2020/12/24

今期アニメ・ベスト  アニメ
 
今期アニメも残り1話という作品が多くなっています。そこで、恒例の極私的ベストの発表




第1位  『無能なナナ』

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『無能なナナ』より

実は1話30秒で切った作品でした。「なーんだ『僕のヒーローアカデミア』の劣化コピーじゃん」って思わせる内容だったから。

ところがネットで評判なので一昨日から見始めました・・・。これ、面白過ぎです。『コードギアス』系の面白さ。それが分かり易く、テンポ良く展開する。

1話最期に「ええええーーーー」って仰天する内容ですが、視聴者がそこまで1話を観てくれるかどうかが勝負の作品。

『涼宮ハルヒ』シリーズの最新刊は「推理小説とは何か」という谷川流の解説本となっていますが(面白いけれど、作品としてはどうよ・・・)、ハルヒ最新刊よりも100万倍は面白い。

内容は一切掛けません。だって知ってしまったら面白くないから。コミックガンガンに原作が連載されている様ですが、日本の漫画文化って本当に奥が深い。

今回はこの作品を上位にする人は少ないと思うので、あえて1位としました。


第2位 『100万の命の上に俺は立っている』

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『100万の命の上に俺は立っている』より

「別冊少年マガジン」に原作が連載されている様ですが・・・・これ、スゴイな・・・。

百花繚乱と言うか、愚作のゴミ箱状態の「異世界転生モノ」ですが、とうとう異常進化の作品が出て来ました。

「異世界転生モノ」のファンは「RPGゲームの中に入って仲間と旅をしたり、敵をぼっこぼこに倒したい」と潜在的な願望を抱えています。要はツマラナイ日常を逃避してゲームの世界に行きたいと願っている。

ところがこの作品は、強制的に異世界に召喚させられ、ムリゲーをプレイさせられた上に負けたら実際の命が失われるという「異世界のデストピア」みたいな設定。生き残る為なら、非情に仲間を見捨てる事が必要。誰かが生き残ってミッションをクリアすれば、全員生き返るから。

これだけなら、ちょっとヒネクレタ作品という評価しかしませんが、実は召喚された異世界とは・・・というオマケ付き。ヒントは『僕らの』。

この作品も一般の評価が不当に低いと思いますので、私としては上位にランクインさせました。



第3位 『体操ザムライ』

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『体操ザムライ』より

シリーズ構成は『ゾンビランドサガ』の村越 繁、制作も同じくMAPPA。

昭和のホームドラマの様式で、充分に魅力的な作品が作れると証明した作品。ポイントは「しっかりとした構成」と「ディテールの積み上げ」。

引退に追い込まれた体操選手が復活するまでの物語ですが、それぞれの人物の骨格がしっかりしています。そして、その人物達が自然に物語に絡む事で、全体の大きなストーリーが動いて行く。まさに脚本のお手本と言うべき作品。

現在の漫画もアニメもドラマも「驚き」と「裏切り」で視聴者の興味を惹く事に腐心しています。一位に挙げた『無能なナナ』や、2位の『100万の命の上に俺は立っている』は、その様な作品です。

刺激的なコンテンツがインフレを起こした現代において、物語の作者達は、より刺激的である事を求めて日夜知恵を絞ります。一方で『鬼滅の刃』が国民的な人気を集めた様に、視聴者が支持するの「物語の作法に忠実な作品」です。

世界の多くの神話が似たような「ストーリー」を持つ様に、「根本的に人が感動する物語=神話の原点」は意外にもシンプルです。「努力の結果、仲間と敵を倒す」・・・ジャンプ作品の王道的ストーリーはテッパンなのです。

但し、それは「大きな物語」を持つ作品のケースで、「日常系=小さな物語の集積」的な作品は「小さな共感の集積」によって人々の心を掴みます。「あ、これ、あるよね・・」的な共感。「こういうのホッコリするよね」という共感を丁寧に積み上げる事が大事。

『ゾンビランドサガ』は「売れないローカルアイドルのロードムービー」という小さな共感の集積で、「ゾンビがアイドルユニットを組む」というムチャクチャな設定をしっかり支えていた。『ラブライブ』もこれに類する作品です。

