2019/3/28

レバレッジが低ければバブルは崩壊しないのか・・・問題は「心理」  時事/金融危機
 

■ レバレッジとは ■

リーマンショックの時に、危機の要因の一つとされた「レバレッジ」。日本語に訳すと「梃子(テコ)」ですが、「信用取引」と考えると分かり易い。「自己資金1に大して何倍の取引をするか」という倍率です。

リーマンショック時に「ヘッジファンドが過大なレバレッジを取って危機が拡大した」と言われましたが、当時のヘッジファンドのレバレッジの平均は2.6倍に低下していました。

ヘッジファンドが過大なレバレッジを取っておるという誤解は、1999年の「LTCM破綻」当時のヘッジファンドが生み出したものです。最大で28倍のレバレッジを掛けていた。しかし、その反省から、ヘッジファンドは過大なレバレッジを掛けなくなります。

リーマンショック時に過大なレバレッジを掛けていたのは投資銀行です。株式時価総額に対する投資額(レバレッジ)は、2007年6月に10.4倍。2009年4月で40、7倍となっています。(2009年は株価下落の影響が有るでしょう)

リーマンショック後に投資銀行は商業銀行に吸収される形で形式的には消滅します。ボルガールールによって過大なレバレッジも取れなくなったので、「リーマンショックの様な危機は再び起こる事は無い」と主張する人達が少なからず居ます。


■ リーマンショックで最大のレバレッジを掛けていたのはサブプライム層 ■

投資する側のレバレッジばかり話題になりますが、実は私達が組む住宅ローンもレバレッジが掛けられています。自己資金10万円で1000万円のローンを組めば、レバレッジは10倍です。

リーマンショック時にレバレッジを最大に掛けていたのはサブプライムローンで住宅を購入していた低所得者層です。彼らは貯蓄など持っていませんでしたから、レバレッジは無限大でした。しかし、住宅バブルによって住宅の担保価値が上がった分だけ借り入れが出来たので、住宅価格が上昇している間はローンの返済が可能でした。さらに、最初の数年はローンの返済額が抑えられていたので、破綻が先伸ばしされた。

■ 危機の本質は過剰な債権需要 ■

何故、サブプライム層にまでローンを組ませたかと言えば、金融市場が金融商品の元になる住宅債権を求めていたから。

サブプライムローンや、その他の住宅債権は、MBS(受託ローン担保証券)にまとめられ、金融市場で売買され易く加工されました。「多くのローンを合体させたMBSは「大数の原理」によって破綻しない」と信じられていたので、MBSは飛ぶように売れます。

さらにMBSやその他の社債やカーローンなどの担保証券とごちゃまぜにしたCDOという金融商品も作られます。「ごちゃまぜにすれば「大数の原理」によって破綻リスクが減る」と信じられていたので、これらのCDOは高い格付けが付けられました。

「大数の原理」とは高等数学の用語で、「様々なリスクと持つ債権を一まとめにすると、たとえ破綻が起きても3%以上の破綻は起こらない」という数学的な原理です。しかし、実際には「破綻した債権が含まれる」だけで金融商品としては「傷物」になります。自分の持つMBSやCDOに、どれだけ破綻した債権が含まれるか分からないからです。人々は我先にこれらのMBSやCDOを売ろうとしますから、市場では価格が暴落します。

「大数の原理」は数学的には正しくても、「人の心理」が支配する市場で適応できるものでは無かったのです。そう、高格付けを支える「おまじない」だったのです。

いずれにしても、投資会社は「低リスクで儲かる」と信じて高いレバレッジを掛けて、MBSやCDOの取引を拡大し続けました。当然、それらの元となる債券不足するので、サブプライム層にまで住宅ローンを組ませて、債券を量産したのです。

■ 「破綻した債券が含まれる」と金融商品は価値を失う ■

上記の様に、様々なリスクの債券を合成した金融商品は、リスクの高い債券の一部が破綻し始めると一気に価値を失います。

リーマンショック時に暴落したMBSやCDOですが、冷静に破綻率を計算すれば、3%以下に抑えられていた可能性は大きい。しかし、ゴチャゴチャに合成されたMBSやCDOから、破綻した債券を抽出する事は事実上不可能で、結果的に全てのMBSやCDOが「傷物」と判断され、価値を失いました。

