2019/1/10

祝・『海街diary』完結・・・吉田秋生作品の登場人物達の救済だった  マンガ
 

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『海街diary』より

■ 平成マンガの最高傑作がここに完結! ■

もし、私が誰かから「何か良いマンガを教えて」と聞かれたら、絶対に吉田秋生『海街diary』をお勧めします。


1)「面白い」のでは無く「良い=良質」なマンガ
2)老若男女を問わず、誰もが共感できる内容
3)純文学に匹敵する高度な表現力
4)沢山の登場人物それぞれに、しっかりとした存在感と人生観を持たせる群像劇の極致

しかし男性諸氏に少女漫画のハードルは高いらしく、実際に買って読んだ人はいません。むしろ最近は是枝監督の映画の方が有名になってしまったので、「ああ、あの映画の原作だよね」で済まされしまう事が多い。


個人的には平成になってから出版された、あらゆるマンガの中で最高の作品だと信じています。『海街diary』の初版本が出た時に、しかりと本屋でジャケ買い(表紙買い)した事が、私のマンガ好きとしての矜持となっている。


<ネタバレ全開・・・ご注意を >


■ 普通の人達の普通の物語 ■


鎌倉に住む3姉妹の元に、父親が訃報が届きます。父親は離婚して家を出ており、母親も姉妹を祖母に預けて他の男と再婚しています。父が家を出たのは3女が生まれて間もない頃なので、「父が死んだ」と聞いても、次女と三女には今一つ実感が有りません。

旅行にでも行く様な感覚で山形の温泉街にやって来ますが、そこで彼女達は自分達に血の繋がった中学生になる妹の「すず」が居る事を知ります。実は父親は、すずの母親とも別れており、今は別の女性と暮らしていました。すずには、父の再婚相手の連れ子の血の繋がらない弟達が二人居ます。(ちょっと複雑で家系図でも書かないと理解が難しい)

父親の死によってすずは血の繋がらない母親と兄弟と暮らす事になりますが、母親はどうにも頼りない。すずの身を案じた長女は、すずに「一緒に鎌倉で暮らさないか」と誘います。すずはそれを迷いも無く即座に承諾します。こうして、鎌倉の極楽寺に有る一軒家で、4人の姉妹たちの生活が始まります。

母親代りの長女の幸はしっかり者で看護師。病院の医者と不倫の関係ですが、彼の妻は精神を病んでおり、彼は離婚には踏み切れません。次女の佳乃は地元の信用金庫に勤めていますが、性的に奔放。イケイケな女性です。三女の千佳はスポーツショップに勤めていますが、店長とは恋人関係。性格は楽天的。

こんな、バラバラな3姉妹と暮らす事になるすずですが、小学校の頃よりサッカーが上手で、鎌倉でも少年達に交じってサッカーチームに入ります。最初は家でも遠慮しがちのすずですが、次第に姉妹とも打ち解け、サッカーチームのメンバーを通じて鎌倉に知り合いも増えて行きます。

物語はこうして動き出しますが、実は全9巻を通して、淡々と彼らの日常が描かれるだけで、事件らしい事は何一つ起きません。私達や私達の知り合いにも日常的に起こるであろう出来事が、マンガの中で丁寧に描かれて行きます。

特徴と言えば、背景に鎌倉の街が有り、鎌倉の春夏秋冬が有る。しかし、これとて、私達の街の景色とそれ程違う物ではありません。私達の街にも季節は訪れますし、そこに住む人は街に愛着を感じています。


■ 使われ過ぎて安っぽくなってしまった「絆」という言葉の本質を問う ■

この作品が終始描いて来たものは、「人は縁あって出会い、そして絆を深めてゆく」という至って普通の事に過ぎません。

311の震災以来「絆」という言葉は、半ば「助け合わなくてはイケナイ」という強迫的なイメージを持ってしまいましたが、『海街diar』yの中で結ばれる絆は、自然に生まれ、自然に深まり、そして人々はそれを大事にする。絆という言葉が本来持っていた、やさしく、デリケートな姿がそこには有るのです。

