2022/1/28

市場は利上げに耐えられるか・・むしろFRBが耐えられるかどうか  時事/金融危機
 

■ 3月利上げに反応した市場 ■

至極当たり前の反応として、FRBが3月利上げを示唆した事で市場は下落しています。


ただ利上げは市場も有る程度織り込んでいたので、過剰リスクの部分の調整をしているだけだと私は認識しています。このまま市場が崩壊うる事は無い。

■ 逆イールドは危険 ■

投資は安い短期金利で借りたお金を、高い金利の長期投資で運用して儲けを出す行為と言えます。経済が拡大すると市場が予測する時、短期金利よりも長期金利が高くなります。

しかし、将来的な景気悪化を市場が予測する時は、長期金利が下がります。短期金利と長期金利の差が小さくなる事を「フラット化」と言います。

さらに市場が短期的なリスクに敏感になり、そのリスクが長期的な経済の重しとなると判断すると、短期金利が長期金利より高くなる「逆イールド」が発生します。

長短金利差の目安とされるのは米国債の2年ものと10年物の金利差ですが、現在はこれが0.5まで下がっており、かなり金利はフラット化が進んでいます。

長短の金利差で利益を出す市場は、金利のフラット化や逆イールド化での状況で利益を出し難くなります。ですから、市場の縮小が予測されるので、リスクの大きな投資から手仕舞いが始まる。

■ ゴールドマンサックスは仕込みを終えた? ■

ゴールドマンサックスのジョン・ウォルドロン社長兼最高執行責任者(COO)は年金関係者との電話会議で「ここ2年間中央銀行の独立性は損なわれていた」と発言したと伝えられています。

これはインフレ率が上昇しているのにFRBが緩和規模を縮小しなかった事に関する苦言の様に受け取られていると思いますが、私には「俺たちは仕込みを終えたから、そろそろFRBに利上げしてもらわないとな」と言っている様に聞こえる。

■ 崩壊市場で稼ぎを出す ■

素人は上昇市場では儲かりますが、市場の下落時に稼ぎを出せる人は少ない。基本的には空売りポジションを持っている事がカギとなりますが、市場が強気の時には、相場はなかなか下落しません。

「そろそろ」だろうと、ショートを積み上げたのに下落幅がイマイチだった・・・そんな事は日常茶飯事。実際にはロングとショートのポジションをある程度持つ事でリスクヘッジにはなりますが、利益もその分減る事になります。

市場崩壊のタイミングを掴む事は難しいので、市場が崩壊する時にショートポジションを大きく取って大儲けする事は普通は難しい。しかし、リーマンショック時にゴールドマンサックスはこれをやってのけた。

世界の多くの投資家や投資銀行が崩壊する市場で阿鼻驚嘆状態となる中で、ゴールドマンサックスだけが涼しい顔をしていた。彼らは事前にMBSや下落する金融商品を手放していたし、空売りポジションを膨らめていた。

アメリカの投資銀行が全て債務超過で、商業銀行に吸収される事で政府の資本注入を受けていた時、ゴールドマンサックスだけは資本注入無しで耐え抜いた。そしてリスクを取り続けて大儲けをした。

■ 素人相場はそろそろ終わる ■

金融緩和が継続する時は、中期的には市場価格は上昇を続けるので、年金など動きの遅い資金でも利益が出ます。これは素人の投資でも儲かるボーナス期間。

しかし、一旦市場が下落に転じると、動きの遅い資金は「カモ」になります。知らない間にショートのポジションを積み上げられているからです。

2018年の夏には既にリーマンショック後のバブルは終焉しかけていました。ジャンク債市場やCLO(ローン担保証券)などのリスクの高い試乗から資金が逃げ出し、これらに多くの資金を投入していた日本の金融機関は蒼ざめた。

この時はFRBが市場の圧力に負けて、テーパリングを停止したので事無きを得ますが、それも一時しのぎに過ぎない事は市場も理解していました。2020年頃には市場は再び下落すると予測する人は多かった。しかし、コロナバブルがこれを救います。

しかし、アメリカのインフレ率の上層は、コロナバブルが維持不可能である事を告げています。アメリカのインフレ率の統計にはガソリン価格は含まれませんから、庶民のインフレ実感は数字よりも高いものがあるでしょう。

利上げが実行されれば、市場では様々な思いが交錯します。値動きが激しい状態がしばらく続くと思いますが、ここから素人が利益を出すのは難しい。むしろ、手仕舞いする方が賢明です。

■ 問題は解約出来ない資金 ■

このブログをお読みになられている方は、ここまでの説明など不要な方達ですから、問題は無いと思います。

しかし、自分の親のお金がどうなっているか把握されている方は少ないのではないか・・・。証券会社に変な金融商品を買わされていないか・・・ソフトンバンクの社債を買っていないか・・・ペイオフ対策はされているか・・・。


■ FRBの独立性?は保たれるのか ■

ゴールドマンサックスはFRBは政府や市場圧力に屈する事無く、粛々と利上げをすべ来たと圧力を掛けていますが、市場の大方の勢力は逆でしょう。FRBの利上げ発言に過剰に反応する事で、FRBに利上げを思い止まらせようとする・・・。

どちらがリアリストか・・・。

さてさて、この様な状況の中で、何かと影の薄いパウエル議長は、毅然と利上げを続ける事が出来るのか?

