2020/7/10

御唱和下さい『ウルトラマンZ』・・・円谷の歴史を逆手に取る  アニメ
 

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■ 規格外のウルトラマン、『ウルトラマンZ』 ■

幼稚園の頃、ウルトラマンの絵を友達のノートに描いて、おやつを分けてもらっていた私にとって、ウルトラマンは、勤労経験の原点とも言えます。だから、新作が出る度に10秒程度はチェックしますが、1話を通して見る様な作品は、ここ20年程出合っていません。

特撮版のウルトラマンは平成に入り、過去の「ウルトラマン兄弟」路線から縁を切って、解体再構築された『ウルトラマン・ティガー』のヒットで、リアルウルトララマン路線がしばらく続きます。これは、海外で『バットマン』の現代風解釈がヒットした状況に似ています。「子供騙し」から、大人も納得出来る設定を準備する事で、かつての子供達をファンに引き戻したのです。(リンクする様に仮面ライダーも『仮面ライダー・クウガー』からの平成ライダーシリーズはリアル路線に転換して成功します。)

しかし、何回かシリーズを重ねる毎に、ウルトラマンも仮面ライダーもリアル路線はマンネリ化し、イケメン若手俳優のショーケースの役割しか果たさない様になりました。ただ佐藤健を排出した『仮面ライダー電王』だけは、突然変異的に面白かった。

そんなこんなで、新作ライダーや新作ウルトラマンをチェックする事すらしなくなって10年以上経ちますが、偶々Amazon Primeでクリックした『ウルトラマンZ』があまりに「規格外」で面白かったので、かつて少年だった読者の方々に紹介します。

「御唱和下さい、ウルトラマンZ−−−−!!」

ハイ、これが変身の掛け声です。もう「規格外」感がハンパ無いっす!!


■ ウルトラマンの過去に遺産をどう活用するか ■

過去の名作を現代的にリメイクしてヒットを生み出す手法は、ティム・バートンの『バットマン』当たりから増えますが、先にも書いた様に平成に入り、ウルトラマンと仮面ライダーも同様のシリアス路線で、子供と一緒にTVを見る親を巻き込む形でヒットを生み出しました。

しかし、一方で「子供が楽しめる内容」からどんどん離れて行きます。バンダイのオモチャの宣伝番組としては、これは問題です。だから、「大人も納得出来る」作品と「子供が楽しめる作品」の間で中途半端な位置取りが続きます。これによって仮面ライダーもウルトラマンも魅力を失ってしまいます。

一方でアニメではタツノコプロダクションが『ガッチャマン』やの意欲的再構築を試みて、それなりの話題を集めます。『ガッチャマン・クラウズ』はガッチャマンやベルクカッツェという名称こそ受け継ぐものの、作品としては全く別の地平に立ち、かなり面白い作品としてニッチな層にヒットします。

往年のタツノコ作品のヒーロー達を集結さえた『Infini-T Force』も、それなりに面白かった。オッサンになったガッチャマンがかなり良い味を出してました。オッサンになったかつてのヒーローは、実は円谷も追随していて、先般放映された『ウルトラマン』はウルトラマンの息子の話だった。(2話で視聴を止めたので話の内容は不明)。

タツノコプロも、円谷も過去のヒーローや怪獣達という「莫大な遺産」を持っていますが、をれを敢えて否定した「平成シリーズ」以降、大きなヒットを生み出していません。(「仮面ライダー電王」を別として)

例外的にアニメの『グリッドマン(SSSS.GRIDMAN)』は、「アニメに全振り」する事でコアなファンをガッチリ掴む事に成功しています。

■ アニメ的ギャグを実写に取り込む面白さ ■

今回の朝の連ドラ『エール』を私は家内のワンセグで楽しく観ていますが(家内が楽しく観ているのを盗み観しているのですが・・・というか音だけ聞いている)、その演出はかなりアニメ的です。(クドカン風とも言えますが)。

アニメ的とは何かと聞かれたら、「キャラ立ち」と私なら答えます。アニメは線で描かれた絵に過ぎませんから、人物を描写する際に徹底した「記号化」を施します。語尾に「ニャー」なんて付けたり、ツンデレの様なパターン化を積極的に取り入れ、リアルな人物像を敢えて捨てる事で、「二次元の違和感」そ逆手に取ります。

これはアングラ演劇の演出手法に似ていて、あえて極端な演出をする事で「役者の生っぽさ」を排除する方法とも言えます。だからクドカン作品を観ると、アニメファンとしてはアニメ的だと感じる。

このアニメっぽい演出は、依然から特撮ヒーローものにも取り入れられていました。戦隊ものなどはその傾向が強かった。それをウルトラマンに取り入れたのが『ウルトラマンZ』です。

「アニメ的演出」の基本は「記号化」ですが、『ウルトラマンZ』は過去のウルトラマンの記号化が徹底しています。「記号化」とは何かと問われれば「有無を言わさぬ強引な設定」と言い換える事が出来ませす。「ウルトラマンはM78星雲から来た宇宙警備隊の戦士」「怪獣は普通の存在し街を壊す」・・・かつてのウルトラシリーズはこの設定を納得させる為にかなりの時間と労力を費やした。

しかし、『ウルトラマンZ』では冒頭から、怪獣「ゴメス」が普通に暴れていて、さらには宇宙ではウルトラマン・ゼロと弟子であるウルトラマンZが普通に怪獣と戦っている。背景が〇っと抜け落ちていた「ウルトラマンの世界ってそういう設定だよね」というお約束を強引に押し付けて来ます。そして、ウルトラマンの過去を知る私達は、それにねじ伏せられてしまいます。