一次的に価値を失ったMBSをFRBが大量に購入します。危機が去れば、これらのMBSはきちんと金利見出しますから、再び価値を取り戻します。FRBは時期を見て、購入したMBSをちょっとずつ市場売却して行きました。

「心理」が支配する市場は、危機に際しては「合理的判断」を失います。これは生存競争において生物が獲得した本能で、「先に逃げれば個体が助かる確率が高くなる」からです。しかし、金融市場では、皆が逃げれば市場が崩壊して、危機は全体に及びます。これが「〇〇ショック」の本質です。

■ 現在拡大しているローン担保証券(CLO)のレバレッジ ■

現在、サブプライムローンと同様に危機が噂されるCLO(ローン担保証券)。

アメリカの中小事業主などが借り入れたローンをまとめて証券化した金融商品です。MBS同様に、様々なリスク(金利)のローンを合成して作られいます。

ジャンク債と違い、きちんち担保を設定したローンが元である事から「比較的安全」とされていますが、ローン自体の平均レバレッジは5%程だそうです。これはサブプライムローンの無限大に比べれば、かなりマトモに見えます。

FRBの金融緩和でアメリカの金利も下がっていますので、アメリカのローン金利も当然下がりました。信用力の高い企業のローン金利は低くなります。これらのローンを集めて証券化しても大した金利は付かないので金融商品としては魅力が有りません。

そこで、信用力の中くらいのローンと、信用力が低いローンと、信用力の高いローンを適当な配分で組み合わせる事で、魅力的な金利の金融商品としたのがCLOです。

CLOに飛び付いたのが日本の金融機関です。特にゆうちょ銀行や、農林中金、地銀、さらにはメガバンク。運用力の低い日本の金融機関は、「低リスクでそこそこの金利」といううたい文句に弱い。

■ FRBも警告を発したCLOの過剰発行 ■

日本の資金を吸い上げる事で拡大したCLO市場ですが、昨年末にFRBが警告を発しています。それを受けて金融庁も主な金融機関のCLOの保有状況を確認しています。

CLOのリスク要因はFRBの利上げです。ローンを借りた中小企業は「借り換え」を繰り返して事業継続しています。いわば「自転車操業」に近い。FRBの利上げによって、これらの企業の金利負担は借り換えの度に増大しています。

アメリカ経済が好調で、事業の売り上げが順調の時にはローンは破綻しません。しかし、一度米経済に陰りが見え始め、消費が縮小すると、財務状況の悪い企業から破綻が始まります。そうなると借り換え金利も上昇するので、破綻はさらに拡大します。

米経済がピークを打ったと言われる中で、アメリカの中小企業の破綻は今後拡大するハズです。日本からの資金が支える事で過剰なリスクを取っている企業も多いはずで、これが破綻する構造
日本の量的緩和マネーが支えていたサブプライムローンが崩壊した構造に似ています。

■ 5%の平均レバレッジは安全か? ■

CLOやジャンク債市場が、次の金融危機の引き金を引く可能性が高まっていますが、「投資銀行が過大なレバレッジを賭け、無限大のレバレッジのサブプライムローンが量産された時代と今は違う」と主張する人は少なく無い。

しかし、一度、アメリカの中小企業の倒産が増え始めたら、保守的な日本の金融機関はCLOを売却するハズです。現に、リスクが高まった2018年末には、ジャンク債は起債されなくなり、CLOも買い手が付かなくなった。日本の金融機関が買い控えたからです。

「金融商品は傷物になると価値を失う」というリーマンショックの教訓を踏まえれば、デリバティブ市場の規模がリーマンショック前よりも拡大した現在は、リーマンショック以上のリスクを世界は抱え込んでいます。

レバレッジの数字だけ見れば「過大なリスクでは無い」と思われがちですが、国債中心の保守的運用をしていた日本の金融機関がリスク運用を拡大した事で、リスクは広く浅く拡散しています。これは日本に限った事では無く、金利の低下した世界で、多くの保守的な投資家が、それなりのリスクを抱えています。

FRBは本年中の利上げをしない様ですが、アメリカの景気という「水位」が低下すると、水面下に隠れていたリスクが、様々な場所から顔を出し始めるハズです。

「炭鉱のカナリア」とも言えるジャンク債市場あたりに注意しておいた方が良いでしょう。
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2019/3/19