『体操ザムライ』も「体操選手の家に突然外人のニンジャが居候する」というハチャメチャさが物語を駆動する装置として利用されていますが、その違和感を小さな共感が徐々に取り払って行く。ニンジャは物語に不可欠な存在になって行きます。そしてニンジャは物語の核心と繋がっている。構成の上手さに舌を巻きます。


第4位 『トニカクカワイイ』

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『トニカクカワイイ』より

命を救ってくれた美少女に恋をした少年が、美少女と再会して結婚生活を送るという・・・『おくさまは18才』かよーーー! ってツッコミたくなる作品。(若い人は知らないだろうなーー。『なんたって18才』って続編もあったような・・・石立鉄男って存在自体がマンガ的でしたよね。)

これも「小さな共感」を積み上げる作品。要は「日常系」と言われるジャンルですが、若い夫婦がイチャイチャするだけで、どうして心がこんなにホッコリするのだろう?

イチャイチャと言っても手を繋いだり、キスをするだけでエッチはお預けですが、視聴者もエッチは望みません。キスだけでキャーってなってしまうから不思議。今時の「草食系男子の鏡」の様な主人公に、女性も男性も共感してしまう・・・まさに時代を反映した作品とも言えます。


第5位 『神様になった日』

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『神様になった日』より

「泣きゲー」のカリスマ麻枝唯とPA・WORKSがタックを組むシリーズの第三作。

ゲームブランド「Key」の企画、シナリオライター、作詞、作曲とマルチな才能を発揮して数々の「泣きゲー」の傑作を世に送り出した麻枝唯。

私、ゲーマーでは無いので麻枝唯という名前を先日知ったのですが、アニメファンとして『Angel Beats!』『Charlotte』の評価を相当に高い。

これらの作品、実は何が良いのか説明出来ないのです。ただ、最後にワーーーと感動が押し寄せて来る。涙腺が暴力的に緩んでしまう・・・。

『体操ザムライ』で構成の確かさという事を書きましたが、麻枝唯作品の構成はかなり強引です。コアなファンの方は「絵は不要」と評する程、ゲームでは会話の強度が高い様ですが、アニメではセリフは普通の感じます。むしろ展開の強引さが目立つ。コメディータッチで物語はスタートして8話辺りでどんでん返しと、舞台の裏が明かされ、そこからは怒涛の展開。そして、才顔は涙でモニターが滲む。

分岐構造を持つゲームと、一本のストーリーしか持たないアニメでは、物語の演出方法がともかく違うので、麻枝唯のアニメがゲーム的であるかと言えば、至って普通のアニメです。ただ、人と人との関係性の構築がエグイ。家族や疑似家族の絆は、かなり強引に結ばれます。そして、「死」或いは「記憶の喪失」がそれを分かつ事で、最大のエモーションを引き出す。

麻枝唯の思うように視聴者は泣かされる訳ですが、それをエグイと思いながらも、心の奥が揺さぶられてしまう・・・。

ゲームはアニメなどに比べてもリアリティーに低いジャンルです。そんな表現分野で如何にプレーヤーを感動させるか、日々切磋琢磨した人が作り出した「感動の方程式」は実は「神話の原点」に近いのかも知れません。


第6位 『安達としまむら』

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『安達としまむら』より

実は6話から先は観ていません。『ケムリクサ』などもそうですがストーリーの希薄な作品はアニメとしては見続けるのが辛くなる。

では何故、5位なのか・・・。やはり、「言葉にならない何かを描く」事に最大限の努力を惜しんでいない作品だから。『神様になった日』の様な強引さも無く、『体操ザムライ』の様な安定感も無く、ただフワフワしたものをフワフワと描く。これは実に難しい。

『安達としまむら』は、女子高生の体温や臭いや息遣いをアニメでどう表現するかと言う点においうて、既存のどの作品よりも突出しています。もうそれだけ・・・されど、それだけ!!