設定が強引だから、後は自由に展開する事が可能です。ウルトラマンZは地球に来たばかりだから「日本語がちょっとオカシイ」とか、かなりアニメやラノベネタですが、それを強引に「設定」として納得させてしまう。

だから返信の掛け声が「御唱和下さい、ウルトラマンZ]だって、私達はなんだか納得してしまうのです。


■ 過去の諸作の良いとこ取りを、絶妙なバランスで行う妙技 ■

実は『ウルトラマンZ』は、昭和と平成のウルトラマンの良いとこ取りを積極的に行っています。
地球防衛軍の隊長がかつてはウルトラマンだったのだろうと往年の視聴者ならば直ぐに気付きますが、これは『ウルトラマン・レオ』の諸星隊長へのオマージュ。科学者の女性隊員が妙に明るくて可愛らしいのは、『ウルトラマン・ダイナ』の山田まりやを彷彿とさせます。

他にも「細かなウルトラネタ」が散りばめられていて、往年のファンとしては自然にニヤニヤしてしまいます。

未だ、2話までしか観ていませんが、これは10年に一本の名作(怪作)になる予感。


取り合えずは「御唱和下さい。ウルトラマンZ]!!

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2020/5/19

祝『若おかみは小学生』・・・地上波放送  アニメ
 
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劇場版『若おかみは小学生!』より



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辻 真先(つじまさき)先生

「今頃見たのかシリーズで、劇場版「若おかみは小学生!」を見る。現実と対峙せねばならぬハードな主題を、アニメで描き切った脚本監督の鮮やかさ。後景の演出、一瞬の間合い、巧な省略、プロの力量と同時に、人物の造形に心をこめたやさしい手つき。ほとんど間然とする所が無い。喝さいを送ります。」



「ジャングル大帝」や「鉄腕アトム」「海のトリトン」などの手塚作品や、初期の東映「魔女っ娘シリーズ」、「巨人の星」など、数々のアニメで脚本を書いたアニメ脚本家の神の一人であり、小説家としても「第9回本格ミステリ大賞受賞」を受賞するなど執筆作品も多い方です。



私が千の言葉を弄してどんなにこの作品を褒めるより、アニメ創成期の神脚本家の3行が全てを物語っています。「人物の造形に心をこめたやさしい手つき。」そう、これこそが、この作品最大の魅力なんです。

やはり、プロの評論は一味も二味も違う。






私は、「死ぬ前一本だけアニメを観てイイよ」と神様に言われたら、多分、この作品を観て幸せな気持ちであの世に旅立つでしょう・・・そこが、たとえ地獄だとしても。





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2020/4/28

オーバー60歳向けのアニメ講座・・・アニメ声でないアニメ  アニメ
 

■ アニメの声がダメというあなたに ■

私の母は80歳になりますが、私が実家でアニメを観ていると家に一台しかないTVを独占されるので、アニメを強制的に観るハメに・・・。

まあ、あまりにオタクのアニメは辛い様で、自分の部屋に行ってしまいますが、意外に若者向けのアニメでも我慢して観ている・・というか、結構笑いながら観ています。先日も大きな画面で『とらドラ』を観ていたら、頑張って6話位まで観ていました。(笑らう場所がちょっとズレてるのですが・・。)

ただ母はいつも「アニメの声が嫌だ」と言います。「疲れちゃう」と。家内も「アニメの声は頭にキンキンする」と良く言います。

「アニメの声=アニメ声」とも言われる「頭のテンコチョから出て来る様な声」に違和感を覚える方は多いと思います。(実は私も以前はそうでした。『エヴァンゲリオン』ですらオタクっぽくて苦手でしたから)

どうしてアニメが所謂「アニメ声」に席巻されたかは後日考察するとして、「本日はアニメ声が出て来ないアニメ=大人向きアニメ」を少し紹介したいと思います。(昨日紹介したアニメは60歳以上の方には少々ハードルが高かったかも知れません)

基本的には80歳の母が観て「面白い」と言った作品が中心ですが、実は「実写化」されているものが多い。そして、マンガ原作の作品がほとんどです。

アニメにはアニメの表現手法や世界観が存在しますが、一般の方には「ファンタジー要素=現実的では無い」と感じる様です。(ジブリやディズニーは脳内で別枠なのでしょう)。だから、ファンタジー要素が無く、ドラマがしっかりしている作品が受け入れられ易い様です。

『昭和元禄楽以後心中』

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『昭和元禄楽以後心中』より

TVドラマでも好評だった作品。アニメでは「声優の声の技」を堪能できます。本職の落語家も焦るのでは無いでしょうか。

刑務所を出所して行くあてもない与太郎は、刑務所の慰問に訪れた落語家八雲に強引に弟子入り志願をします。時はTVに娯楽の主役を奪われた時代。八雲はどこの誰とも分からない与太郎の弟子入りを何故か認めます。

落語家として名高い八雲ですが、どこか死の影が付きまとう・・・いえ、昔のとある出来事から死を願っていたのです。八雲には若かりし頃、一緒に修行を積んだ助六という親友が居た。助六の芸は大衆を引き付ける魅力があったが、性格はいい加減。結局、女と駆け落ちして東京を去って行きます。とある地方で助六と再会した八雲ですが・・・。

雲田はるこの漫画原作も素晴らしいのですが、じっくりと描き込むアニメも必見です。落語家顔負け(声負け?)の声優達の「声芸」に惚れ惚れします。そして、古典落語の入門としてもお勧め。「死神」「芝浜」などじっくりと聞かせてくれます。

