数年前から、お寺さん建築の写真を撮ってきまして、
ここで、文化財保存の立場から提言したいことがありまして、
いくつかの寺院建築における向拝装飾事例を紹介したいと思います。
向拝とは、仏堂屋根の中央(例外あり)が前方に張り出した部分で、多くの場合、参拝する場所となっています。言ってみれば、お堂の正面で、向拝を支える柱間をつなぐ貫材を中心として装飾が施されています。
僕は、仏教建築の専門家でありませんので、具体的な説明はできませんが、その様子を写真でご覧いただければと思います。
写真をクリックしますと1200ピクセルの拡大画像をご覧いただけます。ぜひクリックしてご覧ください。
宮城県松島町の五太堂です。慶長九年(1604年)の建築。桃山様式のお堂です。
三間の中央に一間幅の向拝が造られています。向拝柱をつなぐ貫の中央に、透かし彫りの蟇股が見られます。両側の木鼻には獣面が彫刻されています。シンプルな装飾です。
山形県寒河江市の慈恩寺本堂の向拝です。元和四年(1618年)の建築。ヒメコマツを建築材としています。
茅葺屋根で、一間幅。向拝柱をつなぐ貫の中央に、透かし彫りの蟇股が見られます。
慈恩寺境内にあります、宝蔵院表門です。門に納められた祈祷札から、慶長十八年(1613年)より前の建築と推定されています。
慈恩寺阿弥陀堂の向拝です。
慈恩寺薬師堂の向拝。
慈恩寺太子堂の向拝。
阿弥陀堂などは、延文元年/正平十一年(1356年)に焼失しておりまして、再建は本堂再建後の江戸時代と思われます。
山形県山形市の宝珠山立石寺(山寺)の根本中堂向拝です。
延文元年(1356年)の建築で、建築材の六割がブナ材を利用しています。
こちらもシンプルな装飾です。透かし彫りの蟇股が見えます。
山形県高畠町の高畠文殊様境内にあります観音堂の向拝。
こちらは、唐風の向拝(唐破風)となっていまして、すばらしい彫刻の装飾が施されています。
福島県柳津町の福満虚空蔵尊円蔵寺本堂の向拝で、唐風の向拝(唐破風)となっています。
文政十三年(1850年)の建築で、やはり素晴らしい彫刻の装飾です。
同じく、福満虚空蔵尊円蔵寺仁王門の唐破風です。
山形県山形市の宝珠山立石寺(山寺)の開山堂の唐風向拝(唐破風)です。
竜の浮彫的装飾が素晴らしいです。
福満虚空蔵尊円蔵寺本堂の例からして、江戸時代後期の建築でしょうか。
そして、いよいよ今回の本題です。
福島県本宮市の和田山常光院岩角寺毘沙門堂の唐風向拝(唐破風)装飾です。
これが素晴らしいです(^^♪
唐破風屋根最前面に施された浮彫りの竜。
そして、
三段にわたる浮彫装飾があり、
大きな竜の彫刻は、宝珠山立石寺(山寺)開山堂の唐風向拝に施された竜を上回る秀作だと思いました。
ぜひ写真をクリックして拡大画像をご覧ください。素晴らしいですから。
和田山常光院岩角寺には、ほかに、
那智堂、
奥の院阿弥陀堂などの、すぐれた仏教建築がございます。
和田山常光院岩角寺の毘沙門堂や那智堂、奥の院阿弥陀堂などは、江戸時代後期から幕末期の建築と思われますが、素晴らしい仏教建築美術、何とか福島県の文化財に指定して、将来的に保存してほしいと願っています。
岩角寺の山内は、「岩角山」として、福島県の名勝及び天然記念物に指定されていますが、毘沙門堂などの素晴らしい建築美術についても、今回紹介した各寺院の向拝装飾などと比較しても、県の重要文化財にする価値はあると思います。
そして、僕たちの故郷である福島県の本宮市にも、このような素晴らしい仏教建築美術があることを、県民の皆様に知っていただきたいと願い、今回ブログアップいたしました。
仏教美術の専門的知識はありませんが、これから少しずつ調べていきたいと思います。
とりあえず、今回は、いくつかのお寺の向拝を眺めてみましたが、様式的に、唐風向拝(唐破風)に精緻な浮彫装飾が施される例は比較的新しく、江戸時代後期〜幕末期のようですね。しかし、新しくとも、文化財としての価値は高いと思っています。
ちなみに、唐風向拝(唐破風)の段階になりますと、素晴らしい竜の彫刻が施されるようです。唐風向拝(唐破風)は竜に守られているのかもしれませんね。