年末のアニメ閑散期にじっくり観ようと、大事に取ってある作品。


第7位 『いわかける!』

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『いわかける!』より

『弱虫ペダル』の女子スポーツクライミング版。それだけと言えばそれだけですが、男子サイクリストのモッコリジャージよりも、女子高生クライマーの方がセクシー。

インドア系女子が、ゲーム的センスでスポーツクライミングの才能を開花させると言う点が、インドア系オタクにも受け入れやすい。

以外と堅実な作りで、良作です。


第8位 『君と僕の最後の戦場あるいは世界が始まる聖戦』

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『君と僕の最後の戦場あるいは世界が始まる聖戦』より

評価ポイントは「異世界もので無い」。以上!!

実は結構好きな作品です。オーソドックスなラブロマンスですが、こういう作品があっても良い。「ロミオとジュリエット」的な「敵同士の許されざる愛」の物語ですが、悲壮感は一切ありません。だって、「会ってはいけない二人」は、毎回会っていますから。美術館に行ったり、劇場に行ったり、パスタを一緒に食べたり・・・時々一緒に戦闘したり・・・。

ところで、パスタを良く茹でる事を「ベンコッティ」って呼ぶの知ってました。硬茹の「アルデンテ」の逆。ベンコッティを知っただけ、このアニメのポイントがウナギの滝昇り!デス!!


第9位 『魔法科高校の劣等生 来訪者編』


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『魔法科高校の劣等生 来訪者編』より

お兄様無双が過ぎて評価が低かった作品ですが・・・女性陣がどんどん可愛くなって行くので評価が上りつつあります。鈍感お兄様が紳士な所も好印象。

お兄様の鈍感って・・多分、精神改造の副作用なんですよね。そんなお兄様も最近では結構空気が読める様になって来ました。10氏族の背景も少しずつ明かされて来て、世界観がしっかりして来たので作品としても面白くなって来ました。

魔法が成立する背景をしっかり説明?しているので、「単に魔法が存在する世界」の異世界モノよりも私的には評価が高い。SFに分類されるべき作品だと思います。



オープニング賞 『体操ザムライ』『トニカクカワイイ』『神様になった日』



オレンジレンジの懐かしい曲に乗って妙なダンスが繰り広げられますが・・・これ中毒性がスゴイ。『BREECH』の第一期のオープニングのテーストですね。



これは曲の勝利。「Future Bass」と呼ばれるジャンルだそうです。細分化されたリズムの上の、ゲームな様なシンセサイザーが被せてあります。ドラムン・ベースの進化系とも言えますが、作曲者のYunomiという方は、若い人のファンも多いらしい。日本では「Kawaii Future Bass」と呼ばれる事もあるジャンルだそうです。




麻枝唯と「やなぎなぎ」のコラボはテッパンです。我が家ではヘビーローテーションしています。やなぎなぎは初代スーパセルのゲストボーカリストですが、柔らかく透明感のある声が魅力。とにかく、歌詞がスーーと心に入って来る。ドラウタで強引に歌詞を押し付ける歌手の多い現代で稀有な存在。彼女のアニメソングの数々は名作しか無い。

一見、シンプルな曲ですが、コーラスとの立体的構造が革新的だと感じています。コール&レスポンスは同じ時間、同じ空間で成り立ちますが、これは多層的にコーラスとボーカルパートが呼応している。チェホフの劇空間の様に、位相の違う世界と呼応するというか・・・。




エンディング賞 『呪術廻戦』



これはスゴイ。OPは凝っている割に面白く無いのにエンディングは神ですね。エ、作品はランクインしないのかって・・・。なんか、新しく無いんだよね・・。驚きが少ない。

個人的には作品の内容より、この動画の評価が高い。





以上、今回も、独断と偏見と勢いでベスト10を選んでみました。年末の休みに「イッキ観」されては。旅行にも行けない正月休みになりそうですから。
4

2020/11/16

『劇場版 バイオレットエヴァーガーデン』・・・殴って良いよね!!  アニメ
 

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家内と『劇場版 バイオレットエバーガーデン』を観て来ました。

息子が「一生の内で一番泣いたよ」と言ったので、

そして「又観に行く!!」と言ったので・・・。



・・・・


あまりの事に、中学生みたいな絵を描いちゃったじゃないですか・・・。

怒りで震える感情を何処へ向ければ良いのか・・・。




ホプキンス中佐(社長) 「オレがアイツを引っ張り出して殴ってやる」

バイオレット      「私が殴ります」

中佐          「バイオレットちゃん・・」

バイオレット      「冗談です」




これが布石だと思ったよ。

吉田玲子にチョー期待しちゃったよ!!