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2022/1/27

グレートリセットとローマ会議  時事/金融危機
 

■ 古くて新しいローマクラブ ■

世界経済フォーラム(ダボス会議)が提唱した「グレートリセット」。岸田首相も「新しい民主主義」をキャッチフレーズにするなど、日本の政権も足並みを揃えている感がある。

ところで、古くからの陰謀論者は、「持続的成長」を主張するグレートリセットに「ローマクラブ」の亡霊を観る思いでしょう。

ローマクラブはスイスのヴィンタートゥールに本部を置く民間のシンクタンクで、1972年発表の第1回報告書「成長の限界」は世界的に注目された。

創始者はタイプライターで有名なイタリアのオリベッティー者の当時の副会長であったアウレリオ・ペッチェイ。彼は「世界の人口が幾何級数的に増加するのに対して、食糧・資源は増やせるにしても直線的でしかなく、近い将来に地球社会が破綻することは明らかであり、世界的な運動を起こすべきだ」と主張し、多くの賛同者を得た。

日本人の正会員は小宮山宏氏(三菱総合研究所理事長、第28代東京大学総長)や元TVキャスターの野中ともよ氏など。

1970年の正式発足したローマクラブは、「人口の増加が地球の資源を食い尽くす」という危惧の元、現在に至るまで、様々な提言をしています。

設立40周年(2008年)にスイスで開かれた会議では「資本主義経済、市場経済と民主主義政治における短期指向の克服で、それに関連するグローバルなガバナンスの改善や強化であり、金融偏重の経済に対する批判などが」について話し合われた様です。

ローマクラブの提言は、1970年代に強い影響力を持っていました。オイルショックを経て資源が無限には無い事を世界が痛感し、工業化の結果の自然破壊や公害が顕著であった時代に、ローマ会議の主張は説得力を持っていた。

宇宙戦艦ヤマトや宮崎駿の諸作は、それまでのアニメや漫画の科学礼讃のアンチテーゼであると同時に、ローマクラブに代表される時代の雰囲気を代表するものでもあったのです。私達の世代はこれらの作品に多くの影響を受けているので「科学や社会の進歩に懐疑的」な刷り込みが強い。

先に引用した2008年のローマクラブの会議の議題は、クラウス・シュラブが主催する世界経済フォーラム(ダボス会議)が打ち出した「グレートリセット」と非常に似た項目が並んでおり、脱炭素社会の実現などはローマ会議こそがオリジナルとも言えます。

■ 予測を外したローマ会議 ■

ローマクラブの初期の趣旨は「人口増加にどう対応するか」という物でした。


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「成長の限界 1972年 ローマクラブより」

上のグラフは1972年にローマクラブが発表した「成長の限界」の中に示されたものです。マサチューセッツ工科大学のデニス・メドウズを主査とする国際チームに委託して、システムダイナミクスの手法を使用してとりまとめた研究です。

「人口が級数的に変化するのに対して、資源生産は直線的にしか増やす事が出来ない」という前提に作られたシミュレーションです。しかし、化学肥料や生産量の多い品種の普及により、食料生産はこのシミュレーションよりも増えています。当時45年で枯渇すると予測された石油は、新たな油田や、新たな原油採掘手法の開発で、未だにR/P比(石油が枯渇するまでの年数)は45年程度のままです。

1972年当時にローマクラブは「2020年に人類は成長の限界を迎える」と予測していまいしたが、それは実現していません。

これだけ見事に予測を外しながらも、ローマクラブは未だに存続し、そして修正を加えながらも「持続可能な成長」を模索しています。

■ 2020年の成長の限界は先進国に訪れた ■

ローマクラブの提唱した「成長の限界」という言葉は、最近は経済の分野で良く耳にします。サマーズが「先進国の経済は成長の限界に達している」などと発言して注目を集めています。

科学や技術の進歩によって回避されたかに見えた「成長の限界」ですが、先進国では経済成長率の低下という形で現実のものとなっています。

先進国が成長の限界を迎えた要因には、技術や工場の海外移転などの要因もありますが、一番の原因は人口動態の悪化です。医療の進歩が高齢化を後押しする一方で、人々はより多くの豊かさを求めて子供を増やさなくなりました。これは新興国も同様で、中国や韓国や台湾なども、今後急激に少子高齢化が進行します。

少子高齢化は経済成長力の低下と共に、国家の財政を悪化させ続けています。


■ 持続可能の為に高齢者を削減する? ■

ローマクラブの懸念は「高齢化による成長の限界」という形で現在も存続し続け、コロナショックの起きた2020年には、本来ならば金融市場は崩壊の危機に直面していた。

私は2020年に新型コロナが発生した事は偶然では無いと妄想しています。「地球の為に人口は抑制すべきだ」というローマクラブの意思は現在も働いていますが、「増え過ぎた人口」は「増え過ぎた高齢者」に置き換わっています。

