1992年にリオデジャネイロ市で開催された環境と開発に関する国際連合会議(地球サミット)では、
「生物多様性」は次のように定義された:「陸上、海洋およびその他の水中生態系を含め、あらゆる起源をもつ生物、およびそれらからなる生態的複合体の多様性。これには生物種内、種間および生態系間における多様性を含む」。
これは生物の多様性に関する条約で採用された定義であって、「生物多様性」に関して法的に認められた唯一の定義と言えるものに最も近い。この条約には、アンドラ、ブルネイ、バチカン、イラク、ソマリア、東ティモール、アメリカ合衆国を除く全ての国が締約国として参加している(ウィキペディアより)。
「企業価値は『エコパワー』から『生物多様性』へ」という
山根一眞(やまねかずま)氏の講演(イイノホールにて)を9月13日に聴いた。
彼は温暖化対策と「生物多様性」は車の両輪であることに言及し、その実態をブラジルのアマゾンの映像で解説した。
温暖化は気象変動による災害をもたらすだけでなく、「生物多様性」の破壊も進めることを述べ、これからの農業のあり方として
「アグロフォレスト」(注)について語った。
今までの農業は、森林を切り開いて農地をつくり開墾すると最後には土の劣化が進み、農薬や栄養剤の過度の使用が必要になっていた。そこで「アグロフォレスト」によって森林の中で農業を行い、生物多様性を利用する農法がアマゾンで進んでいることを示した。特に、これによって腐葉土が多様な生物と共に活性化し、コショウやトロピカルフルーツの混合栽培に成功している。そんな中でトロピカルフルーツの「アサイー」の日本への輸入急増が目立っている。
(注)
「ムトウの夢・地球通信 report18」を参照すると、「アグロフォレスト」の具体的説明と写真を見ることができる。
http://www.mutow.com/eco/2sinrin_info/4amazonRepo/report_22.html
「温暖化後はこんな夏?」(朝日新聞8月29日30日付け朝刊)が載った。
では、今年の猛暑は熱中症や農作物被害が出始めたが、温暖化が進めばこの程度では済まされないことを説明している。
最高気温が30度以上の日を真夏日といい、その日数をグラフにしたものが次である。
80年代後半から急増し、今では70年代の約3倍になっている。
大阪市ではO157の集団感染が相次いだが、食中毒、デング熱、日本脳炎、西ナイル熱が流行する可能性も上がっている。
「二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出を減らして温暖化の進行を食い止めることは大事だが、一方で、海面上昇に備えて堤防を高くするなど実際に進んでしまう温暖化の影響を回避するために社会や経済、ライフスタイルを変える『適応』も必要とされる。・・緑化や水場を生かした都市計画やライフスタイルから見直さなくてはならない」。
では、「食卓にも忍び寄る異変」について述べている。
九州では1等米の比率が、80年代半ばで80%程度であったが、06年で28%にまで落ち込んでいる。
コメが白く濁る高温障害、リンゴの着色不良・日焼け問題、ミカンの色づき悪化・皮と果肉が分離する症状、ブドウの着色不良、トマトの実つき悪化・・。
「温暖化が進むのにあわせて、南国の気候にあった農作物に切り替えればいいというわけでもない。『温暖化は暑くなったり寒くなったり激しい気象変化を繰り返しながらじわりと進む』(杉浦俊彦・果樹研究所)」。
「温暖化でやせる海」(朝日新聞8月31日付け朝刊)は、北太平洋の「異変」を述べている。
温暖化によって海面の温度が上がり、海面近くの海水が軽量化し、「沈み込み」が減り「かき混ぜ」が不十分になる。その結果、深層の栄養塩(植物が成長のために取り込む無機塩類の総称)が海面に届かない。このために、プランクトンが減少し、漁場としての能力が欠け始めている。
この現象は熱帯や亜熱帯だけではなく、世界有数の漁場である三陸沖でも進んでいる。食べる魚類に影響しうる。
「海水が観測史上最小」(しんぶん赤旗9月16日付け日曜版)で、97年と07年の状況が比較されている。
北極海の海氷面積は、地球規模の気候変動や温暖化の象徴として注目されている。これまで、年0.6%ずつだった海氷の減少が97、98年に年25%もの減少をして回復していない。
では、以上のような実践や実態を通じて、私たちは何を学び、どのように行動すべきかが今問われている。
成長一辺倒の経済システムから、農・林・水産物の自給率を上げるための都市部住民のそこへの係わりを増やし、企業での労働時間を減らしても最低限の生活を保障できるシステムに切り替える。
これによって、休みの何日かを自給率向上のために生産に参加し、楽しみながら自らの生活の糧を幾ばくか現物支給される仕組みつくりが重要となる。休日の農業活動は、いろいろな地域での実践として、聞く機会が増えてきた。
地方公務員はその地域の生産実態をしっかり把握し、研究し、その実態に合わせた都会人の支援を計画しなければならない。そのためには、その地域の産品安全性は当然だが、気温変化、海水温変化、プランクトン量測定、猛暑や寒冷対策、流通研究等を地元生産者と一体になって整理しなければならない。素人の都会人が支援し易くなる方策を明確にする必要が地方公務員に課されていると思う。農・林・水産業の支援をしたがっている人たちは間違いなく増えている。そして、そこからの癒しも欲しがっている。それを実際行動に呼び込む地方公務員の役割に期待したい。
同時に、原発推進による致命的な環境破壊と人間も含めた動植物の遺伝子にまで大きな影響を与え「生物多様性」を否定する放射線被害をなくさせるためにも、普段からの節電に向けた行動を自覚的に行うことが私たちにも課されている。
以上のエコな行動にとって、最悪なものが戦争と経済格差による貧困である。戦争は環境だけでなく人の心も腐敗させる。貧困は社会全体の状況を見る時間から庶民を排除し、目先のことに追われる生活を強いる。如何なる戦争にも加担しない姿勢と貧困を撲滅する社会構築こそ、エコ活動を押し止めない大事な側面である。
全てのエコ活動と戦争反対と貧困撲滅に
関係性を深めていきたい。

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