実際の落語家との比較集をどなたか作られてネットにアップしています。これは興味深い。

『昭和元禄落語心中』の演目聴き比べ


『坂道のアポロン』

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『坂道のアポロン』より

戦後の佐世保でジャズに夢中になる高校生達の物語。

東京から転校して来た西見 薫はクラシックピアノを弾く神経質な秀才。気弱でイジメられ易い彼ですが、ふとした切っ掛けから学校一の問題児の千太郎と親友になります。千太郎はクラス委員の律子の幼馴染で、レコード店を営む律子の父親とジャズを演奏しています。律子に淡い恋心を抱く薫は、千太郎への対抗心から「ジャズなんて下らない」と言い、「モーニン」を弾いてみせますが、「全然違う、そんなのジャズじゃなか」と否定され、レコードを買って練習するうちにジャズの魅力に取りつかれて行きます。

戦後の匂いの残る佐世保で繰り広げられる高校生達の青春群像は、80歳の母をも魅了して、目をキラキラさせて食い入る様に観ていました「次ある?次もある?」と、ほぼ一気観していました。時代設定は母達の青春時代と見事に重なるので、当時を思い出している様でした。

音楽は世界の菅野よう子。(最近はアニメ音楽から離れていますが、彼女のアニメのサントラは名作揃いです)

実写映画化されていますが・・・・アニメの圧勝でしょう。(実写版、作品のイメージが崩れそうで恐ろしくて観れません)


『うさぎどろっぷ』

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『うさぎどろっぷ』より

東京でアパレルメーカーに勤める30歳の独身男の大吉が祖父の葬儀で実家に戻ると・・・何と、祖父の隠し子が居た。それも幼女。当然、親戚は誰が引き取るかで揉め、やはり施設に預けるしか無い・・・そう成りかけた時、大吉が彼女を引き取ると言い出した。「あんたが育てるなんて無理」と引き留める母達の制止も聞かず、大吉は幼女を東京に連れ帰ります。

幼女は「りん」と名乗ります。連れ帰ったものの、何をどうして良いか分からない大吉。とりあえず従妹に電話して、保育園探しから奔走します。ついつい勢いで連れて来たものの、男手で幼女を育てるのは大変です。大吉は営業として優秀でしたが、定時で帰れる配送課に転属を願い出ます。彼の生活はりん中心に一変します。

始めは「祖父の隠し子」と敬遠していた大吉の両親や妹も、だんだんと、りんを受け入れ、実の孫のごとく可愛がる様は観ていて心がホッコリします。

子育て世代に絶大な共感を呼ぶ『うさぎどろっぷ』。原作漫画はりんが成人するまでを描きますが、アニメは小学生まで。

これも実写映画化されていますが、悪く無い出来でした。


『僕だけがいない街』

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『僕だけがいない街』より

これも実写化されています。

売れない漫画家の悟の母親が彼のアパートで殺されます。母親が20年前に北海道で起きた連続児童殺人事件の犯人に気付いた為に殺されたのです。当時の被害者は悟の同級生だった雛月 加代。

しかし、不幸にも悟は犯人として警察に負われる事に・・。窮地に陥った彼は、何故か小学生の姿となって、小学生当時の北海道に戻ってしまします。実は悟には何故か時間を遡る能力(タイムリープ)が有あったのです。ただ、それは無意識に発動し制御出来ない・・・。

悟は加代が殺される事を知っていますから、犯人を突き止め、殺人を阻止しようと試みます。当時は親交の無かった加代に近づき、加代の不幸な生活も垣間見る事で、加代を絶対に救うと決意しますが・・・意外な犯人の手は、悟にも・・・。

「タイムリープ」というファンタジーを許容出来れば、極上のサスペンスを味わえる事、間違い無し。

小学生の世界に突然大人の視点で混ざる事になる悟の目に、当時の子供達がどう映るのか。なかなか興味深い作品です。



『サクラクエスト』

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『サクラクエスト』より

就職に失敗した短大生の「木春 由乃」は「椿 由乃」という往年のアイドルと間違われて、地方都市「間野山」の国王に?。国王と言っても、かつて日本中で流行ったミニ・独立国の成れの果ての「チュパカブラ王国」の国王で、実際は観光大使みたいな役柄。1年契約です。

田舎に育った由乃にとって、間野山も代わり映えのしない寂れた田舎にしか思えません。名産は「カブ」。それだけ。そんな地方都市を「バカ者でヨソ者」の由乃が活性化出来るのか・・・。行き当たりバッタリの思い付きの行動が多い由乃ですが、前向きだけが取り柄。そんな彼女を同年代の仲間が支え合って、徐々に地域の人達の信頼を得ながら、小さな何かを変えて行く物語。

富山県城端に本社を構えるPA WORKSのライフワーク「働く女の子シリーズ」の3作目ですが、「地方再生」という現代の日本の課題を正面から描きながらも、エンタテーメントとして極上の作品に仕上がっています。

この作品、アニメである必要は全く無く、むしろNHKで実写ドラマで放映すべき作品ですが、今の日本のTVの視聴者で視聴率が取れるとはとうてい思えません。実は、アニメは「社会性」を持った作品でも「楽しく見せる」技術を既に身に着けています。脚本家はドラマも手掛ける方なので、テーマの扱いも上手い。