ここで問題となるのは、少子化も同時進行している点で、「増え過ぎた高齢者」の問題は今後人口動態がバランスするまで数十年続く可能性が高い。そう、私自身が20年後には「増え過ぎた高齢者」の仲間入りをしますし、その頃の日本の少子高齢化は現在よりもさらに悪化しています。

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2060年に日本では1.3人の労働者が高齢者1人を支える予測がされていますが、これは既に社会として成り立っていません。これをリバランスする為には、高齢者を減らすか、若者と増やすしかありませんが、少子化対策はどの国でも失敗し、現在の主流は移民の活用です。しかし、それは同時に社会の不安定さや、将来の高齢者を増やす結果となり、解決策とは成り得ません。

実は少子高齢者の解決は簡単で・・・高齢者を減らせばよい。

スエーデンなどでは高齢者医療を制限する事で対応しています。国民が政府を信頼し、合理的な判断が国民に共有されている結果です。

しかし、殆どの国で高齢者医療の削減は、政権の生命を脅かすので実施が不可能です。選挙のメインプレーヤーは人口ボリュームで最大の派閥を誇る高齢者だからです。(将来的な高齢者も含む)

■ コロナワクチンを使って将来的な高齢化を防ぐ? ■

ローマクラブの予言した2020年の成長の限界と、新型コロナウイルスの登場が偶々重なったのか、それとも計画されたものなのか・・・・私は陰謀論者なので後者であると妄想しています。そして、ダボス会議が「グレートリセット」を同じ年に提言した事も偶然では無い。

新型コロナウイルスの登場当時、そのあまりのチンケな毒性に、このウイルスは経済兵器(金融・通貨システムのリセットの道具)であって、人口を抑制する目的のものでは無いと私は見ていました。

しかし、臨床もされていないワクチンが全世界の人に接種され、人権に敏感な国々で、人権を蹂躙する形で半ば強制的な接種が勧められて行くにあたり、私は今では「世界の経営者は本気で高齢者人口と、将来的な人口を削減しようとしている」と妄想するに至りました。

新型コロナウイルスの死者は欧米でも人口抑制という規模ではありませんが、ワクチンの影響で今後、高齢者の免疫が低下したり、現在の中年が5年後、10年後にガンになったりすれば、高齢者人口は確実に減らせます。


■ 行き過ぎた資本主義や、非効率な民主主義の是正 ■

ローマクラブもダボス会議も「行き過ぎた資本主義や、非効率な民主主義を是正する」と提言しています。

「行き過ぎた資本主義」の是正は、リーマン-コロナバブルの崩壊を切っ掛けに達成されると思いますが、「行き過ぎた民主主義の是正」はどうやって達成されるのか?

コロナ対策は、人権と自由を抑制する形で民主主義の権利を停止していますが、これは一過性です。コロナが収束すれば人々は自由を欲する。

しかし、コロナ対策やワクチンが人々に被害しか及ぼさなかった事が発覚したらどうなるか。ワクチンが実は多くの人の生命を危険に晒していると発覚したらどうなるか・・・おそらく、世界中の政府が責任を追及され、政権の座を追われるでしょう。

その後登場する政府は何を主張するだろうか?「過剰な安全を求めた民主主義が世界を破壊に導いた」と主張するのでは無いか?


ここら辺のイメージは未だ漠然としていますが、「新世界秩序」や「世界政府」といったデジタル管理社会をコロナの恐怖によって作るという陰謀論的予測に私は疑問を抱いています。

むしろ人々が過剰な安全を求めたコロナの結果、人々は自ら率先して自らの権利を政府に委ねるのでは無いか・・・。



何れにしても2020年は世界が変わり始めた年として、後年に刻まれるのでしょう。

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2022/1/24

主流派経済学とMMTの違いは金利が内生か外生かの違い  時事/金融危機

前の記事はマネタリーベースの拡大と投資マネー (人力でGO 2022.01.13)のコメント欄で「日銀当座預金は引き出せない」というコメントが寄せられたので、その誤解を解くものでした。


今回は、MMT的な通貨論と、主流派的な通貨論の何が違うのかを考察してみます。


■ 「通貨の価値を担保するもの論」は無意味 ■

MMT系の方々が主流派経済学を否定する場合、「金属通貨」の否定から入ります。

「通貨が何故価値を持つのか」というそもそも論は昔から有りますが、金兌換制度では「通貨は金に交換出来るから価値がある」とされていました。

しかし、「金に何故価値があるのか」と聞かれたら答えに窮します。「昔からそうだった」、或いは「金は希少故に価値が有る」としか答えられませんが、これは価値の答えとしては不十分です。むしろ、「金は通貨として流通するから価値がある」と答えた方が分かり易い。

ニクソンショックで金兌換制度が中止されてからも通過の価値は失われませんでした。人々は変らずに通貨(お金)を求めました。

一般的に考えれば「モノを買う為にはお金が必要」だから人々は通貨を欲します。従来の経済学では通貨は「交換」と「価値の保存」に便利だから価値が認められると説明されました。通貨はモノを買う喜びと、お金を貯める喜びを私達に与えてくれます。