大人は複雑な事情の中で絆を確認しあい、子供は子供の世界の中でそれを育み、そして大人達とも結ばれている。地域の人々が、目に見えない糸の様なもので、ゆるやかに繋がっていて、誰かの変化は、その周囲へと伝わってゆきます。

こうして全9巻を通して、人々は絆を深め、そして互いに少しずつ成長してゆく。

(よく似た作品に、吉田秋生と現代女性漫画家の双璧を成す「くらもちふさこ」の『天然コケッコー』が有りますが、こちらは田舎の「強い絆=しがらみ」を描く作品です。amazon primeで映画版が無料で観られます。こちらはデビューしたての夏帆ちゃんと岡田君が初々しい、素晴らし映画です。是枝版の海街なんて目じゃありません。)

■ 吉田秋生の過去の作品の登場人物の救済劇 ■

『海街diary』は吉田秋生の過去の作品の『ラヴァーズ・キッス』の後日譚にもなっています。『ラヴァーズ・キッス』で人生に悩みアウトローだった人物達が脇役で登場しますが、すっかり大人になり丸くなっているのが微笑ましい。

興味深いのが喫茶店「山猫亭」。「山猫=アッシュ」ですよね。そう、『BANANA FISH』です。山猫亭のマスターの存在感は巻を追う毎に大きくなっており、9巻はマスターが主役では無いかと思える程。過去の自分の愚行を悔い、流れ者の自分を受け入れてくれた鎌倉こそ、自分の居場所なのだと人生の最後に思い至るひねくれた性格の老人ですが、アッシュが生きていればこんな老人になったのかも・・・。


吉田秋生の過去の作品は、様々な悩みを抱えて世の中に居場所の無い者達を描く物語が多かった。トランスジェンダーだたり、先天的な精神異常者だったり・・。かなりキレッキレの人物が多いですが、『海街diary』では、人々は優しく穏やかで、これが同じ作者なのかと戸惑う程です。

ただ、三姉妹の長女や次女、すずが時折見せる鋭い表情に、吉田作品特有のナイフの様な冷たさが表出します。過去作では、それらの抑えきれない感情の表出に押しつぶされる人物が多かったのですが、海街では感情や激情を心の内に秘める「逞しさ」を獲得しています。吉田作品は丸くなったのでは無く、強さを手に入れたのです。


■ 後日譚で見事に円環を成す ■

9巻の巻末には『通り雨のあとに』という番外編が付いています。すずが秋田に置いて来た弟達の話です。

すずの高校進学から10年後、父の13回忌を期に、父親のお骨を鎌倉に移す為にすずは二人の甥を連れて山形を訪れます。別れた弟とはそれ以前にも会っている様です。

川遊びに興じる甥達を見ながら、弟は川からカジカが消えたと話します。上流の温泉開発で酸性の水が流れ込んだ事が原因なのだろうと。しかし、かじか沢に並走する小さな川は大丈夫だと。この川はかじか沢の支流と思われていいるが、源流も別で、河口まで交わる事も無い。ただ、この場所だけで並び合って流れているのだと。

これ、すずと弟の人生を象徴しているエピソードですね。もう、素晴らしいとしか言えません。

ところが、直後に橋の上の若い女性が現れます。弟が務める旅館の女将の姪だという彼女は、すずがこの温泉街を離れた直後に母親と越して来た。妙と呼ばれる女性は街に馴染んでいて、弟とも仲が良い。

妙は、この街にすずが残ったら、こんな感じだったという、すずのもう一つの姿なのでしょう。そして、彼女は不幸では無く、そして弟も不幸では無い。(どうやら弟の初恋はすずの様ですが・・)

イヤー、さすがは吉田先生! 最期にすずが捨てて家族をも救済して物語の幕を閉じるとは、感服いたします。そして、父親の死を切っ掛けに始まった物語は、「縁を結ぶ」事で、「絆を保ち続けた」事で、見事に円環を成して終わります。


・・・こんなに読み応えのある作品は他には有りません。吉田先生、2007年から11年間、本当に楽しませて頂きました。私の心の中では鎌倉の4姉妹は実在しています。鎌倉を訪れる度に、極楽寺の坂や、稲村ケ崎に浜辺に、彼らの息遣いを感じる事が出来ます。


最終巻のハイライトは稲村ケ崎の浜辺に降りる階段でしたね。『青ブタ』でも何度も出て来た階段。これは聖地巡礼に行くしかありません!!