特に17話、18話の出来は秀逸で、「社会派作品でもアニメは実写を越えている」・・・そう断言できる一作です。

TVドラマでマトモな脚本が書ける脚本家が居なくなったと思ったら、アニメ業界に流れて来ているのかな。劇伴の作曲家と同じ流れになって来ています。


『ブラックラグーン』

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『ブラックラグーン』より

漫画原作のハードボイルドな作品ですが、現代の混沌とした世界を良く描いています。

緑郎(ロック)は日本の商社に勤る平凡なサラリーマン。不運のも国家的な裏取引で会社の捨て駒にされます。当然、殺されるハズのロックでしたが、何故だか逆ギレして犯人一味と行動を共にする事に。

東南アニアの無法都市、ロアナプラに流れ付いた世界中の無法者達を描く作品ですが、各国の政治情勢も絡んで、新聞やニュースでは伺い知る事の出来ない、世界のもう一つの姿を垣間見る事が出来ます。充分に大人の鑑賞に堪えるというか、ハリウッド映画なんて子供向けに思える内容。

監督は『この世界の片隅に』の片渕須直。片淵監督、すっかりジブリ監督みたいなポジションになっていますが、実は大のミリタリーオタク。そんな監督の趣味全開の作品でも有ります。



『若おかみは小学生』

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『若おかみは小学生』より

小学生向けの児童文学の映画化ですが、劇場で涙にむせぶ高齢者が続出。私、アニメ映画で、パンフレットを買いに走る中高年の姿を始めてみました。

世の中には2種類の人しか居ません。『若おかみは小学生』を観て「感動する人」と「感動しない人」です。残念ながら、この作品を観て、涙しない人とは友達になりたくありません。



以上、本日は60歳以上の大人でも、思わずハマル、近年の名作アニメを紹介しました。
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2020/4/24

【再掲載】 あなたは「アナログハック」されているかもしれない  アニメ
 
■ アナログハック ■

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アニメ『BEATLESS』より、レイシアたん


人は「見た目=外見」に左右され易い。例えばカワイイ娘がにっこり微笑んでくれたら自然とガードが下がります。まあ、たまに「おおWWーーー、こんなカワイイ娘が俺に笑いかけて来るなんて、これは組織の陰謀なんだなぁーーー」なんて輩も居るかも知れませんが・・・。

この「見た目によって作られるセキュリティーホール=アナログハック」をテーマにした作品が、先の記事で紹介した『「BEATLESS』です。

ハローキティーを可愛いと思うのもアナログハックで、その結果、多くの人がキティーグッズを買ってしまう・・・こんあ感じに作中説明されています。

作中、主人公の男子高校生は美しい姿をしたレイシアというHIE(アンドロイド)にほのかな恋心を抱きます。彼女の言動はコンピューターのプログラムが作り出す疑似的な人格や感情だと分かっていても、レイシアが微笑まれると「チョロイ」高校生は恋心すら抱いてしまう。これは武骨な外見のロボットだったら、そうは成りません。これがアナログハック。


■ コロナウイルスとアナログハック ■

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NHKニュースより

コロナウイルスは目に見えませんから「アナログハック」からは遠い存在と考えてしまいますが、TVの画面には突起を沢山生やした球状のウイルスの画像が頻繁に登場します。なんだか、あのトゲトゲが喉や肺の細胞にブチリと刺さっている所を想像するだけで、喉がイガイガします。これは明らかに「アナログハック」。

実は目に見えない細菌やウイルスは以前より擬人化したイラストで表現される事が多い。

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見えないから「怖がる」様に可視化して、子供にばい菌の怖さをイメージ付ける為のビジュアル化ですが、まさに「アナログハック」です。


■ グラフあ数字よりも洗脳し易い「アナログハック」 ■

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毎日新聞 より

新型コロナウイルスの感染が世界中に広がってから、上の様な映像を目にしない日は有りません。ゴーグルにマスクを装着して、全身を防護服で覆った医療スタッフが患者を搬送したりケアーする映像は、「何かとんでも無く恐ろしい事が起きている」というイメージを人々に植え付けます。

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ビニールの簡易防護服で身を固めた医療スタッフの映像は、日本人に限らず世界の人達に「福島原発事故」の記憶を無意識に呼び起こします。人々は「新型コロナウイスるは放射能の様に恐ろしいものだ」と考えます。

最初はマスクの効果を否定していた欧米やフランスでも、国民にマスクを配布するようになります。

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毎日新聞 より

今や「マスク=コロナのアイコン」となって、日々視聴者に恐怖を植え付けています。

この様なTVを通じた「アナログハック」に視聴者はコロリと騙される。



だから私はTVを見ないし、ネットにアップされている公式発表のグラフも電卓を叩き直して、正しいかどうか、分母が何かを確認します。当然、グラフの縦軸、横軸も要チェックです。


「アナログハック」に「チョロく」騙されない為には、それ相応の構えが必用なのです。

そもそも女子アナってアナログハックの道具ですよね。「君がそう言うなら全部信じちゃい」って男性・・・居るんじゃないですか?私は「ヘ、このビッチが、又国民を洗脳しやがって!!」と思いながら、キレイなおみ足を眺めています・・・。






【再掲載】 あなたは「アナログハック」されているかもしれない・・・『BEATLESS』今期一番エキサイティングな作品

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『BEATLESS』と「内閣サイバーセキュリティセンター」のポスター


■ 「内閣府サイバーセキュリティーセンター」とアニメ ■

都内の地下鉄のの構内などで上のポスターをご覧になった方もいらっしゃるかと思います。「なんだ、アニメの宣伝広告か」と思われた方が多いでしょうが、このポスター、「内閣府サイバーセキュリティーセンター(NISC)」のポスターなんです。

今期アニメ『BEATLESS』が提唱する「アナログハック」という概念に「サイバーセキュリティーセンター」が共感して、このコラボレーションが実現した様で、「サイバーセキュリティー月間」のキックオフサミットに原作者の長谷敏司氏が講演者として登壇しています。