ところが、MMT派の方々は「通貨の価値は、その通貨でしか納税出来ないから確保される」と説明します。・・・ハアァ??って感じです。だって、納税義務を負わない人もお金を欲するではないですか・・・。

尤も、通貨を利用する時に人々は「通貨の価値」などを考える事は一切ありあせん。支払い手段がそれしか無く、便利だから使っているに過ぎない。


要はMMT派の人達が、主流派経済学を否定する「未だ金属通貨に固執するのか」という批判は、批判にもなっていない。「通貨はモノが買えて納税も出来る便利なツール」としてしまえば
MMT派も主流派も「そだねぇー」って言ってオシマイ。

■ 国債(政府の負債)が通貨を生む事を主流派経済学者も否定しない ■

MMT派が次に主流派経済学を否定する方法は、「通貨は国債発行で生まれる」という事を会計学的に示す方法です。しかし、先の記事で書いた様に、プライマリーバランスが保たれている状態では日銀の信用創造は働かないので、国債を発行しても通過は生まれません。

日銀の信用創造が働くのは、日銀が国債を市場で民間から買い入れた時点です。


1)日銀が市場から国債を買い入れる
2)日銀は国債を購入した相手先の日銀当座預金に買い入れ額を記入する
3)日銀当座預金に記入された金額は現金と同じ性格を持つ
4)日銀当座預金は現金と同様に日銀の負債

MMTでは、「日銀(中央銀行)は政府の子会社だから、日銀の保有する国債は政府の資産である」と説明されます。

中央銀行は法律で政府から直接国債を買い入れる事を禁じられていますが、市場から間接的に国債を買い入れても、結果は同じです。

政府が国債を発行して、中央銀行が現金化する

これは分かり易く言えば・・・次と同義です。

政府が約束手形を発行して、政府の子会社である中央銀行が現金を発行して政府に支払う


日銀が直接的に国債を引き受けようが(財政ファイナンス)、間接的に国債を市場から購入しようが(隠れ財政ファイナンス)、日銀は信用創造によって通貨(現金)を作り出している事になります。

MMTが主張する「政府の債務が通貨を生む」という主張は、財政ファイナンス的な状況においては主流派経済学的にも否定は出来ませし、現実的に彼らはこれを否定いていません。


■ 外生的通貨供給説(主流派経済学) ■

主流派経済学とMMTの差は、通貨供給が内生的(ベースマネーの増加がマネーサプライの増加に必ずしも直結しない)のか、通貨供給が外生的(ベースマネーの供給がマネーサプライの増加を促す)のかの違いです。

主流派経済学の教科書では、銀行の信用創造(マネーサプライ)は次の様に説明されます。

1)預金者が現金を銀行に預ける
2)銀行は準備預金(今は10%)を中央銀行の当座預金に預けて、残りの90%を貸し出せる
4)銀行から90万円駆り出されたお金は、経済活動の結果銀行に90万円よきんされる
3)銀行は9万円を準備預金し、89万円を貸し出す
4)この繰り返しで100万円の預金は900万円の信用創造を生む

この信用創造の元になる100万円の現金は中央銀行の供給したベースマネーです。主流派経済学者はこのベースマネーを調節する事で、銀行の信用創造をコントロールして経済(インフレ率)をコントロール出来ると主張しています。これを外生通貨供給説と呼びます。

「外生」とは「外生変数」の略で、任意にコントロール出来る変数の経済用語です。主流派経済学では政府支出や、マネタリーベースは政府や中央銀行が任意にコントロールされるので「外生関数」と考えます。

外生的通貨供給説(主流派経済学)とは、マネタリーベースを任意にコントロールする事でマネーサプライをコントロールするという考え方です。


実際の金融政策でのマネタリーベースのコントロールは次の方法で行われます。


1)中央銀行がある金利でコール市場など短期に市場に資金を供給する
2)コール市場の金利を資金需要に見合った金利にする事で銀行間の資金調達を活性化する


以前は中央銀行が日銀当座預金の金利操作(公定歩合)によって、市場の資金の放出と吸収を行っていました。しかし、近年は市場原理を重視して、コール市場で超短期金利を操作しています。


■ ゼロ金利下では資金需要の枯渇によってマネタリーベースがコントロール出来ない ■

金利が正常に作用する時には、通貨供給は「外生的」です。民間の資金需要があるので、資金需要に応じた金利にコール市場金利を操作すれば、マネーサプライは適切な水準に調節され、結果的にインフレ率を適正範囲内に誘導する事が可能でした。(可能だと信じられていた)

ところが、「資金需要が極端に低い状態=コール市場金利がゼロ金利」では、中央銀行の金利操作は働きません。資金需要を生もうとしても、ゼロ金利より下は存在しないからです。この状態ではマネタリーベースの拡大が出来ませんから、通貨の外生的な供給が不可能になります。