「海街diary」・・・本音をみつめる女性の視点 『人力でGO』 2010.11.03


「鎌倉」聖地巡礼・・・『海街diary』と『ラヴァーズ・キス』  『人力でGO』 2013.11.03
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2018/12/8

「表紙買い」魂!!・・・大人の為の最新マンガ情報  マンガ
このブログは「善良な大人をオタク化する」という崇高な目的を掲げています。

経済記事や陰謀論に、時々混じっている「オタク記事」を何となく読むうちに、50代、60代の大人がオタクに目覚める・・・そんな罠が張り巡らされた悪意に満ちたブログが「人力でGO」の正体なのです。


私はアニメは若い人向けの作品が好きですが、マンガに関しては大人向けの作品を買う事が多い。それも「ジャケ買い」ならぬ「表紙買い」や「背表紙買い」が多い。最近の書店ではマンガ本がビニールに入っていて立ち読みが出来ないので、そうならざるを得ないのですが、「良いマンガ」は背表紙からして「ただならぬ気配」を漂わせています。

本日はそんな「表紙買い」「背表紙買い」の神髄を披露します。


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『僕らコンタクティ』 森田るい 

駅前の西友の本屋で背表紙買いしたこの作品、今年の「マンガ大賞」で2位になってしまいました。(一位は『BEASTARS』)


仕事に飽き飽きしている女子会社員が、ある日小学校に同級生に再会します。『クレヨンしんちゃん』のボーちゃんみたいなツカミどころの無い彼ですが、町工場でコツコツとロケットを作っています。これは金になると勘違いした彼女は、仕事を辞めたい一心にロケット作りに関わりますが、いつしか彼を夢を共有する。そして、彼の不仲な兄や、行きつけの飲み屋のママを巻き込みながらも、ロケット開発は着々と進んでゆきます。はたして町工場のロケットは宇宙に行く事が出来るのか・・・久しぶりに「マンガってイイな」って気持ちに浸れました。

決して上手い絵では無いのですが、「この作品はこの絵で無ければ成り立たない」という説得力が有る。そして、実は実写映画でこの作品を観たい。




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『リバーエンドカフェ』 たなか亜希夫

小池一夫の主宰した「劇画村塾」で原作付の作品で作画がメインの方らしいのですが、私は未読。1956年生まれですからベテランですね。

石巻の川の河口近くでカフェを営む男と、何故かそのカフェに出入りする様になる女子高生を中心に、オムニバス形式で話が展開します。

震災の影響が人々の心に残る石巻。中学時代に震災復興のスローガンだった「絆」という文字が嫌いと口にしてしまった事で、現在に至るまで酷い虐めの対象となっている女子高生のサキは、流れ着く様に「リバーエンドカフェ」に辿り付きます。無神経で不愛想な店長に何故かこき使われるハメになりますが、カフェには様々な悩みや問題を抱えた人が流れて来ます。店長は不思議な人脈でそれを解決したり、或いは何もしないけれど勝手に解決したりと・・探偵物の亜流の作品です。

ずっと重い雲が垂れこめた様なサキの心に、人々との関わりの中で、かすかに薄日が差す事がある・・・しかし、雲はまた空を覆ってしまう。そんな感じの作品です。

故郷石巻に思いを寄せる作者の、珍しく原作者の無いオリジナル作品ですが、日本のマンガの層の厚さを実感します。これも実写向きの作品。カフェの店長は役所広司にお願いしたい!!