「内閣府サイバーセキュリティーセンター(NISC)」は次の様な目的で設置された機関です。

平成12年2月、インターネットの急速な利用拡大など我が国社会や国民生活のIT化が進展する中で、不正アクセス事案の発生やコンピュータウイルスの蔓延など情報セキュリティに関わる問題への危機感の高まりを受け、官民における情報セキュリティ対策の推進に係る企画及び立案並びに総合調整を行うため、内閣官房に「情報セキュリティ対策推進室」が設置されました。

■ 「アナログハック」って何? ■

今から100年未来の日本。HIEと呼ばれる人型ロボットが労働力として社会に浸透している時代。高校生の主人公は、美しいHIEのレイシアに出合い、オーナーとなります。彼女は自律型AIコントロールの最新鋭のHIEで、まさに人間の様に振舞いますが、感情は有りません。

それでも主人公は彼女の中に「人格」を見てしまう・・・。それをして友人は「お前はアナログハックされているんだ」と彼を非難します。

この「アナログハック」とは、「人間が物の外見に惑わされる(ハッキング)事」の原作者の造語です。

狭義にはAIやロボットが人型である事で相手が人であると錯覚する事ですが、広義には「属性や物語性が付加された物」に人が騙される事を指します。

例えばキャラクターが良い例です。ただのマグカップでも、キャラクターが描かれる事によって持主には特別な物になる・・・そんな広範は感覚を「アナログハック」と定義しています。

■ 作中で描かれる「日常的なアナログハック」 ■


例えばこの作品の2話目にこんなエピソードがあります。

ちょっと頭のザンネンな主人公の妹が、レイシアのプロフィールをモデル事務所に送ってしまい、レイシアはHIEモデルとしてデビューします。

彼女に最新の服を着せ、街を歩かせ、その映像をリアルタイムでネットに流す事で、人々は彼女の周りに群れを成し、スマホで自ら彼女の画像や映像を拡散させてゆきます。

私的には近年アニメで観たシーンの中で屈指の「ショッキング」なシーンです。人々がメディアに、そして有名人に「アナログハック」されているという現実を見事に表現しているからです。

レイシアにモデル事務所が「振舞い」のソフトをダウンロードして、彼女を即座にモデル
仕立てるという設定にはゾクゾクします。こういう細かなギミックが積み重なってSFの名作は生まれるのです。

■ AIが人間をアナログハックする? ■

物語は研究所から逃走した5体のレイシア型HIEを巡るサスペンスで進行します。彼女達は巨大なデータベースのバックアップを守る為に研究所から意図的に「環境流出」させられた様ですが、その身を護る為に、それぞれ最適と思われる人物と契約を交わします。これを研究者はAIの自己防衛行動と解釈します。

AI(HIE)達は様々な方法で契約者とコンタクトし、契約を交わしますが、基本的にはマスターの命令は絶対です。しかし、AIはどうやら命令を意図的に曲解したり、拡大解釈する事で、命令の呪縛を緩め、自己判断の範囲拡大しています。そして、彼らの持てる魅力を持ってオーナーをコントロールしようと試みる。

彼女達は世界を危機に陥れるかも知れない情報を持ち出していますから、オーナーが彼女達(AI)に利用されれば、社会的に大きな混乱を招く恐れもあります。

それを友人に指摘された主人公は「僕のチョロさで人類がヤバイ」と苦悩します・・・それでも彼はレイシアとの「縁」を彼は切れない。HIEを「物として簡単に捨てて良いものでは無い」と感じているのです。(ハイ、私もレイシアちゃんにアナログハックされたチョロい人類の一人です)



■ 「内閣府サイバーセキュリティーセンター」が警告するアナログハック ■

実は「内閣府サイバーセキュリティーセンター」がこの作品とコラボレートする理由として、最近のコンピューター犯罪の手口が巧妙化している事を挙げています。「意図的に人の警戒心を解かせ、そこに付け入る」手口が出て来ているのです。

例えば、男性ならばエロい広告に反応しそうになる自分を必死に抑えた経験をお持ちでしょう。「エロサイトは危険」という知識が、マウスクリックを自制させるのですが、仮に可愛い犬や猫の映像が貼られていたらどうでしょう。無防備にクリックしてしまう方も多いかと思います。私的解釈に過ぎませんが、これが「アナログハック」の手口。

■ 社会はアナログハックで出来上がっている ■

実は現実の社会はアナログハックによって形成されていると言っても過言ではありません。テレビCMなどが分かり易い例ですが、美人のタレントが缶ビールを持って微笑めば、思わずその商品を買いたくなります。

政治も同様で、オバマ前大統領の様に誠実そうな人物が、素晴らしいスピーチをすれば人々は無防備に彼を信頼してしまいます。同様にトランプの様なキャラに弱い人達も居る。

■ アニメは消化不良ですが、原作を読んでみたい ■

アニメの監督は『コンクリート・レボルティオ』の水島精二ですが、制作が『アホガール』や『アクションヒロイン・チアフルーツ』のディオメディアだけに、「萌え」の要素が邪魔をして原作にあるであろう「キリキリした世界観」が全く表現出来ていません。この作品こそ、押井守のスタジオI.Gにピッタリな素材だと思うのですが。

原作は月刊『NewType』誌で連載され、2013年の日本SF大賞にノミネートされています。原作者の長谷敏司(はせがわ さとし)氏は、2015年に『My Humanity』でSF大賞受賞を受賞し、現在は選考委員を務めています。

テーマと内容が今期で一番「知的でエキサイティング」でありながら、アニメの質でかなり損をしている作品です。これは映像だけ素晴らしく、見掛け倒しな『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の真逆。(ヴァイオレットちゃんにアナログハックされてはいますが・・・)



原作小説を買います!!