そこで主流派経済学者が導入したのが「量的緩和=非伝統的金融手法」です。

ゼロ金利下では短期金利操作で資金需要が増えないので、国債やその他の資産を中央銀行が直接買い入れて、金融機関の当座預金に現金を積む事で、マネタリーベースを強引に拡大する政策です。

ところが、実体経済が冷え切っている場合、金利と投資のリスクバランスが崩れているので、民間金融機関は貸し出し先を拡大する事が難しい。一方で、中央銀行の当座預金に金利が付く状態では、ゼロリスクで金利収益が得られるので、金融機関は中央銀行の当座預金に資金をブタ積みして、ゼロリスクで収益を上げようとします。

主流派経済学者の一部(リフレ派)はリーマンショック後に、「量的緩和でマネタリーベースを拡大すれば実質金利が下がり資金需要が復活する」と主張し、政策が実行されましたが、これは失敗に終わります。資金需要を「外生的」にコントロールする事が出来ない事が証明されました。


■ MMTではマエネタリーベースは内生的と考える ■

MMT(現代貨幣論)では貨幣供給は内生的と考えられています。内生変数は任意に操作できない変数です。

民間の資金需要が枯渇して金利がゼロに張り付いた状態では、中央銀行がマネタリーベースのマネタリーベースの操作が機能しません。

そこで、財政支出によって直接的に市場にお金を注入するというのが、MMT派の主張です。政府の財政支出の極端な例は「直接給付」です。お金を欲しくてもお金が無い人に直接お金を配れば消費を活性化し、経済も活性化します。

これは当たり前の事なので、主流派経済学者の中でもブランシャールやサマーズは「政府はもっと財政赤字を拡大すべき」と主張しています。

プリンストン大学のシムズが、「物価水準の財政理論(FTPL,Fiscal Theory of the Price Level)」として体系化しています。

ゼロ金利の制約に直面した状況で金融政策が有効性を失う場合は、インフレを生むように意図した追加財政が代役となり得る。その場合の追加財政は、将来の増税や歳出削減で賄うことを前提にした通常の財政赤字ではなく、インフレでファイナンスされた財政赤字だとする考え方。ゼロ金利下では金融政策によって物価を上げる効果は小さいため、財政政策の拡大によって意図的にインフレを起こし、債務の一部を増税ではなく物価上昇で相殺させると宣言することで人々のインフレ期待を高める。

これをして、MMT派の主張と、主流派の主張の差が無くなった様に錯覚する人も居ますが、キーポイントはインフレ率(金利)が外生的か、外生的かという点です。

■ 金利を外生的(政府がコントロール出来る)と考えるMMT ■

通貨が外生的か内生的かという議論は、ケインズ派と古典派や新古典派経済学(主流派)の間では古くからある論争です。

しかし、ゼロ金利下では通貨は内生的という事は主流派経済学者も認めています。マネーサプライによって通貨が生み出されるというのは、金利が正常に働く状態で観測されるのであって、ゼロ金利下ではこれは観測し難い。

ではゼロ金利下ではMMTが全面的に正しいのかと言えば、問題は金利の捉え方にあります。

MMT派は財政支出を拡大して仮にインフレの兆候が表れたら、財政支出を減らせばインフレ率の上昇を抑える事が出来ると主張します。これはインフレ率は「外生変数」で政府が任意にコントロール出来ると言っているに等しい。

「金利がゼロであるならば、統合政府の負債は無限に持続可能」(極論ですが)と考えるMMTでは、財政拡大によって金利がコントロール出来ない状態は想定していないし、そうなると理論そのものが崩壊します。


一方、主流派経済学者は財政支出によって金利が上昇して、政府支出の増大はインフレによってファイナンスされると考えています。(いわゆるインフレ税)

この場合インフレ率は政府にコントロール出来ない「内生的」と考えられています。



■ インフレ率の上昇と国債の持続可能性、或いはインフレ税 ■

MMT的な財政拡大が継続する条件は「金利<名目成長率」である事です。これが崩れると、財政赤字が急拡大して、財政は発散します。

1)何等かの原因で金利が上昇し始める
2)国債金利は市場金利の最低金利と連動する
3)市場金利以下の金利の国債を保有する事で金融機関には含み損が発生する
4)金融機関が国債を売却して損失を最小に抑えようとするので、
  国債価格が下落(金利上昇)する

5)新発国債と借換債の金利が上昇する
6)ある金利を越えると、国債の利払い費が雪だるま式に膨らみ始める
7)赤字国債の発効量が膨大になり市場で国債が消化出来ずに国債金利の上昇が止まらなくなる

ここまで行くと、日銀は直接国債を政府から購入して国債金利を抑え込む必要が生じます。所謂「財政ファイナンス」です。

ここまで酷い事にならないまでも、財政拡大がインフレ率の上昇を生むならば、金利が引くい預金(国民の資産)の価値が減少して、国の負債は実質的に減少します。国民は増税される事無くとも、インフレ税を国家に払う事になります。