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『ロマンスの騎士』武富智

中世の騎士が現代に転生してフェンシングで自分を殺した相手にリベンジしようとする話。異世界転生物の逆パターンですが、かつて重装騎士団を率いた英雄が、一介の中学生になってしまった為に、一から体力作りをしてフェンシングを学ぶという、実に真っ当な展開。いわゆる異世界転生物や、スポーツ物にありがちな「実は主人公は意外な才能の持ち主で」といった「チート」を排した所が成功の要因。

「フェンシングって何で腰から紐が出てるの?」なんて疑問が読んでいるうちに自然に解決して行きます。TVで観てもルールが良く分からないフェンシングですが、この作品を読めば東京オリンピックでフェンシングを観ても興奮する事は間違い無し。人気競技では無いので、チケットが取り易いかも知れません。



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『赤狩り』山本おさむ

第二次世界大戦後にアメリカで起きた「赤狩り」。「共産思想の人達を検挙した事件」とだけは知っていましたが、詳細を知る日本人は少ないでしょう。

FBIが主導して、ハリウッド周辺の人々が次々に疑惑を追及されて行く中、ウイリアム・ワイラー監督やハンフリー・ボガードらが友人や仕事仲間の無実を証明する為に立ち上がります。しかし、逆に彼らが「赤」のレッテルを貼られ、次第に窮地に陥る事に。

ウイリアム・ワイラー監督は騒動の渦中、新作の企画を立ち上げます。ローマを舞台にした作品の脚本を気に入ります。ワイラー監督は何かと窮屈になったアメリカを離れ、イタリアのチネチッタで撮影する事に。撮影には共産主義者として追及されそうなスタッフを同行させます。

主演に抜擢されたのは無名の新人。小鹿の様に細くて小柄な彼女は戦時中はオランダでレジスタンスの手伝いをしていた事も。女優泣かせで有名なワイラー監督の厳しい演技指導にも屈しない彼女は演技者として次第に輝きを増して行きます。彼女の名前はオードリー。そう、この作品こそが『ローマの休日』なのです。

脚本家は「赤」として追及を受けていたダルトン・トランポ。彼は共産主義者のレッテルを貼られていたので、友人の名を借りてでこの作品を書き上げます。彼はこの他に他人名義で『黒い牡牛』の脚本も執筆しています。

『ローマの休日』の誕生秘話を描く2巻目が圧巻ですが、自由の国アメリカで、法をも超越した共産主義の弾圧が行われた歴史を知る上でも、必読。十分大人の鑑賞に堪える、いえ、大人こそ読んで欲しい作品です。



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『BABEL』石川雄吾

『八犬伝』ほど、様々な二次創作を生み出す作品は他に無いでしょう。元の作品が魔物や妖怪が跋扈する世界観だけに、「奇譚小説」的な2次作品が多いのも特徴。結構、エログロとも相性が良い。女装の剣士が二人も登場する事からボーイズラブ的な展開も可能な素材です。

『BABEL』は奇譚的な色合いが強い作品ですが、圧倒的な画力と現代的な表現で大胆に改変された「八犬伝」は読みごたえ十分。


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『バジーノイズ』むつき潤

マンガが「絵」で作られた世界である以上、表現に限界が有ります。例えば「音」を聴かせる事は出来ません。その限界に様々な人が、様々な方法でチャレンジして来ました。五線譜の楽譜を描く方法や、ジョジョの様な擬音表現をしてみたり、或いはセリフを書かずに無音から音を感じされる様な手法を取ったり・・・。

むつき潤が取った手法はデザインです。音を視覚的デザインに変換してせた。かなりスマートな方法でセンスを感じます。

PCで音楽を作る事に無二の喜びを感じる主人公ですが、作品を人に聴かせるという欲求はありません。アパートの管理人の仕事の傍ら、コツコツと作品を作りますが、アパートの住人の女の子が彼の作品に惚れ込みます。この女の子、非常にエキセントリックな性格で彼の静かな生活は一瞬で崩壊。彼女はSNSで彼の作品を拡散しますが、これが「バズり」ます。(SNSで評判になる事を「バズる」と若者達は言います)