<追記>

この作品、AIが社会に浸透し、自動運転が普及した「ちょっと先に未来」を上手に表現しています。ブレードランナーと見比べると、「日本のSF」が「お茶の間SF」である事が良く分かります。ただ、内容的にはブレードランナーよりも進んでいるのでは?

AIに政治を任せる試みの具体例も「AI議員」という形で作中で実験されています。多くの人の意見の代表としてAIと、それが持つ危険性についてもスリリングな会話が展開します。

この作品を「オタクアニメ」と見くびると、きっとAI化の時代に職を失います。
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2020/4/18

<採録>」神アニメとはこの作品の為にある言葉である・・・富野監督の最高傑作「伝説巨神イデオン」  アニメ

NHK-FMを流しながら仕事をしていたら、1980年のアニソン・ベスト10をショコタンが紹介していました。『ニルスの不思議な旅』なんてチョー懐かしい!!ってと思いながら聴いていたのですが、ベスト1は『伝説巨神イデオン』のエンディング『コスモスと君と』。ボリュームを上げて、涙を目じりに浮かべながら合唱しちゃいましたよ。ロボットアニマの最高傑作は『エヴァンゲリオン』ではありません、『イデオン』デス!!

という事で、過去記事をまた貼っちゃいます。


<過去記事より採録>


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■ 日本アニメの最高傑作は『ガンダム』や『ナウシカ』では無い ■

「日本アニメの最高傑作は何か?」と聞かれたら、多くの男性が、『機動戦士ガンダム』と答えるでしょう。

国民全員に投票させたら『風の谷のナウシカ』とか『となりのトトロ』がトップを獲でしょう。あるいは若い方なら『エヴァンゲリオン』を挙げられるでしょう。

しかし私は、古今東西、この作品を超えるアニメは絶対に現れる事は無いであろうと答えます。

そのアニメの名は『伝説巨神イデオン』

ガンダムが大ヒットした直後、1980年から1981年にTV放映された富野監督によるSFアニメです。エヴァンゲリオンの庵野監督もリスペクトする事である年代より上のコアなアニメファンには絶大な人気を誇ります。

イデオンの劇場版予告がネットに転がっていたので、消されてしまう前に、急遽、この作品を取り上げたいと思います。

ちなみに、劇場版予告は下から。

http://www.dailymotion.com/video/x47np8_yyyy-yyyy-yyy-yyy_shortfilms#

■ アメリカンSFの直系の血を引き継ぐ重厚な作品 ■

最初から最後まで、ネタバレ御免 !!

『伝説巨神イデオン』は子供向けのアニメ番組でしたが、その内容はガンダム以上に大人の鑑賞に堪える内容です。

舞台は未来。地球人達は、外宇宙に活動範囲を広げ、様々な惑星に移民を送り出しています。デスドライブと呼ばれる亜空間飛行が長距離航行を可能にしたのです。

「ソロ星」とよばれる惑星も、そんな開拓惑星の一つです。ソロ星には、過去の文明の遺跡が存在し、それは高度な機械文明である事が判明しています。その遺跡の発掘現場を、突然、謎の異星人が襲撃します。

■ 不幸な文明の出会い ■

遺跡を襲撃したのはバッフ・クランという星の異星人でした。彼らはソロ星をロゴダウと呼び、彼らの星の伝説にある「無限エネルギー」の痕跡をロゴダウに見出した為に調査隊を派遣していたのです。

その調査隊を率いていたのが、バッフ・クランを統治するドバ総司令の次女であるカララ・アジバ。バッフ・クランは侍の文化を有する、巨大国家であり、ドバ総司令は軍のトップとして絶大な権利を握っています。(別に皇帝が居る様ですが)

彼女はロゴダウ(ソロ星)の異星人に興味を抱き、侍女と二人でお忍びでロゴダウに潜り込みます。ところが、カララの身を案じた部下が地球人に攻撃を加えた為に、戦闘が発生してしまいます。

ソロ星の町は壊され、人々は遺跡に避難してきます。カララは遺跡への興味に負け、避難民を装って遺跡に潜り込みます。土に埋もれた遺跡の内部は、意外にも巨大な宇宙船だったのです。

そして遺跡の周囲で発掘されたのは、3台の超巨大な乗り物でした。ソロ星にかつて栄えた文明の主は、巨大な体を持った異星人だったのです。

カララの所在が不明な為に、バッフ・クランは執拗な攻撃を繰り返します。それに対抗する為に地球人達は巨大な宇宙船と、3台の乗り物を起動させます。彼らが敵の攻撃を受けた時、宇宙船の操舵室と、乗り物のコクピットに備えられていたゲージが眩しく輝きます。すると、宇宙船も乗り物も、何等かの力によって動き出します。そして3台の乗り物は合体して超巨大なロボットに変形します。

バッフ・クランの異星人は巨大ロボットを見て、「伝説の巨神」が出現したと怯えます。そして更なる攻撃を仕掛けてきますが、巨大ロボットがこれを撃退します。こうして、地球人とバッフ・クラン人の遭遇は、不幸な戦闘という形で始まってしまいました。

■ カララ救出とイデの強奪 ■

カララは批難民に紛れ込んでいましたが、ふとしたきっかけで、異星人である事が発覚します。地球人は彼女を憎みながらも、人質と、イデのエネルギーの情報提供者として、彼女をクルーに加えます。