■ アメリカの直接給付は明らかにインフレを生み出した ■

コロナショックは経済と財政の実験場でもありますが、アメリカの直接給付は、明らかに消費を活性化させ、アメリカのインフレ率は7%台に跳ね上がっています。

但し、コロナによる供給制約もインフレの要因に含まれるので、消費がどの程度インフレ率を引き上げたのかは、経過を見る必要があります。

一方、日本では、コロナ給付は貯蓄されたと言われています。これはちょっと間違った言い方で、我が家を始め一般的な家庭では、それなりに消費に回ったと思われますが、その先でお金は企業の内部留保や、企業が支給した給与からの預金に変わった。

日本でもインフレ率は高まっていますが、その原因は原油高に代表される輸入物価の上昇。アメリカのインフレ率が高まった事で、内外金利差から円安傾向になるので、輸入インフレはさらに加速しそうです。

コロナ給付や、コロナ後の経済の活性化を見込んだインフレなので、短期的なインフレ率の上昇で再びインフレ率が下がれば問題有りませんが、インフレ率の上昇が継続し続けると、中央銀行の緩和的金融政策は持続不可能になります。

FRBは量的緩和の縮小や、利上げを匂わせています。


これによって、財政のアンバランス化よりも、資産バブルが崩壊する方が圧倒的に早く訪れます。リーマンバブル、コロナバブルが崩壊する。


主流派とMMTのどちらが正しかったのかという決着以前に、経済の崩壊によって、この論争はウヤムヤにされる可能性が高いと私は妄想しています。
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2022/1/24

日銀当座預金は引き出せる  時事/金融危機
 

■ 「日銀当座預金引きだし」についての日銀の説明 ■

当ブログのコメント欄で「日銀当座預金は引き出せない」「日銀当座預金は市場に流通しない」などの書き込みがありますが、これは明らかに間違え。

下記は日銀のホームページからの引用です。

お札はどのようにして日本銀行から世の中に送り出されるのですか?(日銀ホームページより)

銀行券(お札)は、個人や企業への支払いに必要な分を用意するため、金融機関が日本銀行当座預金から引き出して、日本銀行の窓口から受け取ることによって世の中に送り出されます。これを「銀行券の発行」といいます。

その後、実際に、個人や企業の方々が金融機関から預金を引き出して銀行券を入手し、財(モノ)・サービスの購入や税金の納付といった様々な目的に銀行券が利用されていくことになります。



■ 日銀当座預金とは現金である ■

日銀当座預金は金融機関が引き出そうとしたら、即座に引出しに応じる必要があります。

1)銀行は預金(現金)の一部を準備預金として日銀当座預金として預ける
2)銀行は預金者の引出し要求に応じて現金を預金者に支払う
3)銀行の手持ち現金が枯渇した場合、準備預金を引き出して現金化して預金者に支払う

日銀当座預金を銀行が引き出した時点で「現金」となります。

マネタリーベース=「日本銀行券発行高」+「貨幣流通高」+「日銀当座預金」

マネタリーベースは日銀が経済に供給する「リアルなお金」なので、日銀当座預金が引き出し要求に応じる場合は「現金」として金融機関に支払われます。

銀行券・貨幣の発行・管理の概要(日銀ホームページより)

日本銀行法では、日本銀行は、銀行券を発行すると定めています。銀行券は、独立行政法人国立印刷局によって製造され、日本銀行が製造費用を支払って引き取ります。そして、日本銀行の取引先金融機関が日本銀行に保有している当座預金を引き出し、銀行券を受け取ることによって、世の中に送り出されます。この時点で、銀行券が発行されたことになります。

■ 日銀当座預金が引き出せなければ公共事業費を政府は支払えない ■

MMTの序段は次の様に説明されます。

1)政府が国債を発行する
2)金融機関などが国債を購入して代金を支払う
3)日銀当座預金で、金融機関の口座から政府の口座に支払われる

4)政府が公共事業を発注してその代金を受注業者に支払う

4)をもう少し細かく解説します

A)政府が受注業者の口座を持つ金融機関の日銀当座預金に政府の日銀当座預金から支払う
B)金融機関は受注業者の口座に該当金額を記入する(現金での支払い義務が生じる)

政府は受注業者の保有する民間銀行の口座に直接支払う事は出来ないので、日銀当座預金を通じて民間銀行に支払いを代行させているのです。

国庫制度の概要財務省ホームページより


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財務省ホームページより

国庫金とは

 国庫に属する現金のことです。
 国庫金には、国が所有する現金(預金を含む)のほか、国が法令又は契約に基づき一般私人等から提出され一時保管している現金(保管金、供託金)や、公庫から国庫に預託された業務上の現金(公庫預託金)も含まれます。
 一方、地方公共団体や独立行政法人等に属する現金は国庫金には含まれません。
 国庫金は、会計法第34条、予算決算及び会計令第106条の規定により、日本銀行に政府預金として預けられています。


国庫金は日銀当座預金に預けられていますが、財務省の説明でも「国庫金は現金」と明記されているので、日銀当座預金は現金と同じものだという事が分かります。


■ MMT支持者の一部の勘違い ■

MMT支持者の一部に「日銀当座預金は引き出せない」という誤解があるのは、「民間の銀行が公共事業の受注者や年金の受け取り者の口座に代金を記入した時に信用創造が発生する」と勘違いしているからでは無いか?