現代的でポップでスタリッシュな作風ですが、これまた現代的なSNSでの情報拡散をテーマにした今を表現する作品です。時代遅れにならない為にもオヤジ必読。


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『ミステリーという勿れ』田村由美

普段なら絶対に買わない表紙ですが・・・「勿れ」という漢字が読めなかったので思わず買ってしまいました。

非常に記憶力と洞察力に優れたボッチの大学生が、ある日殺人容疑を掛けられます。所轄の警察で色々とリ調べを受けるのですが、彼は飄々としています。そして、何故か署員の相談に乗る様になってします。そんな彼が、署員の情報から真犯人を探り当てるという話から始まりますが、コロンボの様な「会話劇」が面白い。

ちなみに「勿れ」は「なかれ」と読みます。




以上、本日は大人にお勧めの最新のマンガを紹介しました。
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2018/6/1

このマンガの続きが読みたい・・・『でゾルドル』  マンガ
 

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『デゾルデル』より

酔っ払って本屋に行くと、何故かマンガを買ってしまう私。翌朝になって、「こんなマンガ買ったっけ??」って思うのですが、実は「アタリ」が多い。

先日、机の上に転がっていたのは『デゾルドル』という作品。表紙の絵だけ見るの「何故、こんなのかっちゃたんだろう??」って作品ですが・・・「フランス最凶」と言われた傭兵団の団長の娘と、オルレアンの聖女ジャンヌ・ダルクを主人公にした歴史ファンタジー。

実は絵が・・・あまり上手く無い。いわゆる「今風」の絵では無い。話の展開も荒い・・・。ではこの作品がツマラナイのかと言えば・・・面白い。イヤ、チョー面白い。

100年戦争の当時、戦争の主役は傭兵達だった。彼らは戦闘の稼ぐ一方で、村々を襲い略奪と凌辱の限りを尽くす盗賊集団でもあった。”憤怒(ラ・イール)」と呼ばれたフランスで最強の傭兵団の団長には11歳になる娘が居る。彼女は戦闘に追従するも人を殺す事が出来ません。彼女は傭兵としては優し過ぎるのです。

そんな彼女を試す為に父親は一計を案じます。傭兵団が村を襲う前に、誰か一人でも村人の首を持ち帰ったら、その村の襲撃を中止してやろうと持ち掛けます。彼女は村に潜入しますが、そこで出会ったのは・・・後にジャンル・ダルクと呼ばれる様になる少女。

共に男装した少女二人の運命が動き始めます・・・。


というのが1巻の大まかな粗筋ですが、これから大きな歴史の流れが動き出します。

ところがです・・・ネットで「デゾルドル」と検索したら、こんなツイッターの画像がアップsれていました。



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岡児志太郎 Twitter より


エェェェーー、単行本第一巻が売れないから「打ち切り」になっちゃうのーーーー!!



これは看過できません。

確かに「今は」絵が上手い訳ではありませんが、もう少し「動き」が描ける様になれば「化ける」可能性を感じる絵柄です。「目力」のある画で魅力も感じます。(力強いタッチだけに、背景を描き過ぎるとゴチャゴチャします。こういう人は背景を省略した方が良いんですよね。)


ストーリテーリング作も突出して上手い訳ではありませんが、物語の筋はしっかりしていますし、何よりも「100年戦争」という世界史の教科書の数行でしか知らなかった出来事をビジュアルで見る事が出来るのは興味深い。特に、当時の戦争の暗部には興味をソソラレます。

私は「完成された作家」など面白くも何ともありません。こういう「作家の卵」が成長する様を見たいのです。



ですから、100年戦争に少しでも興味がある方は・・・買って!!
そして、私に、この物語の続きを読ませて下さい!!



ガンバレ、岡児志太郎!!