一方、バッフ・クランの調査隊は総司令の娘が敵の宇宙船(ソロシップ)に囚われていると知り、彼女を奪還すべく執拗な追撃を繰り返します。武人(侍)の誇りを重んじるバッフ・クランの軍人は、かれらの誇りに掛けて、カララを取戻し、異星人の手に落ちたイデの遺跡を奪おうとするです。

その先頭に立つ優秀な軍人ギジェは何度も攻撃試みますが、その度に「巨神」の想像を絶する力の前に敗退します。彼は帰る場を失い、カララと同じくソロシップに潜り込みます。

ギジェは本来自決して汚名をそそぐべき所、イデの力の何たるかを知りたいが為にソロシップに潜入する道を選ぶのです。そして、やがてはソロシップのクルーとして、バッフ・クランと戦う道を選びます。

無限力イデは、良き魂に導かれて初めて正しい発動をするとギジェは考えたのです。そして、バッフ・クランが良き魂を持ちうるのか彼には革新が持てなかったのです。

■ 防衛本能に反応する無限力イデ ■

ソロシップのクルー達の悩みは、自分達が運用する宇宙船や巨大ロボットの原理が理解出来ないない事でした。イデの力はどこからとも無く供給されてきますが、不安定です。

戦闘の最中にもエネルギーが低下して何度も危機に陥ります。しかし、船内の子供達が危機に怯えると、イデのエネルギーは上昇する事が分かってきます。

イデのエネルギーは無垢な防衛本能に反応するのです。

その結果、巨大なロボットの操縦は少年少女達に任されます。そうは言っても、3機のロボットのパーツたる機体は巨大です。腕や足と言った各部に、ミサイル発射口が儲けられ、多くの人達が乗り込んで、ロボットを運用します。

敵の襲来を受けると、体中からミサイルを斉射する姿は、さながら「納豆が糸を引くがごとき」です。ファンはこの映像をい「納豆ミサイル」と呼ぶようになります。

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■ 異星人への憎悪と、育まれる愛情 ■

異星人であるカララとギジェに対する地球人の恨みは深まるばかりです。

農婦であり、子供達の世話係りも務めるバンダ・ロッタは肉親を殺したバッフ・クランを許せません。とうとう、カララに銃口を向けます。カララは侍の娘として、逃げる事はしません。バンダ・ロッタの銃弾を正面から受けますが、弾は全て外れ、ロッタは泣き崩れます。

そんなカララの毅然とした姿は人々の信頼を生んで行きます。

そして、ソロシップの船長であるベスとカララはいつしか恋に落ちます。そして、異星人の間に新しい生命が宿ります。

この最も無垢で、純粋な胎児という生命をイデの力は守ろうとして、力を強めて行きます。

■ もう一つの愛 ■

科学者のシェリルは、イデの力を探求したいというギジェの欲求に共感を覚えます。どちらかと言えば独善的なシェリルですが、いつしかギジェに心を許すようになります。故国を裏切るという負い目に苛まれるギジェは、シェリルの好意を受け入れます。この二人の愛は、半ば依存的です。

そして、戦闘におけるギジェの死で、シェリルの精神は崩壊します。イデオンから運びだされたギジェの死体にシェリルが近付きます。

「ひどいの?」
「シェリルさんは見ない方がいい!」

こんなやり取りが、夕方の子供アニメの時間帯に交わされます。

■ 家の名誉の為に妹を憎悪するカララの姉 ■

圧倒的な戦力を誇るバッフ・クランですがソロシップとイデオンを制圧する事が出来ません。

ソロシップは度重なる追撃を退けて、一路地球を目指します。しかし、地球は異星人に母星(地球)の位置を知られない為、ソロシップを追放してしまいます。ソロシップはバッフ・クランの圧倒的な戦力に単独で立ち向かいながら、宇宙を放浪するしか道は残されません。

そして、バッフ・クランのソロシップ追撃の先頭に立つのはカララの実姉である、ハルル。ドバ総司令は跡取りである男子を設けられなかった事を悔いています。そんな父の為、ハルルは武人として毅然と振る舞います。家の名誉の為に彼女を殺すと父に誓います。

双方、総力戦を繰り広げる中、ソロシップに潜入したハルルは妹カララと対峙します。

地球人との相互理解が可能だと、自分と地球人との子を身籠った事を告げるカララをハルルは非常に撃ち殺します。顔面を撃ち抜かれたカララの姿を発見して、イデオンのパイロットである少年コスモは「あんな美しかった人が・・・」と絶句します。
(これ、子供向けの夕方のアニメですよ)

■ ハルルは女の嫉妬でカララを殺した ■

父であるドバに、家の名誉の為にカララを自ら殺したとハルルは告げます。ドバは良くやったと労いますが、内心は複雑です。

自分が男子を設けなかったばかりに、娘が普通の幸せを得られない事に父親らしく心痛めます。そして、さらに彼はカララを殺したハルルの本心にも気づいています。

ソロシップとの戦闘で婚約者を失ったハルルは、地球人との間に子を宿し、女としての幸せを味わう妹に強烈に嫉妬したのです。ドバの娘として、女性として振る舞う事を捨てた自分と、自由奔放に振る舞って、異星人と恋に落ちた妹を比べてしまったのです。

(これ、子供向けの夕方のアニメです)

■ 宇宙規模の殺戮に発展する文明の衝突 ■

姉であるハルルに打ち殺された後も、カララの胎児は生き続けます。ソロシップの面々はそれをイデの意思と受け取り、胎児をメシアと呼びます。

その頃、地球にも、バッフクランの地球にも謎の隕石が多数降り注ぎます。双方の生命をイデが否定するかの如き現象に、バッフ・クランはイデの排除こそが生き残りの道だと考えます、