1)政府が民間に国債を売却して民間の現金を政府の日銀当座預金の国庫として保管する

2)事業受注代金の支払いや、年金支払いの要求に応じて、支払い対象者が口座を保有する
  民間銀行の日銀当座預金に、政府の日銀当座預金から支払う

この状態では、民間の現金と政府の現金のやり取りだけなので、プライマリーバランスは保たれますが、マネタリーベースは増えません。信用創造は働きません。


複雑になるので、次の記事で、主流派経済学とMMTの違いを考察します
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2022/1/13

マネタリーベースの拡大と投資マネー  時事/金融危機
 
■ 日銀の純粋な負債の通貨の価値はどうやって保たれるのか? ■

日銀の実施して来た量的緩和や異次元緩和は、「市場から国債や株式などの資産を購入によって、金融機関に強引に資金を供給し、実質金利を下げる政策」と一般的には理解されています。

量的緩和(異次元緩和)=マネタリーベース(MB)の拡大

マネタリーベース=日銀当座預金 + 現金


中央銀行は通貨の発行権を持っています。中央銀行が〇〇銀行の日銀当座預金に〇〇円と記載した時点で通貨が生まれます。

通貨 = 中央銀行の純粋な負債


ただし、中央銀行にいくら信用があると言っても、「純粋な負債」に信用があるとは思えません。以前は金兌換制度により「金が通貨の信用を支えて」いました。しかし、ニクソンショックによって金兌換制度が停止されて以来、通貨の信用は「国家の信用」が支えている事になっています。

何故ならば、中央銀行は勝手に通貨を発行するのでは無く、通貨発行に伴って応分の資産を購入しているからです。下は日銀の資産の内訳です。

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日銀の資産 = 国債 + 貸出金 + 民間債権

日銀の資産の中で、金額的に圧倒的に多いのは国債です。「国債=国の借用書」と捉えるならば、それに見合う資産が国になければ「通貨の信用」も損なわれます。

国家の資産 = 将来的な税収 + 国有資産(国有地やインフラ、対外債権など)

日銀の純粋な負債の「通貨」を支える資産が国債という「国家の債務」というと通貨に価値があるのか不安に思えて来ますが、「国家の債務」の担保は「将来的な税収と、国有資産」と考えれば通貨に価値が有る様にも思えて来ます。

これは日銀貸出金も同じで、貸出金に関しては無から有を作るが如く「純粋な日銀の負債」を民間金融機関を通じて「貸出」していますが、「借り手の信用」を資産と考える事も出来ます。

■ 通貨の価値を支えるのは「国の生産力」 ■

日本国政府の保有する米国債は事実上売る事が出来ませんし、国有地やインフラを大規模に売却する事も想像し難いので、「国家の資産」というのは便宜上の価値の裏付けと考えた方が良さそうです。

将来的な税収に関してはどうか・・・。例えば、空洞化が進み大手企業が海外に流出して、日本がサービス業だらけの国になって、国民の年収が下がった場合、税収はそれ程伸びるとは思えません。(これ現実的にそうなる可能性が高い)。一方で年金を始めとした福祉コストは増大するので、「財政赤字の拡大>税収」となる事は避けられません。

極端な話として、生産に携われない高齢者だけの国になったとして、税収はゼロで、福祉コストだけが発生するとします。成長力はゼロ以下ですから金利はゼロなので、当然国債金利もゼロ。この条件では、無限に国債を発行して通貨を発行出来ますが・・・こんな国の通過は国際的にはほぼ価値は有りませんから、為替は極端な円安になり、日本は輸入すら出来なくなります。

私は次の様に考えています。

通貨の価値 = 「国民の生産力(稼ぐ力)」

「生産力」とは、農業や業業などの一次産業や、鉱工業などの二次産業に限りません。アニメを制作して海外に売って外貨を稼ぐのも立派な生産です。(国内でアニオタが消費するのは・・・生産的とは言えません!)


■ マネタリーベースを増やすだけでは生産力は増えない ■

異次元緩和の理論的裏付けとなた「リフレ論」の目的は、「実質金利を下げて経済を活性化する」というものでした。これは「通貨が増えても、生産力が拡大すれば問題は無い」と言い換える事が出来ます。

しかし、結果的に異次元緩和でも日本経済は拡大しなかった。


そこで「量的緩和や異次元緩和で供給されたマネタリーベースは実体経済を刺激出来ない」という方が出て来た。(元々、「ブタ積」論は有りましたが)

マネタリーベース = 日銀当座預金 + 現金

「日銀当座預金は市中で使われるお金では無いので、実体経済に影響を与えない」とい主張です。これは勘違いです。


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上のグラフはマネタリーベースとマネーストックの推移です。

マネーストック = 国全体にある通貨の量 = 日銀の発行した通貨 + 民間の発行した通貨

上のグラフで衝撃的なのは、異次元緩和で日銀が通貨(マネタリーベース)を増やしている額よりも、マネーストックの増加額が少ない事です。日銀がマネタリーベースを増やしても、民間の信用創造が減少している・・・。

