2016/11/25

珠玉の平安サスペンス・・・『応天の門』  マンガ
 

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■ 在原業平が歌に詠んだ「都鳥」とは・・ ■

スカイツリーの近くにある業平橋。「業平」とは平安の貴族、在原業平(ありわら なりひら)の事。彼がこの地を訪れた折、「都鳥」という名の鳥を見て、都を偲んで読んだ歌に由来します。ちなみに「言問橋」もこの歌が由来です。

名にしおはばいざ言問はむ都鳥わが思ふ人はありやなしやと
『古今和歌集』

「都に置いてきた愛しき人は今どうしているのだろう」という恋の歌ですが、ちなみに都鳥(ミヤコドリ)とはユリカモメの事。

実は現在「ミヤコドリ」と呼ばれているのは別の鳥。

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チドリの仲間ですが、あまり風雅ではありません。

何故、「都鳥」がユリカモメであると言われるかと言えば、伊勢物語で「都鳥」の事を「「白き鳥の嘴と脚と赤き、しぎの大きさなる、水の上に遊びつつ魚を食ふ。」と説明しており、その姿はまさにユリカモメ。

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実は現在では京都の鴨川でも普通に見られるユリカモメですが、京都に現れる様になったのは1970年代から。昔は東国特有の鳥だった。


■ 「平安きってのプレイボーイ」の業平と、「平安きっての切れ者」の道真がタックを組んだら ■

在原業平は桓武天皇の孫にあたり高貴な身分ながら、薬師の変によって嵯峨天皇の子孫に天皇家の血筋が移ってからは臣籍降下し、在原氏を名乗っています。

平安時代のプレイボーイ物語の『伊勢物語』のモデルとも言われ、様々な浮名を流した様ですが、歌の才能もひとかたならぬものが有りました。

ちはやぶる 神代もきかず 竜田川 からくれなゐに 水くゝるとは (『古今集』『小倉百人一首』)

そう、今を時めく「ちはやふる」は彼の読んだ歌だったのです。

業平の時代、都の政治は藤原氏に牛耳られていました。伊勢物語の「昔男」は藤原氏に抵抗する反体制の貴公子の物語ですが、実際の業平は藤原氏とも姻戚関係にあり、政治の中枢から外れる事無く生涯を送ったようです。(Wikipedia参照)


さてさて、ようやく本日紹介する『応天の門』の話の準備が整いました。

灰原薬さんが「コミック@バンチ」で2013年から連載するこの作品、1巻目の宣伝文句は「平安クライムミステリー」だったと記憶しています。表紙は端正な絵なが、もしや中身は・・・あんなこんなのエログロ作品かと思って買ってみたら、何と良質な歴史ミステリーだった。

平安きってのプレイボーイの在原業平と、平安きっての博識の菅原道真がもし親友だったら・・といった「もう一つの歴史」的な作品ですが、作者の灰原薬さんは元々はBL作家だけに、発案された時は「業平が攻めで、道真が受けで・・・ナリミチなんて・・・ぐふぅふぅ・・・」って感じだったのではと勝手に想像しています。(スミマセン)

年齢的には業平の方がかなり上なので、実際の歴史で二人にあまり接点は無かったと思いますが、共に「藤原氏に抵抗していた」という事が接点となって、この物語が生まれたものと思われます。

内容的には、京都の護衛の任についている業平が、京都で起こる難事件や不思議な事件の解決を道真にお願いするという、ミステリーの定石。ただ、起こる事件が今でこそ不思議で無い事が、科学的知識が無い平安では「妖怪」だの「祟り」だのと解釈された訳で、それを博識の道真が唐由来の科学知識を駆使して解決するというのが、何ともキモチの良い。

■ 平安時代をリアルに感じられる素晴らしい作品 ■

現在の私達は歴史の教科書や古典作品を通して平安時代を知るしかありません。ビジュアル的な平安はTVのドラマや映画の影響を強く受けています。そこには薄っすらと「歴史フィルター」が掛かっていて、リアリティーが欠けています。

しかし、『応天の門』はかなり現代的な表現の内容で、着物や風物、風景や単語などは歴史的な背景をしっかり踏まえていながらも、人々の感情は現代人のそれに近い。政争を繰り広げる藤原氏と抵抗勢力のやり取りも、現代劇の様でリアリティーがあります。

「歴史物」に共通していた「当時の人をそれらしく」という無意識の規制が無い事で、歴史上の人物をこんなにも生き生きと描けるという好例かと。

ただ、現代人の持つ自我と、平安時代を生きた人達が持つ自我が当然同じはずは無く、死生観や世界観も異なっている事は確かで、それを敢えて無視できるのは作者がBL的な嗜好の持ち主だから・・・なんて妄想してしまいます。

■ 女の子キャラが可愛い、業平がイケメン、道真がツンデレ ■

この作品の大きな物語は藤原氏とそれにう抵抗する業平達の勢力争い。藤原氏がいろいろとめぐらす策略を、道真の知識と機転でクリアーしていうというのが醍醐味。(実際の業平は藤原氏と宜しくやっていたらしいのですが)

単行本では各話の後に歴史研究家で東京大学教授の本郷和人氏による分かりやすくて面白い解説まで着くので歴史好きにはたまらない作品。単行本は累計で50万部を超すヒット作となっています。

一方、漫画好きには女性キャラが綺麗でカワイイ、業平がイケメンでダラシナクテ素敵。道真のツンデレがかわいい・・・なんて魅力も。

とにかく「大人の読書」に加えて頂きたい!!
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