過剰債務を生み出す「信用創造システム」・・・危機の元凶  時事/金融危機
 

■ 「信用創造」こそが「過剰債務」の現況?■

池田信夫氏がブログが過剰債務と信用創造の問題点を指摘する書籍を照会しています。

「政府の過剰債務の原因は、1990年代のバブル崩壊から始まった民間の過剰債務だった。それを生み出したのは、決済機能という公共インフラを私的な銀行が独占して通貨を増殖させる信用創造というシステムだ。そのリスクは財政ファイナンスより大きい、というのが著者の警告である。」(池田信夫ブログより引用)

このブログでも「信用創造」システムの問題点はリーマンショックの直後から何度も指摘していますが、陰謀御界隈では既に常識となっています。

■ お金は誰から借金によって生み出される ■

私達が便利に使い、喉から手が出る程欲する「お金」ですが、これが何から生み出されるか考える人は少ない。せいぜい、造幣局が輪転機を回して印刷している程度の概念しか無いでしょう。

1) 誰かが銀行にお金を預ける
2) 銀行は法定準備率で定めた準備予期を中央銀行に預ける(現在の日本は0.05〜1.3%)
3) 準備預金以外の預金は、誰かに貸し出す事が出来る
4) お金を借りた人が利益を上げたり、賃金として支払ったお金は銀行に預金される
5) 預けられたお金は、準備預金以外は再び貸し出す事が出来る

卵が先か、ニワトリが先かの話に似ている気もしますが、「誰かの借金が通貨を生み出している」点が面白い所

一般には「マネーサプライ」と呼ばれるシステムですが、中央銀行が最初に発行した通貨(マネタリーベース)は、マネーサプライの連鎖によって、どんどん増殖して行きます。

「信用創造システム」は大昔の金を預かるユダヤ人が考え出したそうです。

■ 「過剰債務」を生み出す「信用創造」 ■

冒頭で引用した池田氏の文章では、「民間の過剰債務」がどうして「政府の過剰債務」を生み出すのか良く分かりません。

多分、こんな内容なのかと妄想します。

1) 金融システムと、肥大化した資産システムは、見せかけの利益をチラつかせる
2) 利益を欲する人々や金融機関が資産市場に過剰な投資をする
3) 資産市場に投じられる資金の多くは「信用創造」によって生み出される(レバレッジ)
4) 「信用創造」のサイクルが過度に回る事により「過剰債務」が生まれる

5) 「過剰債務」によって資産市場がバブル化する
6) バブルが崩壊して「信用創造」のシステムが逆転して「信用収縮」が加速する

7) 「信用創造」で生み出された「幻の利益」は、「信用収縮」の過程で「損失」に代わる
8) バブルの規模が大きい程、「損失」の規模が大きくなる

9) 金融機関が危機に瀕し、「政府が資本注入」で救済する
10) バブル崩壊後の民間需要の不足を補う為に、公共投資が拡大する
11) 政府の債務が拡大し、これは国債で賄われる
12) 財政赤字が拡大する


■ 問題の本質は肥大化し過ぎた金融市場や資産市場 ■

金融市場や資産市場が今程発達していなかった時代は、バブルが発生しても局地的な現象でした。

しかし、金融革命と呼ばれた1980年以降、バブルの規模は拡大し、国境を越える様になります。「債権の証券化」という技術によって、「誰かの借金が金融商品として売り買い」される時代が到来したのです。

1) 住宅ローンや、カーローン、クレジットなど誰かの借金が集められ「証券化」される
2) 「証券化」された誰かの借金は「金利の付く商品」として売り買いされる
3) 「証券」は国境を軽々と越えて取引される

4) 市場はより多くの商品を求め、より多くの「債務」を求める様になる
5) 「債券」を生み出す過剰な貸し出しが横行する

4) 「証券」がさらに合成されて新たな金融商品(デリバティブ)が作られる
5) CDSの様に「確立に投資する金融商品」が無から合成される

こうして本来借金する事が難しいサブプライム層や、信用力の低い企業に無理に貸し出された資金は、やがて返済が滞り、「債券」や、それを元にした「証券」やその他の「金融商品」の価値棄損します。

■ 過剰な投資を政府が抑制しても、金融資本家に骨抜きにされる ■

この様な金融市場のピーキーな活動の危険性を、アメリカも良く理解しています。

アメリカでは世界恐慌の反省から、1933年には既に過剰な投資を抑制す為に商業銀行と投資銀行を分離する「グラス・スティーガル法」が制定されています。

しかし、1981年からなし崩し的にグラススティガル法が廃止され、商業銀行が投資銀行の分野の参入して行きます。預金が投資という鉄火場に投じられて行くのです。そして、その末路がリーマンショックでした。