頼むよ、講談社のモーニング編集部



ちなみに1話目が公開されています。

第1話】 憤怒の姫君(前編)

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2017/10/15

マンガって面白いよね・・・『アシガール』  マンガ
 

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『アシガール』より

■ 酔った勢いで『アシガール』をゲットした ■

アニメの続きが読みたくて『ボールルームへようこそ』を3巻目から買って家族から大ヒンシュクを受け、仕方なく1、2巻を買う時に、その隣にあった『アシガール』も酔った勢いで買ってしまいました。

目がクリクリした「女子高生」が何故か「足軽」の恰好をしている表紙・・ずっと前から気になっていたんですよね。もう、買え買えオーラがパナイ。

作者は『ごくせん』の森本梢子。2012年の連載開始ですから新しい作品ではありませんが、最近はNHKでドラマ化された様で、本屋の映像化作品のコーナーに展示されて目に触れる機会が多くなったのでしょう。

■ 「若君が好き」という一点突破で突っ走る面白さ ■

<ここからネタバレ注意>

無気力だけど足だけは速い16才の女子高生の「速川 唯」は、弟の発明したタイムマシーンで戦国時代に飛ばされてしまいます。彼女は敗走する足軽達のただ中で目が覚めますが、突然現れた女子高生は、足軽の少年と間違えられて、怪しまれもせず集団と行動を共にする事に。暗闇で見ると、ミニスカの制服は足軽の具足にシルエットが似ている・・・。

手際よく具足も手に入れた唯ですが・・・さすがに身元査証がバレそうになり、こっそりと集団から抜けて山中に逃亡。そこで出会ったのが眉目秀麗な黒羽城の城主の嫡男「羽木九八郎忠清」。出会った瞬間に心を奪われてしまいます。

夢見心地でついつい足軽の集団に戻ってしまった唯ですが、身元を詐称した農家の母親が迎えに来たからさあ大変。・・・ところが、この母親、何故か唯を我が子「唯之助」として家に連れ帰ります。必死の形相の唯を放おっておけなかったのです。美人で気丈の母親は、唯を我が子同様に厳しく扱い、家事を教え、城内の事を教えます。

戦国の生活にも少し慣れた一月後の満月の夜、唯は若様や新しい家族に後ろ髪を引かれるも、現代に帰る決心をします。タイムマシーンの発動条件は満月の夜なのです。

現代に戻った唯は、羽木九八郎忠清が討ち死にした史実を知ります。戦国時代の人物ですから死んでいて当然ですが、若様は唯が飛ばされた時間の直後に死んだと知ると、唯はいてもたっても居られません。弟に頼んで再び戦国にタイムトリップします。土産は白いお米と、駄菓子と携帯ゲーム機。

彼女は若様を守る為には、戦場で若様の傍に居る必要があると考え、どうにかして若様付きの足軽になろうと奮戦します。「若様が好き」という気持ちだけで突っ走る唯でしたが、超ポジティブ思考と、足の速さだけで、一歩、一歩目的に近づいて行きます。

■ マンガならではの面白さ ■

マンガの面白さは「何でもアリ」の面白さ。女子高生が戦場の真ん中で恋に落ちてもマンガならOK。いや、むしろツカミはバッチリ。

但し、これが面白い作品になるかどうかは作者の力量に掛かって来ます。どんなに荒唐無稽な話であっても、読者が共感する物な無ければヒット作とはなりません。

私は共感を生むのはある種の「リアリティー」だと思うのですが、「そうそう、こういう人居るよね」とか「そうそう、こういう事あるよね」と読者に思わせる細かな描写をチョコっと描けるかどうかが重要です。

『アシガール』の作者森本梢子は、こういう「ちょこっとしたリアリティー」の付加が上手な作家だと感じます。ポンと出て来て使い捨ての足軽のキャラでも、どっかに居そうなオッサンで、親近感があったり、城の人々は、大河ドラマに出て来そうな人達だったり・・・。

作家によっては丁寧な人物描写の積み重ねでリアリティーを生み出しますが、森本梢子の場合は「テンプレ」を上手にはめ込む事で一瞬でリアリティを生み出す省エネタイプ。

ただ、この作品、リアルを追及するのではなく、本質はあくまでもラブコメ。とにかく唯の思い込みと勘違いと直感と猪突猛進的な行動力がポンポン繰り出しすテンポを楽しむ作品。しかし、その合間合間に妙にリアルな一瞬が挿入されるから、読者は戦場で駆け回る女子高生という非常識な存在を自然に受け入れてしまいます。

