2022/1/13

マネタリーベースの拡大と投資マネー  時事/金融危機
 
■ 日銀の純粋な負債の通貨の価値はどうやって保たれるのか? ■

日銀の実施して来た量的緩和や異次元緩和は、「市場から国債や株式などの資産を購入によって、金融機関に強引に資金を供給し、実質金利を下げる政策」と一般的には理解されています。

量的緩和(異次元緩和)=マネタリーベース(MB)の拡大

マネタリーベース=日銀当座預金 + 現金


中央銀行は通貨の発行権を持っています。中央銀行が〇〇銀行の日銀当座預金に〇〇円と記載した時点で通貨が生まれます。

通貨 = 中央銀行の純粋な負債


ただし、中央銀行にいくら信用があると言っても、「純粋な負債」に信用があるとは思えません。以前は金兌換制度により「金が通貨の信用を支えて」いました。しかし、ニクソンショックによって金兌換制度が停止されて以来、通貨の信用は「国家の信用」が支えている事になっています。

何故ならば、中央銀行は勝手に通貨を発行するのでは無く、通貨発行に伴って応分の資産を購入しているからです。下は日銀の資産の内訳です。

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日銀の資産 = 国債 + 貸出金 + 民間債権

日銀の資産の中で、金額的に圧倒的に多いのは国債です。「国債=国の借用書」と捉えるならば、それに見合う資産が国になければ「通貨の信用」も損なわれます。

国家の資産 = 将来的な税収 + 国有資産(国有地やインフラ、対外債権など)

日銀の純粋な負債の「通貨」を支える資産が国債という「国家の債務」というと通貨に価値があるのか不安に思えて来ますが、「国家の債務」の担保は「将来的な税収と、国有資産」と考えれば通貨に価値が有る様にも思えて来ます。

これは日銀貸出金も同じで、貸出金に関しては無から有を作るが如く「純粋な日銀の負債」を民間金融機関を通じて「貸出」していますが、「借り手の信用」を資産と考える事も出来ます。

■ 通貨の価値を支えるのは「国の生産力」 ■

日本国政府の保有する米国債は事実上売る事が出来ませんし、国有地やインフラを大規模に売却する事も想像し難いので、「国家の資産」というのは便宜上の価値の裏付けと考えた方が良さそうです。

将来的な税収に関してはどうか・・・。例えば、空洞化が進み大手企業が海外に流出して、日本がサービス業だらけの国になって、国民の年収が下がった場合、税収はそれ程伸びるとは思えません。(これ現実的にそうなる可能性が高い)。一方で年金を始めとした福祉コストは増大するので、「財政赤字の拡大>税収」となる事は避けられません。

極端な話として、生産に携われない高齢者だけの国になったとして、税収はゼロで、福祉コストだけが発生するとします。成長力はゼロ以下ですから金利はゼロなので、当然国債金利もゼロ。この条件では、無限に国債を発行して通貨を発行出来ますが・・・こんな国の通過は国際的にはほぼ価値は有りませんから、為替は極端な円安になり、日本は輸入すら出来なくなります。

私は次の様に考えています。

通貨の価値 = 「国民の生産力(稼ぐ力)」

「生産力」とは、農業や業業などの一次産業や、鉱工業などの二次産業に限りません。アニメを制作して海外に売って外貨を稼ぐのも立派な生産です。(国内でアニオタが消費するのは・・・生産的とは言えません!)


■ マネタリーベースを増やすだけでは生産力は増えない ■

異次元緩和の理論的裏付けとなた「リフレ論」の目的は、「実質金利を下げて経済を活性化する」というものでした。これは「通貨が増えても、生産力が拡大すれば問題は無い」と言い換える事が出来ます。

しかし、結果的に異次元緩和でも日本経済は拡大しなかった。


そこで「量的緩和や異次元緩和で供給されたマネタリーベースは実体経済を刺激出来ない」という方が出て来た。(元々、「ブタ積」論は有りましたが)

