 補遺 33−48ページ 2011年9月
磐梯・吾妻・安達太良:活火山ランクBの三火山
長谷川 健、藤縄明彦 伊藤太久
であります。
以下のアドレスをクリックしていただきますと、PDFファイルで読むことができます。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/geosoc/117/Supplement/117_117.S33/_pdf
読み終えて、大変勉強になりました。
磐梯山・吾妻連峰・安達太良連峰は、百数十万年前からの火山活動が確認され、現在も火山活動が継続しているのです。
日本列島における日本人の歴史は、たかだか数万年前の旧石器時代からなのです。
火山は、百数十万年前または数十万年前から活動を開始し、溶岩台地や火山錐を盛り上げ、山体崩壊でカルデラを形成、新たな水蒸気爆発、そういった活動を繰り返しています。
火山活動の間には、数万年間の休止期間があります。しかし、その後、大規模爆発噴火を起こしています。安達太良の沼の平火口がそうなのです。
「風林火山」には「動かざること山の如し」というくだりがありますが、数万年間静かだった山が大規模噴火しているのです。
「風林火山」は武田武士ですが、甲斐の山(八ヶ岳)は、「風林活火山」と言えるでしょう。
上記論文を読んで、郷土福島の活火山を巡ってみました。
吾妻連峰の一切経山、大穴火口からは、今でも水蒸気が噴出しています。
名峰吾妻小富士は、約6000年前に噴火しました。
「魔女の瞳」と呼ばれて登山者をうっとりさせる五色沼も、噴火口なのです。
古一切経火山錐の山体崩壊で形成された浄土平爆裂カルデラ(約15万年前)には、新たに、桶沼火口と吾妻小富士火口が見られる火山錐が形成されました。
吾妻小富士火山の噴出物が桶沼火口を覆っているので、桶沼火口が噴火した後に吾妻小富士が噴火しています。
ちなみに、吾妻小富士が噴火した6000年前は、金山町の沼沢沼火口も大爆発しているのです。沼沢沼火口噴火は半端ない強烈な大爆発で、会津美里町一帯は噴出したスコリアに覆われてしまいました。
吾妻小富士爆裂火口を一周してみました。
吾妻小富士から一切経山を眺めますと、浄土平レストハウス北側に火口が残されているのが分かります。
浄土平の北側には、古一切経火山錐の山体崩壊で形成された浄土平爆裂カルデラ(約15万年前)の北壁が残されています。
硫黄平では、今でも火山ガス(硫化水素)が出ています。
こうやってみると、浄土平周辺は激しい火山活動の跡がいっぱい残されています。
噴火口に番号を付けてみました。
1は、明治時代1893年に噴火した火口。
2は、大穴火口で、現在も火山活動が継続中です。
3と4は、レストハウス北側に残る火口です。
こうして見ますと、吾妻連峰一切経山周辺は、やはり、活火山活動中という意識が必要ですね。
こちらは、安達太良連峰、沼の平火口です。
約12万年前の大爆発によるものです。
1900年にも水蒸気爆発がおこり、72名の方が亡くなっておられます。
現在も火山活動継続中です
そして、磐梯山です。
1888年7月15日午前7時45分に大爆発しました。
461名の方が亡くなっておられます。
お隣の県では、蔵王山の御釜に火山活動の兆候が見られるとの情報が発表されています。
以上の写真をご覧になりながら、冒頭に紹介いたしました論文を読むと、
福島県の火山をともなう山岳観光地は、潜在的噴火リスクが軽視できないことが分かります。
このことを踏まえたうえで、火山情報に注意しながら、安全に登山、観光なさっていただければと願います。