「アリエナイけど、あり得るかも」と錯覚させる能力は、マンガというシンプルな絵柄が作り出す最大の武器です。女子高生の制服と、足軽の具足が似ている・・・これを読者に納得させるのに文字を媒体とする小説では難しい。一方、実写では違いの方が際立ってしまいます。漫画ならばシルエットを並べて描くだけで読者は一瞬で納得すると同時に・・・その組み合わせに爆笑する。

この様な「マンガならではの細かな技巧」がギューっとテンポ良く詰まっているのが『アシガール』です。


カラリと面白い作品なので、家内に勧めたら・・・一週間たっても一向に読む気配がありません。先日、私の誕生日に「僕へのプレゼントだと思って読んで感想を聞かせて」と強要したら・・・
数時間後のメールは「今夜は牛タンでゴザル」と来たもんだ。

帰宅した時には8巻全てを読み終えて、なんだか「ゴザル」が会話の語尾に付いていました。そして、翌朝にはネットで続きのネタバレまで読んでいた・・・・。

昨日、フラリとアパートから帰宅した娘も、家内の勧めで読み始めて・・・2巻を一瞬で読み終えて「バイトがあるから私帰るね」とあっさり続きを全部、鴨川に持って行ってしまった・・・。


『アシガール』恐るべし!!


<追記>

気付いたら、ここ数年、女性作家の漫画しか買っていない・・・。

『応天の門』灰原 薬
『レディー アンド ジェントルマン』オノナツメ(つい先日女性だと知りました)
『WOMBS』白石弓子 (日本SF大賞受賞、おめでとう!!)
『不滅のあなたに』『聲の形』大今良時
『ボールルームへようこそ』竹内友
『BEASTARS』板垣巴留
『式の日』〜『僕のジョバンニ』穂 積
『海街diaryシリーズ』吉田秋生
『シュトヘル』伊藤悠
『ちはやふる』末次由紀
『駅から5分』『花に染む』くらもちふさこ
『雑草たちよ大志を抱け』池辺葵
『市川春子 作品集』
『ゴロンドリーナ』『IPPO』えすとえむ  (今、記事を書いていて女性だと知りました)
『水域』漆原友紀        (今、記事を書いていて女性だと知りました)
『ピアノの森』一色 まこと   (先日女性だと知りました)
『この世界の片隅に』こうの史代

うーん、『銀の匙』『あひるの空』『ファイアパンチ』と『波よ聞いてくれ』以外は見事に女性作家なかりだ・・・。

私の買うマンガの女性作家って、性別不明のペンネームの方が多いんですよね。絵柄も性別不明のものが多い。だから意識して女性作家の作品を買っている訳では無いのですが・・・。男性作家の作品って単調なものが多いからかな・・?


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2016/11/25

珠玉の平安サスペンス・・・『応天の門』  マンガ
 

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■ 在原業平が歌に詠んだ「都鳥」とは・・ ■

スカイツリーの近くにある業平橋。「業平」とは平安の貴族、在原業平(ありわら なりひら)の事。彼がこの地を訪れた折、「都鳥」という名の鳥を見て、都を偲んで読んだ歌に由来します。ちなみに「言問橋」もこの歌が由来です。

名にしおはばいざ言問はむ都鳥わが思ふ人はありやなしやと
『古今和歌集』

「都に置いてきた愛しき人は今どうしているのだろう」という恋の歌ですが、ちなみに都鳥(ミヤコドリ)とはユリカモメの事。

実は現在「ミヤコドリ」と呼ばれているのは別の鳥。

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チドリの仲間ですが、あまり風雅ではありません。

何故、「都鳥」がユリカモメであると言われるかと言えば、伊勢物語で「都鳥」の事を「「白き鳥の嘴と脚と赤き、しぎの大きさなる、水の上に遊びつつ魚を食ふ。」と説明しており、その姿はまさにユリカモメ。

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実は現在では京都の鴨川でも普通に見られるユリカモメですが、京都に現れる様になったのは1970年代から。昔は東国特有の鳥だった。