マネタリーベース = 日銀当座預金 + 現金

「日銀当座預金は市中で使われるお金では無いので、実体経済に影響を与えない」とい主張です。これは勘違いです。


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上のグラフはマネタリーベースとマネーストックの推移です。

マネーストック = 国全体にある通貨の量 = 日銀の発行した通貨 + 民間の発行した通貨

上のグラフで衝撃的なのは、異次元緩和で日銀が通貨(マネタリーベース)を増やしている額よりも、マネーストックの増加額が少ない事です。日銀がマネタリーベースを増やしても、民間の信用創造が減少している・・・。

■ 異次元緩和は、民間投資をクラウディングアウトした ■

異次元緩和の結果だけを簡潔に書くと・・・

1)日銀がマネタリーベースを拡大する一方で民間金融機関は貸し出しを減らした

2)日銀がマネタリーベースを増やして供給した資金が海外に流出した



この二つが同時進行していると考えられます。

金融緩和は調達金利をゼロにする事で金融機関のリスクテイクのハードルを下げようとしますが、社債市場が発達した現在では、大企業は社債市場で低金利の恩恵を享受するだけとなった。一方、金融機関からお金を借りようとするのは、リスクの高い企業ばかりになったので、結果的に金利をゼロに張り付ける異次元緩和は、金融機関を間接金融の世界からクラウディングアウトする結果となった。


■ 異次元緩和は、海外への資金流出を生んだ ■

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上のグラフは日本の海外資産の推移です。特徴的なのは「直接投資」が増えている事。これは企業などが海外で製造設備を作るなどして行う投資です。リーマンショック後も大手企業などは業績を拡大していますが、国内で金利の安い資金を調達して、海外の生産設備などに投資しているのです。問題なのは、その利益を国内に還流しない為、企業業績は好調でも、国内の景気に対して影響を与えません。

又、海外直接投資の中には金融機関や一般企業のM&Aなどの資金や、海外企業への資本参加、不動産取得なども含まれます。日本国内での成長に限界がある企業が業績を伸ばす為には、海外企業の買収などが手っ取り早いのですが、日本郵政のオーストラリアの物流会社買収など失敗する例も多い。金融機関や証券会社も海外法人を盛んに買収していますが、これも失敗が多い。


■ 米国債保有額は増えているが、海外証券投資はそれ程増えていない ■

意外なのは、証券投資がそれ程増えていない事。リーマンショック後の円高の時期には、強い円を背景に証券投資が増えていたのですが、異次元緩和以降は円安によって減少気味に推移しています。為替差損を考慮すると、リスクヘッジ後の利幅が少ないのがその原因だと思われますが、一方でハイリスク・ハイリターンの証券への投資が増えている点には注意が必要でしょう。CLO(ローン担保証券)や、ジャンク債などは日本の金融機関がメインのプレーヤーでした。


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海外証券投資が伸びていない中で、米国債に限っては、その保有額は増加し続けています。これは異次元緩和の効果とも言えます。

1)日銀が国債を買い入れる
2)国債金利がゼロになる
3)日銀当座預金の金利もゼロ又はマイナスにする
4)金融機関は日銀に国債を売却した資金を、金利の取れる米国債に投資する


■ 日銀当座預金は取り崩されて海外資産に変わった ■

ここで「金融機関が日銀に国債を売却しても、日銀当座預金の残高が増えるだけで民間で使えるお金は増えない」というトンチンカンな事を言う人も居ます。

日銀当座預金の残高は確かに増えていますが、金融機関の日銀当座預金の額は絶えず変動します。当然、金融機関は日銀当座預金を取り崩して、その資金を運用する事が可能です。マイナス金利が掛かる日銀当座預金にブタ積する事はナンセンスですし、マイナス金利政策の目的が日銀当座預金からの資金流出なのですから。

そもそも、過去の日銀の金融調節機構というのは、日銀当座預金の金利操作によって行われていました。インフレ率が高まった場合は、日銀当座預金の金利を上げて市場から資金を吸収し、景気が低迷したら金利を下げて日銀当座預金の資金を市中に放出させた。