■ 異次元緩和は、民間投資をクラウディングアウトした ■

異次元緩和の結果だけを簡潔に書くと・・・

1)日銀がマネタリーベースを拡大する一方で民間金融機関は貸し出しを減らした

2)日銀がマネタリーベースを増やして供給した資金が海外に流出した



この二つが同時進行していると考えられます。

金融緩和は調達金利をゼロにする事で金融機関のリスクテイクのハードルを下げようとしますが、社債市場が発達した現在では、大企業は社債市場で低金利の恩恵を享受するだけとなった。一方、金融機関からお金を借りようとするのは、リスクの高い企業ばかりになったので、結果的に金利をゼロに張り付ける異次元緩和は、金融機関を間接金融の世界からクラウディングアウトする結果となった。


■ 異次元緩和は、海外への資金流出を生んだ ■

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上のグラフは日本の海外資産の推移です。特徴的なのは「直接投資」が増えている事。これは企業などが海外で製造設備を作るなどして行う投資です。リーマンショック後も大手企業などは業績を拡大していますが、国内で金利の安い資金を調達して、海外の生産設備などに投資しているのです。問題なのは、その利益を国内に還流しない為、企業業績は好調でも、国内の景気に対して影響を与えません。

又、海外直接投資の中には金融機関や一般企業のM&Aなどの資金や、海外企業への資本参加、不動産取得なども含まれます。日本国内での成長に限界がある企業が業績を伸ばす為には、海外企業の買収などが手っ取り早いのですが、日本郵政のオーストラリアの物流会社買収など失敗する例も多い。金融機関や証券会社も海外法人を盛んに買収していますが、これも失敗が多い。


■ 米国債保有額は増えているが、海外証券投資はそれ程増えていない ■

意外なのは、証券投資がそれ程増えていない事。リーマンショック後の円高の時期には、強い円を背景に証券投資が増えていたのですが、異次元緩和以降は円安によって減少気味に推移しています。為替差損を考慮すると、リスクヘッジ後の利幅が少ないのがその原因だと思われますが、一方でハイリスク・ハイリターンの証券への投資が増えている点には注意が必要でしょう。CLO(ローン担保証券)や、ジャンク債などは日本の金融機関がメインのプレーヤーでした。


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海外証券投資が伸びていない中で、米国債に限っては、その保有額は増加し続けています。これは異次元緩和の効果とも言えます。

1)日銀が国債を買い入れる
2)国債金利がゼロになる
3)日銀当座預金の金利もゼロ又はマイナスにする
4)金融機関は日銀に国債を売却した資金を、金利の取れる米国債に投資する


■ 日銀当座預金は取り崩されて海外資産に変わった ■

ここで「金融機関が日銀に国債を売却しても、日銀当座預金の残高が増えるだけで民間で使えるお金は増えない」というトンチンカンな事を言う人も居ます。

日銀当座預金の残高は確かに増えていますが、金融機関の日銀当座預金の額は絶えず変動します。当然、金融機関は日銀当座預金を取り崩して、その資金を運用する事が可能です。マイナス金利が掛かる日銀当座預金にブタ積する事はナンセンスですし、マイナス金利政策の目的が日銀当座預金からの資金流出なのですから。

そもそも、過去の日銀の金融調節機構というのは、日銀当座預金の金利操作によって行われていました。インフレ率が高まった場合は、日銀当座預金の金利を上げて市場から資金を吸収し、景気が低迷したら金利を下げて日銀当座預金の資金を市中に放出させた。


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上のグラフは産経新聞の悪意のあるグラフで、日銀が増やしたマネーが中国に流れていると曲解させるものですが、中国の対外債務を無視すれば、日銀が2012年以降拡大した通貨に相当する額が、ほぼ海外金融債権に置き換わっている事が分かります。

半分は邦銀が直接米国債などを購入した資金ですが、半分は邦銀が国債融資をした額です。海外の金融機関や投資ファンドなどに邦銀が融資している。


■ 日本の異次元緩和はブタ積と、海外投資を増やしただけ ■

MMT派の方々は、ゼロ金利の環境下では、国債を発行しても、日銀が国債を購入してマネタリーベースが膨らむだけだから問題は無いと言います。

しかし、異次元緩和で供給されたマネーは、日銀当座預金から引き出されて、確実に海外に流出しています。(日本のマネーストックは微増)そして、米国債を買い支えたり、怪しい金融商品に投資されています。全ては、日本の金利がゼロになってしまったからです。

そして、FRBの供給したマネーも、ECBの供給したマネーも等しく資産市場に流入して、バブルを成長させています。

世の中には様々なジレンマやトリレンマが存在します。先進国が成長の限界を迎える時点で、中央銀行の金融調節機能は非効率なものになっていた。そして、それは1970年代には既に始まっていたのかも知れません。

そして、現行の中央銀行制度の限界が訪れようとしているのでしょう。だからグレートリセットが必要とされるのでしょう。


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