ところが、リーマンショックの結果、投資銀行はゴールドマンサックスを除いて全て商業銀行の傘下に入ってしまった・・・。これはグラス・スティガル法の精神の全く真逆です。巨大な損失を抱え経営破綻に陥った投資銀行ですが、アメリカ政府は商業銀行した救済しないと宣言します。結果、投資銀行が商業銀経に吸収される形で、その負債も商業銀行に負債に付け替えられ、議会は商業銀行を税金で救済します。

その後、リーマンショックの反省を兼ねてトッド・フランク法を強化する形でボルガールールが施行されます。米国の商業銀行に対して、ヘッジファンド等への出資を禁止したり、自己資金による高リスク商品への投資などを制限するものとなっています。

しかし、トランプ政権になって、ボルガールールの一部廃止する法案が成立し、さらにボルガールールを緩和する法案も検討されています。

この様に、世界恐慌の直後から、銀行の過剰リスクに対する規制が検討され、そして金融界のロビー活動によって規制は緩和される事が繰り替えされています。

■ 自体経済を圧迫する金融市場 ■

銀行や金融市場の本来の目的は、お金を借りたい人と、お金を貸したい人をマッチングさせる機能です。ここでは、小口の預金者もお金を貸したい人に含まれます。

金融市場の発達も、本来の目的は国境を越えて迅速に資金需要を満たす事に寄与するハズでした。

しかし、実際には金融市場は訳の分からない金融商品を売り買いして目先の利益を漁る「鉄火場」と化してしまいました。そして何度もバブルを生み出しては、崩壊を繰り返します。

バブル崩壊が欲に目の眩んだ人達の損失だけで済めば問題無いのですが、その影響は実体経済にまで及びます。バブル発生時は資金需要が旺盛なので金利も上昇します。これは民間企業の借り入れコストの増加となりますが、バブル崩壊後は、金利負担が民間企業の経営を圧迫します。

又、バブル発生時には不動産の価格が上昇しますが、この時期にマイホームをローンで購入した人達は、バブル崩壊後に、返済に窮する事になります。

大きな損失を抱えた金融機関は貸し出しの基準を厳しくします。その結果、中小企業の借り入れコストが高止まりして、経営が悪化してゆきます。

■ 銀行が無くなれば問題は解決するのか? ■

短絡的な人達や、金融資本家の手先たちは、「過剰債務を生み出す銀行システム(信用創造システム)こそ諸悪の元凶だ)と言うかも知れません。「銀行は決済機能だけになれば良い」とか、「フィンティングの時代に銀行は不要だ」とも言われ始めています。

では、フィンティングの時代に、街中の個人商店はどうやって資金調達すれば良いのでしょう?経営状況をどこかのサイトにアップしたら、適当な金利で資金を調達できるのでしょうか?

私は銀行不要論は本末転倒だと感じています。規制すべきは過剰な金融市場や資産市場のハズで、ここの健全性が担保されない限り、何度でもバブルは発生し、その規模は拡大して行きます。

政府の過剰債務の原因は、信用創造システムと銀行に有るのでは無く、人々の欲望にこそ有るのでは無いか・・・。

サマーズは「米経済は1980年代から成長の限界に達しており、バブル無くしては成長もイノベーションも起こらなかった」と語っています。確かに、この主張にも一理ある。人の果てしない欲望は、痛みを伴いながらも、科学や社会の発展という果実を生み出しているのかも知れません。


<追記>

老人や個人から小口の預金(貯金)を集め、それを地域経済に融資するのでは無く、アメリカのリスク市場で運用する「ゆうちょ銀行」は、まさにグラス・スティーガル法が規制した銀行の姿そのものとなっています。

地方経済の衰退の一因はゆうちょ銀行に有ると私は考えています。本来、信用組合や中小の地方銀行に預けられれば地域経済の為に融資されたかも知れない資金が、海外に投資されてしまう・・・。

まあ、地域経済が衰退するから中小地銀の経営が悪化するというのも正しくて、彼らも通常の貸し出し業務では生き残れない状況ですが。

1980年代以降、アメリカでは地銀が淘汰されてバンカメやウェルズファーゴに収れんし行きますが、同じ事が日本でも起きるのでしょう。



次回は「過剰なレバレッジを掛けなければバブルは崩壊しないのか」という問題を妄想したいと思います。
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2019/3/18