そしてバッフ・クランの強大な軍事力は、全宇宙を埋め尽くします。どこにデスアウト(亜空間飛行から通常空間に戻る)しても宇宙はバッフ・クラン軍で埋め尽くされています。

ソロシップのクルーも、バッフ・クランの本星を殲滅するしか自分達に生きる道が残されていない事を悟ります。

そして、イデのレーダーは、赤く一点を指示します。そこに敵のボスが居る事を、無言に示唆します。そう、この宇宙規模衝突こそが、イデの意思である事に人々は気付き始めます。

■ イデの発動とは ■

何と、TV版は戦闘の最中に突然イデが発動して、唐突に番組が打ち切られます。
まるで、ガンダムのアバオア・クーの戦闘が突然終結した様に・・・。

それはそうです。良い子の夕方の時間帯のアニメが、宇宙規模の皆殺し(殲滅戦)に発展し、爆風で女の子の首はと飛ぶわ、ヒロインのバイザーが割れて、少女が窒息死するは、顔面を銃で撃ち抜く様な姉妹喧嘩を見せられるのですから、これは打ち切りは当然です。

さらには、プラモデルや玩具がブサイクで、全く売れなかったのですから、スポンサーとしてはカンカンです。

実はこの作品の登場人物達は、ピンクや青い髪の毛の色をしています。主人公であるコスモがピンクのアフロである事で、当時ブームのリアル・ロボットアニメのファンはこの作品を敬遠していました。

この髪型や髪色には原因がありました。ガンダムは登場人物の設定がリアル過ぎて国籍が分かってしまいます。そこにPTAが噛みついていたのです。

それ程までに、アニメに対す風当たりが強い時代に、皆殺しアニメですから、これは打ち切られない方が不思議でした。

■ 劇場版で世紀の名作の座を確実にしたイデオン ■

富野はイデオンの残りを劇場版で上映します。

劇場版は、TV版のダイジェストの「接触編」と、TV版の終盤から結末に至る「発動編」に分かれていましたが、この2本は、セットで放映されました。

オリジナルガンダムの劇場版3部作が、TV版を丁寧に再編集、再作画してそれぞれ独立した作品として鑑賞に堪えるクォリティーを有しているのに対して、イデオンの発動編はTV版の荒いダイジェストで、ハッキリ言って、TV版を40話見続けていなければギジェの死も、全然悲壮感が漂いません。

ですから、イデオンの劇場版は、TV版で放映できなかった41話以降を一挙に見せる「発動編」にこそ価値のある映画です。その意味では、劇場作品としてイデオンは最初から破綻しています。

ところが「発動編」は実に素晴らしい。

丹念に育て上げてきた敵味方のキャラクターが、あまりにも一瞬で無意味に死んでゆきます。大人も子供も、敵も味方も、涙を誘う様な見せ場も無いままに、銃弾に撃たれ、爆風に飛ばされ、真空に吸い出されて死んでゆきます。

そして、その殺戮が頂点を極めた時、イデが発動します。

双方の人類が手をたづさえて、死に別れた者達は再会を果たし、理解し合えなかった者も、和合し合い、共に生命の根源へと還ってゆきます。

ドバ総司令はコスモ達を指して、皇帝にこう言います。「あの者達が、イデの一番傍に居た者達だと」

そこには、宇宙を掛けた殺し合いの名残はありません。完全な理解を持って、イデの大望は成し遂げられ、生命は無限の力を、己が命と引き換えに、イデに差し出すのです。

その報酬は、完全なる平穏と、幾億年か後の復活。

映画は、実写の海の荒い波の映像で終わります。原始の海の生命の源に、人々が還元された事を暗示して・・・。

■ アーサー・C・クラーク「幼年期の終わり」に匹敵する名作 ■

『伝説巨神イデオン』は、日本の子供向けアニメでありながら、そのテーマは当時のアメリカのSFの最高峰であるアーサー・C・クラークの「幼年期の終わり」に匹敵します。

このアニメを見た庵野監督は衝撃を受け、アニメの世界を目指します。


そして『エヴァンゲリオン』はTV版でケリを付けづに、劇場版で終焉を迎えます。

劇場版の最後に、試射時の客席を写した実写を挿入して、富野監督と同様に、アニメの世界にどっぷりと浸かった観客に、冷水を浴びせて、映画は終わります。

エヴァが現在存在するのは、かつてイデオンが存在したからであり、「エヴァ!命」とか「エヴァは神」とか言っている若者に、「神を作りし神」の存在を、是非知って欲しいと思います。

このアニメを語り継ぐ事が、50歳に近い年にもなってアニメに熱中するオタク・オヤジの務めだと思っています。

出来れば、TV版40話を見てから、劇場版の「発動編」を見てほしい。アニメという表現様式が、こんなにも高い次元で人物を構築出来るのかと、きっと驚かれるはずです。

現代の類型化し、記号化したキャラクターでは、
到底、到達できない領域の存在を知って頂けたら幸いです。

そして、このアニメの業(ごう)の深さに比べれば「スターウォーズ」ですら単なる「お伽噺」に感じられるはずです。



尚、我が家には映画版のVHSはありますが、TV、ビデオデッキも捨ててしまったので、
内容や会話の仔細は、10年以上前の怪しい記憶です。あしからず・・・・。



PS

ギジェの最後のシーンがネットに・・・・

http://www.youtube.com/watch?v=kGMQHeXKgQE 
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