2006年11月30日撮影 以下同じ
今朝、以前から気になっていた富岡町小浜の子安観音の建物を記録した写真を探していましたら、ようやくフォルダが見つかり、中の写真を確認したら、照葉樹の写真がかなり入っていました。その中に、上の写真のような掌状複葉でクチクラ層が発達していて、やや肉厚な葉の写真が数枚ありました。
もしかするとと思って調べたら、やはり、ムベの葉でした。
ここは、子安観音様の北西に残された樹叢で、照葉樹の林となっています。スダジイやシロダモなどの他、福島県のRDBで準絶滅危惧種であるヤブニッケイの自生地北限にもなっています。
これらの写真は、平成18年11月30日に撮影したものでした。
今から12年近く前のことでした。
あの頃は、双葉郡楢葉町から富岡町にかけての照葉樹の調査を行っていて、その日は、子安観音様の照葉樹林にヤブニッケイの写真を撮りに行ったのでした。
その時、目についた照葉樹の葉を手あたり次第撮影していました。種が分からないものは、帰宅してから写真と図鑑を見比べていたものでした。
その中に、ムベの葉の写真が混ざっていたのです。
以上が平成18年11月30日に撮影したムベの葉の写真です。
12年間、今朝の今朝まで、子安観音裏の林にムベが自生していたことなど分かりませんでした。
ただ、このように複数枚写真を撮っていたということは、その当時、種類は分からなくとも、後から調べようとして記録していたのですね。
すっかり忘れていました。
ムベが貴重種だということは知っていましたが、富岡町で確認できるとは思ってもいなかったのです。
ムベはアケビ科ムベ属のツル性木本植物で、トキワアケビとも呼ばれています。トキワは常葉、常緑広葉のことですね。
福島県RDBでは、絶滅危惧U類に指定されています。
そして、
『福島県植物誌』1987年によれば、「〔浜〕双葉郡富岡町 太平洋側北限 ごくまれ」と記載されていまして、『ふくしまの滅びゆく植物たち』2006年によれば、いわき市・富岡町・原町市に分布していることが記されています。
僕が初めてムベの花を観察できたのは、
この写真のみ2016年5月撮影
平成28年の5月に、福島市の花見山公園で見たのが初めてでした。
そして、なんと、
二本松市岳温泉の温泉「空の庭」の露天風呂の脇にムベが植栽されているのです。
ここは日帰り入浴が出来て、たまにひまわり君と行くのですが、露天風呂に入るたびにムベの葉を眺めていました。
そんな記憶が潜在的にあったから、今朝、写真を見て、12年ぶりにムベと分かったのかもしれませんね。
いずれにせよ、『福島県植物誌』と『ふくしまの滅びゆく植物たち』に記載されたムベの分布の富岡町とは、ここ富岡町小浜の子安観音様の照葉樹林を指しているものと考えていいと思います。湯澤陽一先生も『ふくしまの滅びゆく植物たち』で「福島県では貴重な林である」と述べておられます。
子安観音様は、富岡川河口の左岸段丘の上に鎮座されています。
2011年3月11日の大震災のときは、津波被害を受けました。
富岡町のビュースポットだったロウソク岩も倒壊しました。
懐かしい富岡漁港。
そして、
子安観音堂の床下まで津波が押し寄せたそうです。
現在、お堂の中の御本尊仏像はレスキューされて、「まほろん」の仮保管施設の中に安置されています。
地元では、お堂の再建計画があるそうです。
もしかすると、今朝、約12年ぶりに子安観音様の林の中に貴重なムベの株があることを知ることが出来たのは、子安観音様のお導きかもしれませんね(合掌)
このムベも、被災地の貴重植物として、もし現在も無事に生きていれば、今後大切に保存していかなければなりませんね。
いつか、僕も現地に行ってみたいです。
なんとか子安観音様の照葉樹林が無事に残されていることを願うばかりです。
追記:
ムベにつきましては、平成23年(2011年)2月28日に楢葉町で開催しましたコセリバオウレン観察会の折、その群落地にムベがあることをカエデさんに教えていただいていました。
あの時の写真がブログに掲載されていました。
http://green.ap.teacup.com/naraha/1195.html#readmore
その後、大震災が発生して、すっかり記憶から飛んでいました。
何か、楢葉でカエデさんにムベがあることを教えていただいたことを思い出しまして、ようやくかつての記憶と結びつきました。
カエデさん、あのときはありがとうございました♪
楢葉のムベも再確認する必要がありそうですね。