郵便貯金の役割とその終焉・・・財政投融資から国債購入、そしてウォール街のサイフ  時事/金融危機
 

■ 途上国日本に必要だった郵便貯金 ■

ゆうちょ銀行の前身は「郵便貯金」です。日本の郵便貯金は1875年にスタートしますが、これはイギリスのシステムを模倣してものです。

国際郵便条約でユニバーサル・サービスが義務付けられている「郵便事業」ですが、それ故に全国津々浦々に郵便局が設置されています。銀行などの金融機関の無い地域でも、郵便局は必ず有ります。

郵便局で預金(貯金)を集めれば、辺境の地で死蔵されてしまう資金を集めて有効に活用できると、誰かが考え付いたのです。

日本が未だ途上国だった時代、国債購入や財政投融資という形で日本のインフラ整備に郵便貯金の果たした役割は大きかった。

■ 所得の再分配としての郵便貯金 ■

郵便貯金による国債の購入や財政投融資には「所得の再分配」の機能が有りました。「所得再分配」は国が国民から税金を徴収して、それをインフラ整備や社会保障として支出する過程で、貧しい人や、貧しい地方に税金が分配されるシステムです。

郵便貯金はこれを補完するシステムでも有ります。地方は所得が低いので税収は高く有りません。しかし、自給自足的な生活を営む地域では、支出も少なくて住みます。結果、所得が低いながらも、お金が余ります。このお金を郵便貯金によって吸い上げて税収の足りない分を補えば、これも「所得の再分配」の一種となります。

同様に支出の少ない高齢者が郵便貯金を溜め込めば、この資金も「再分配」されます。

■ 分割されずに民営化された、ゆうちょ銀行 ■

最盛期には350兆円程積み上がった郵政マネーに目を付けたのがアメリカです。レーガン政権時代に「郵政民営化」を日本に要求したのです。

当時の郵便貯金は実質的に日本で一番大きな銀行でしたが、一方で民間の銀行の業務を圧迫しない用に、貯金の運用は国債購入か財政投融資に限られていました。当然、海外への投資など出来ません。

郵貯マネーにアメリカ国債を買わせたり、ウォール街に投資させる為には、郵便局を民営化させる事が必用でした。しかし、郵便局(郵便貯金)は実質的に日本最大の金融機関ですから、本来ならば分割して民営化する必要が有ります。国鉄も電電公社も分社化されて民営化されました。

しかし、郵便局は民営化してゆうちょ銀行となっても分割されていません。それどころか、親会社である日本郵政の株式を国が保有する事で、半公営の体裁を残してままで民営化されました。国民の多くは「ゆうちょ銀行は国が保証してくれる」と思っていますから、民営化後も資金流出は起こらなかった。

一方で、民営化後もゆうちょ銀行には一般の貸し出し業務は許されていません。建前は民間銀行の業務を圧迫しない事とされますが、結果的にゆうちょ銀行は、対米リスク投資の道を選ばされる事になります。

■ 日銀は米国債を買えないが、ゆうちょマネーならば買える ■

ゆうちょ銀行発足と当時、その運用の大半は日本国債でした。しかし、日銀の異次元緩和で日本国債の金利はゼロになってからは、その資金を「投資」で運用する事を余儀なくされます。

実は民主党政権時代に、前原氏が「日銀に米国債を直接買わせる事を検討する」という発言をした事が有ります。しかし、これは明らかに日銀法違反で、前原氏も発言を直ぐに撤回します。

当時はリーマンショック後の混乱期でしたから、アメリカ国債を安定して発行する事がアメリカの課題でした。そこで、代案として実行されたのが異次元緩和です。

白川総裁時代は、日本国債の主な購入者は銀行でした。国内の実質金利がゼロになる中で、少額でも利付けされた国債購入は、ゼロリスクで確実に金利が稼げたのです。さらに、日銀の当座預金にも利付けして、当座預金に民間銀行の資金をブタ積させました。この資金も国債購入に当てられていました。

これでは、日本の資金が銀行と日銀を介して日本国内で循環してしまうので、金融資本家達には面白くありません。そこで、日銀に異次元緩和を実施させ、日本国債の金利をゼロにする事で、国債市場から銀行やゆうちょ銀行や、年金資金を締め出す事にしたのでしょう。(妄想)