■ 「平安きってのプレイボーイ」の業平と、「平安きっての切れ者」の道真がタックを組んだら ■

在原業平は桓武天皇の孫にあたり高貴な身分ながら、薬師の変によって嵯峨天皇の子孫に天皇家の血筋が移ってからは臣籍降下し、在原氏を名乗っています。

平安時代のプレイボーイ物語の『伊勢物語』のモデルとも言われ、様々な浮名を流した様ですが、歌の才能もひとかたならぬものが有りました。

ちはやぶる 神代もきかず 竜田川 からくれなゐに 水くゝるとは (『古今集』『小倉百人一首』)

そう、今を時めく「ちはやふる」は彼の読んだ歌だったのです。

業平の時代、都の政治は藤原氏に牛耳られていました。伊勢物語の「昔男」は藤原氏に抵抗する反体制の貴公子の物語ですが、実際の業平は藤原氏とも姻戚関係にあり、政治の中枢から外れる事無く生涯を送ったようです。(Wikipedia参照)


さてさて、ようやく本日紹介する『応天の門』の話の準備が整いました。

灰原薬さんが「コミック@バンチ」で2013年から連載するこの作品、1巻目の宣伝文句は「平安クライムミステリー」だったと記憶しています。表紙は端正な絵なが、もしや中身は・・・あんなこんなのエログロ作品かと思って買ってみたら、何と良質な歴史ミステリーだった。

平安きってのプレイボーイの在原業平と、平安きっての博識の菅原道真がもし親友だったら・・といった「もう一つの歴史」的な作品ですが、作者の灰原薬さんは元々はBL作家だけに、発案された時は「業平が攻めで、道真が受けで・・・ナリミチなんて・・・ぐふぅふぅ・・・」って感じだったのではと勝手に想像しています。(スミマセン)

年齢的には業平の方がかなり上なので、実際の歴史で二人にあまり接点は無かったと思いますが、共に「藤原氏に抵抗していた」という事が接点となって、この物語が生まれたものと思われます。

内容的には、京都の護衛の任についている業平が、京都で起こる難事件や不思議な事件の解決を道真にお願いするという、ミステリーの定石。ただ、起こる事件が今でこそ不思議で無い事が、科学的知識が無い平安では「妖怪」だの「祟り」だのと解釈された訳で、それを博識の道真が唐由来の科学知識を駆使して解決するというのが、何ともキモチの良い。

■ 平安時代をリアルに感じられる素晴らしい作品 ■

現在の私達は歴史の教科書や古典作品を通して平安時代を知るしかありません。ビジュアル的な平安はTVのドラマや映画の影響を強く受けています。そこには薄っすらと「歴史フィルター」が掛かっていて、リアリティーが欠けています。

しかし、『応天の門』はかなり現代的な表現の内容で、着物や風物、風景や単語などは歴史的な背景をしっかり踏まえていながらも、人々の感情は現代人のそれに近い。政争を繰り広げる藤原氏と抵抗勢力のやり取りも、現代劇の様でリアリティーがあります。

「歴史物」に共通していた「当時の人をそれらしく」という無意識の規制が無い事で、歴史上の人物をこんなにも生き生きと描けるという好例かと。

ただ、現代人の持つ自我と、平安時代を生きた人達が持つ自我が当然同じはずは無く、死生観や世界観も異なっている事は確かで、それを敢えて無視できるのは作者がBL的な嗜好の持ち主だから・・・なんて妄想してしまいます。

■ 女の子キャラが可愛い、業平がイケメン、道真がツンデレ ■

この作品の大きな物語は藤原氏とそれにう抵抗する業平達の勢力争い。藤原氏がいろいろとめぐらす策略を、道真の知識と機転でクリアーしていうというのが醍醐味。(実際の業平は藤原氏と宜しくやっていたらしいのですが)

単行本では各話の後に歴史研究家で東京大学教授の本郷和人氏による分かりやすくて面白い解説まで着くので歴史好きにはたまらない作品。単行本は累計で50万部を超すヒット作となっています。

一方、漫画好きには女性キャラが綺麗でカワイイ、業平がイケメンでダラシナクテ素敵。道真のツンデレがかわいい・・・なんて魅力も。

とにかく「大人の読書」に加えて頂きたい!!
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