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上のグラフは産経新聞の悪意のあるグラフで、日銀が増やしたマネーが中国に流れていると曲解させるものですが、中国の対外債務を無視すれば、日銀が2012年以降拡大した通貨に相当する額が、ほぼ海外金融債権に置き換わっている事が分かります。

半分は邦銀が直接米国債などを購入した資金ですが、半分は邦銀が国債融資をした額です。海外の金融機関や投資ファンドなどに邦銀が融資している。


■ 日本の異次元緩和はブタ積と、海外投資を増やしただけ ■

MMT派の方々は、ゼロ金利の環境下では、国債を発行しても、日銀が国債を購入してマネタリーベースが膨らむだけだから問題は無いと言います。

しかし、異次元緩和で供給されたマネーは、日銀当座預金から引き出されて、確実に海外に流出しています。(日本のマネーストックは微増)そして、米国債を買い支えたり、怪しい金融商品に投資されています。全ては、日本の金利がゼロになってしまったからです。

そして、FRBの供給したマネーも、ECBの供給したマネーも等しく資産市場に流入して、バブルを成長させています。

世の中には様々なジレンマやトリレンマが存在します。先進国が成長の限界を迎える時点で、中央銀行の金融調節機能は非効率なものになっていた。そして、それは1970年代には既に始まっていたのかも知れません。

そして、現行の中央銀行制度の限界が訪れようとしているのでしょう。だからグレートリセットが必要とされるのでしょう。


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2022/1/13

利上げ・・・市場が反応するのは何時?  時事/金融危機
 

■ 直接給付がインフレを生む ■

アメリカのインフレ率が6%を超えています。この原因は、コロナ禍でバラまかれた直接給付です。

アメリカも日本同様、リーマンショック後ににFRBが量的緩和を続けていますが、国債やMBSなどを購入した資金は資産市場に投資さる傾向が強かった。これらの資金が債券市場を通して不動産市場を支えているので、アメリカの住宅価格はバブル化しています。

量的緩和の結果、アメリカの貧富の差は広がり、結果的には個人消費は伸びず、インフレ率も低迷していた。ところが、コロナの直接給付は貧乏人にも等しく配られたので、これが一気に消費に向かい、アメリカのインフレ率がピョンと跳ね上がった。

日本は直接給付の規模がアメリカよりも小さく、何故か日本人はそれを預金してしまったので、インフレは主に輸入価格の上昇によって発生しています。アメリカのインフレ率が高まった結果、日米金利差が拡大して円安傾向になるので、輸入コストはさらに拡大しています。

現在世界が注目しているのは、このインフレに持続性が有るかどうかです。市場は短期的にはインフレが続くと予測していますが、コロナが収束して金融が引き締めに転じると消費が低迷してインフレ率も落ち着くと見ています。


■ インフレ率の上昇は緩和縮小を読義なくさせる ■

リーマンショック後に資産市場を支えて来たのは「安い短期金利」です。投資は長短金利差を掠め取る行為でもあるので、短期金利が極端に低い量的緩和下で、市場は拡大を続けて来ました。

しかし、アメリカでインフレ率の上昇がこれ以上続くと、短期金利が上昇し始めて、市場は縮小に転じます。

FRBは量的緩和の縮小や、利上げを示唆して、市場の過熱を抑えていますが、緩和縮小は市場を崩壊させるトリガーになるので、「縮小しちゃうよ・・するよ・・・本当にしちゃうよ・・・」と言いながら、なかなか縮小に踏み切れない。

仮に金利を0.25%引き上げたとしても、その裏ではこっそり資産規模を拡大しながらバランスを取るでしょう。ただそれも、インフレ率次第。インフレ率の上昇が止まらない様ならば、FRBは今年4回の利上げに追い込まれるかも知れません。これに市場がどう反応するか・・・。

前回の利上げは2019年に1.75%で頓挫した(確か・・・)。しかし、実際には2018年には、FRBは資産売却のテーパリングを2018年半ばに停止しており、その後はこっそり資産購入に切り替えています。

今回の利上げで市場がどこで反応するかは私には分かりませんが、金利だけでなく、FRBの資産購入にも注意が必要かも知れません。
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