財政ファイナンスと受け取られない為に、日銀は市場から国債を購入しますが、金融機関は購入た新発国債を直ぐに日銀に売却してしまいますから、日銀の直接購入と何ら変わりません。

■ 金利がゼロに張り付いた時点で負け ■

自由な金融市場を持つ世界において、お金は国境を越えて金利の高い国に流れて行きます。

日本の短期金利はゼロに張り付いていますが、これは国内に資金需要が無い事と同義と言えます。しかし、実際に国内に資金需要が無いかと言えば、そんな事は有りません。金利を払ってもお金を借りたい人は沢山居ますし、企業も沢山有ります。

しかし、金融機関はこれらの人や企業に融資する事が出来ません。何故なら、リスクに対して金利が低すぎるから。

では何故、こんなにも日本の金利が下がってしまったかと言えば、日銀は量的緩和や異次元緩和必用以上に金利を低く誘導しているからに他なりません。

こうして、国内で得られる金利が実際以上に「みすぼらしく」なってしまうと、それよりもマシな金利の付く海外に資金が流出します。結果的に国内に回るべき資金が海外で運用されるので、国内の成長は妨げられます。

発達して金融市場を持つ世界では、金利がゼロに張り付いた時点で「負け」なのです。


日本の長期低迷の主要因は確かに「少子高齢化」や「労働人口の減少」ですが、それを助長しているのがゼロ金利である事に日本人はもっと自覚的であるべきです。

尤も、異次元緩和がこれほど長期化してしまうと、日銀が緩和縮小を匂わせただけで世界の市場が震撼します。日本国債の暴落は国内の金融機関の経営に影響しますから、空気が読める日本の金融機関は海外投資を手仕舞いして、足並みを揃えて日本国債購入に踏み切るでしょう。(外資は売り浴びせるのでしょう)

FRBの利上げペースが鈍化(或いは既に利上げ出来ない)する状況にあって、日銀が異次元緩和を縮小する訳には行かないのです・・・収穫祭までは・・・。


<追記>

安倍首相と会談した黒田総裁は「未だ、二の手、三の手が有る」と発言した様ですが、実際には日銀の日本国債購入額はステルス的に減らされています。市場バランスを維持する為に、日銀が購入出来る国債の額には限度があるからです。ですから、異次元緩和を拡大する方法で、日本国債の買い入れ額を増やす方法は考え難い。

一方で異次元緩和の出口を求める声も高まっています。銀行は金融危機の足音が近づいている海外投資を手仕舞いして、資金を国内に戻したハズですが、リスク・ゼロの日本国債と日銀当座預金の利付けがゼロ金利では、それすらも出来ません。

ゆうちょ銀行の限度額が半ば強引に2600万円に引き上げられる背景には、出口戦略の地均しの目的があるのかも知れません。日銀の資産圧縮の為の受け皿にするのか・・。


まあ、ここは陰謀論ブログですから、三の手辺りは「日銀の米国債購入」なんて大技を期待してしまうのですが・・・。

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2019/3/17

ゆうちょ銀行は1ドル60円に耐えられるか・・・為替ヘッジが効かない  時事/金融危機
 

■ 1ドル60円? ■


ゴールドマンサックスのストラテジストが次に金融危機が発生すれば1ドル60円になると予測しています。

今は日銀が異次元緩和を継続し、アメリカが利上げをしているのでドル/円は円安のバイアスが掛かっています。しかし、リーマンショック後に75.54円まで円高が進んだ様に、大きな金融危機が発生すると為替は大きく円高に振れます。

現在のドル/円は111.4円ですが、実質実効為替レートは77.5円。この差が大きい程、歪も大きい。そして、危機が発生すると歪が一気に解消する。


金融危機が発生すると以下の要因で円高が発生します

1) 米国の金利低下でドル安になる
2) 円キャリートレードの巻き戻しで円高に振れる
3) 日本の金融機関などが米国投資を手じまいして資金を円で日本に持ち帰るのでドル安円高に

日本国内の金利がゼロに張り付く中で、日本の金融機関や生保各社、年金資金は大量のドル資産を保有しています。これが円売りドル買いの圧力になって、現在の為替レートには「円安」の歪が相当に溜まっています。大きな金融危機が発生すると、これが一気に解消され、勢い余って大きく円高に振れるのです。

■ 為替ヘッジをしているというゆうちょ銀行 ■

前出のゴールドマンサックスのストラテジストは、危機発生時に大きな損失を抱えるであろう金融機関の例とすいて、農林中金とゆうちょ銀行を挙げています。

ゆうちょ銀行の海外投資は為替ヘッジが掛けられているものがほとんどの様ですが、急激な為替市場の変動や、債券価格の低下(債券金利の上昇)に際しては、為替ヘッジをしていたとしても損失が発生する事には注意が必要です。

為替ヘッジの方法には2種類有ります。

例1)10年もののアメリカ国債を購入する為に10年先の為替を予約する
   ヘッジコストは日米の長期金利差

   米国債金利           2.5%
   日米金利差(為替ヘッジコスト) 2.5%


   この場合、10年後の受け取り利息は、そのまま為替ヘッジコストと同じになる。
   米国債に投資するメリットは無くなる。

   

例2)3カ月先の為替ヘッジをロールする(更新し続ける)ケースが多い

   為替ヘッジには反対取引の相手が必要です。10年先の為替相場は予測しにくいので
   多くの場合は3カ月など短期の取引が主流となる様です。

   仮に金利2.5%の米10年国債を保有していて、金融危機が発生したとします

1) 米国債金利は上昇(価格低下)・・・含み損が発生
2) 米国債を売る・・・損失が確定
3) 3カ月前に確定した円の価格より円高(ドル安)が進行
4) ヘッジコストが2.5%を超えて上昇

リスクが発生した時には債券は価格が下がり、債券の保有者は売却するか、保有し続けるかの選択を迫られますが、大方の投資家は売却を選択せざるを得ません。

異次元緩和による円安は一時125円程度まで進行しますが、2015年末頃から円高基調に変化していますが、これはFRBの利上げによってヘッジコストが上昇した為で、生保などが米国債投資を一部手じまいしたり、円キャリートレードの巻き戻しが発生した事が原因。

ゆうちょ銀行や農林中金などは、保守的な金融機関ですから、外国債券の取引は当然為替ヘッジを掛けていますが、大きな危機が発生すると、ヘッジし切れずに損失が拡大します。

■ 高格付けと言えども棄損する ■

ゆうちょ銀行や農林中金は大量のアメリカのCLO(ローン債務担保証券)を保有していますが、格付けは投資適格なものを厳選しているハズです。これらは、大きな金融危機が発生しない限りは安全性が高い。

しかし、リーマンショックの様な危機が発生すると、安全と思われていた企業の中にも経営破綻する企業が増えて来ます。サブプライムローン同様に、多くの債権をまとめているCLOの様な金融商品では、どれだけ損失が発生したのか切り分けが難しく、実際の損失以上に金融商品の価格が暴落します。

平時の格付けなどは〇〇ショックと呼ばれる様な大規模な金融危機に際しては何ら意味を持たないのです。

ただ、投資は「〇〇ショックは起こらない」事を前提としていますから、ゆうちょ銀行も農林中金も「リスクは無い」と主張する事が出来るのです。


■ リスクを取らざるを得ない高コスト体質 ■

ゆうちょ銀行や農林中金、経営規模の小さな地銀などが海外証券のリスクを積み上げています。

これらの金融機関に共通しているのは「高コスト体質」。安定した収益基盤を持たない一方で、リストラも限界に達していてコスト削減が進まない。そこで、ある程度のリスクを承知で、海外のリスク投資の割合を増やすしか、利益を上がる事が出来ない。

■ ゆうちょ銀行に1000万円以上預けるのは危険 ■

4月からゆうちょ銀行の貯金限度額が2600万円までに一気に倍増しますが、貯金の保証額は民間銀行と同様に1000万円までです。

「ゆうちょは政府の金融機関だから、貯金は全額保証されるだろう」というのは全くの妄想に過ぎず、もし政府がゆうちょ銀行の預金者を救済するならば、破綻した中小の金融機関も同様に救済しなくは成りません。

世界の趨勢は、「預金者もリスクを負う」という方向で一致していますから、ゆうちょ銀行だけが例外となる訳は在りません。


ゆうちょ銀行は「預金」では無く「貯金」である・・・そう閣議決定する可能性は否定しませんが・・・。安倍政権は何でもアリの政権ですから・・。

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2019/3/11

ゆううちょ銀行はゴミ箱となるのか?・・・投資信託を33兆円も保有していた  時事/金融危機
 

■ 日銀の資産統計のミスから明らかになった「ゆうちょ銀行」の投資信託保有額 ■

昨年8月10日の週刊朝日の記事「家計が持つ投信 33兆円も過大計上 日銀のミスで得したのは」です。(以前にこのブログでも紹介しています)

<一部引用>

ミスがわかったのは、家計や企業などの資金や資産の状況をまとめた「資金循環統計」。日銀が3カ月に1度公表していて、政策議論にも用いられる重要な統計だ。年1回調査方法を見直していて、6月下旬の改定作業で問題が発覚した。日銀は詳しい説明を拒んでいるが、ゆうちょ銀行の投信の保有額を過小評価していたことが主な原因のようだ。個人が投信を買い増しているはずだったのに、実はゆうちょ銀行が買っていたことになる。

 日銀は過去にさかのぼって数字を修正。2017年12月時点でみると家計の投信の保有額は、109兆円から76兆円に減った。11年以降おおむね右肩上がりだったとみられていたものが、実は15年6月をピークに伸び悩んでいたのだ。

<引用終わり>


前回紹介した2017年度のゆうちょ銀行の資産内訳で、外債等は59兆円余りでしたが、2018年時点でその内の33兆円が投資信託である事が分かります。

リスクが高い割に儲からない為に、最近では老人ですら敬遠する投資信託をゆうちょ銀行は33兆円も保有しています。

リーマンショックの様な危機が起きれば、これらの投資信託の価値は大きく棄損します。


■ ゆうちょ銀行は米国債も大量に保有しているはず ■

日本国債の保有を減らす過程で、ゆうちょ銀行は米国債に資金を移していました。ドルと同等の信用力と流動性を有する米国債ですが、リスクが無い訳では在りません。それは為替変動。

リーマンショックの時には1ドル120円程度から76円程度まで急激に円高が進行しました。ドル建ての資産を保有していれば、価値は6割程度に減ってしまいます。米国10年債金利が2.5%程度ですから、為替変動を考えると米国債投資とてリスクが無い訳では在りません。

ただ、ゆうちょ銀行とて為替ヘッジをしていないとは考えられません。相応の対策はしていると思われますが、ヘッジとてコストが掛かります。2.5%の米国債金利は、実際にはもっとみすぼらしい金利になっているでしょう。

だから、ハイリスクな投資信託に投資してトータルでの金利を上げる必要があるのかもし知れません。

■ 4月1日から貯金の限度額は2600万円に拡大される ■

郵便貯金やゆうちょ銀行は、民間の銀行の業務を圧迫しない用に、貯金の限度額が1000万円まどという時代が長かった。確か2015年に1300万円まで限度額が引き上げられましたが、今年の4月1日から、一気に2600万円までに引き上げられます。

ゆうちょ銀行の親会社は日本郵政ですが、この株式の大半は政府が保有しています。その為、国民の多くは未だに、ゆうちょ銀行を「公的金融機関」と認識しています。「何かあったら国が救済してくれる」と誤解しています。

しかし、ゆうちょ銀行は民間銀行ですから何かあってもペイオフの範囲内の1000万円までしか貯金は保障されないハズです。ここは民間銀行との公平性を考えれば曲げられない。


ゆうちょ銀行は将来的に限度額をさらに引き上げたいとしていますが、その代わり、現在、日本郵政が9割保有するゆつよ銀行の株式保有率を2/3以下にする事が求められています。

■ 日銀が日本国債を買い、ゆうちょ銀行や日本の金融機関が米国債を買う ■

私は異次元緩和が始まった頃、「これは日本の金融機関に米国債を買わせるスキーム」だと書いていました。

それまで、日本の金融機関の多くが日本国債や日銀の当座預金でリスク無く金利を稼いでいましたが、ゼロ金利国債や、日銀当座預金のマイナス金利政策で、資金は追い出される結果となります。

安全資産枠であろうこれらの資金は、安全資産としての米国債に向かったと考えられます。ただ、民間の銀行や生保各社は、円高が進むと、慌てて米国債を売っていた。

私はゆうちょ銀行は、円安になてっても米国債を手放していなかったと妄想しています。何故なら、陰謀論的にはゆうちょ銀行の米国債保有は日本とアメリカの国策だから・・・。(妄想)


その意味においては、ゆうちょ銀行は未だに「公的金融機関」なのかも知れません。
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