バイオレットちゃんの、鍛えぬかれた鉄拳が

ヤツの顔面をクリンヒットするのを確信してたよ、海辺のシーンで・・・。



バイオレットちゃん、今からでも考え直せ!!

こんなヘタレ野郎に惚れてはダメだ!!

せめて、ツンデレの大佐にしろ!!

今回、大佐は頑張った、とっても頑張った!!


バイオレットちゃんが僕の娘なら、

ヤツを100発ぐらい殴った後、

「娘はお前には絶対にやらん!!」と宣言してやる!!




ファンムービーだって事は百も承知ですよ!!

でもね、でもね、怒りが収まらないんだよ・・・・・。



<追記>


TV版の一番感動する回の後日譚から始まる展開は神。
吉田玲子の脚本は今回も冴えていまいた、最初の15分は・・・。

ただ、バイオレットの足跡を辿るだけのエピソードで最後まで繋いでいたら
今年最高の一話になっていた事は確実。

バイオレットがどうなったかも、島民の伝聞で知らされ、
セリフ無しの回想シーンの挿入で観客は全てを知る・・・。
こんな構成だったら、感涙にむせび泣いたに違いない。


観客はバイオレットちゃんを観に来てる訳で、
ファンムービーとしては無難な内容ですが・・
せめて、一発殴って欲しかった・・・・。




劇場版の吉田玲子の脚本の、私の中でのランク付けはこんな感じ。

『若おかみは小学生』>『聲の形』>>『きみと、波にのれたら』>『劇場版バイオレットエヴァーガーデン』>『のんのんびより ばけーしょん』
2

2020/11/4

『鬼滅の刃』・・・「正しい」が評価されない時代に  アニメ
 

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『鬼滅の刃』より

■ 『鬼滅の刃』は腐女子マンガだよね ■

『鬼滅の刃』を評論して欲しいというコメントや拍手コメント(非表示)を頂いているのですが、「オニメツノハ」だと思い込んでいた私如きが、はたして評論して良いのか・・・。

私、本屋さんに並ぶ原作単行本にも、アニメにも、全く食指が動きませんでした・・・。だって、これ「腐女子マンガ」だよね。原作者は絶対に女性。

原作者の「吾峠呼世晴(ごとうげ こよはる)」の性別は明らかにされてはいませんが、文春が編集者から「女性」だと聞き出した様です。

「弱い主人公が努力と仲間と力を合わせてで強大な敵と戦う」というジャンプ的ビルドゥング・ロマン(自己形成の物語)は、物語の骨格が強いので、様々なアレンジが可能です。典型が『ジョジョの奇妙な冒険』。『鬼滅の刃』も週刊少年ジャンプらしい、王道ビルドゥング・ロマンです。

一方、この作品が『ジャンプ』の作品群の中では特異なのは、「優しさ」や「弱さ」が前面に押し出されている事。主人公の竈門炭治郎(かまど たんじろう)のは決して「俺様最強」って感じのキャラでは有りません。むしろ、弱くて腐女子達の「保護欲」を刺激するタイプ。

これは炭治郎の仲間の我妻善逸(あがつま ぜんいつ)も、嘴平伊之助(はしびら いのすけ)も同様で、3人ソロって頼りない。だけど、腐女子的には「そこがカワイイ」。この3人をどう絡めよううか(腐女子的な妄想)、色々とムフフしちゃう訳です。

善逸は弱気キャラだけど、やれば出来る子だし、伊之助は痩せマッチョの上半身むき出しでイノシシの仮面の下は美形男子・・・・もう、これ、狙ってやってるとしか思えません。

さらに、ヒロインの竈門禰󠄀豆子(かまど ねずこ)が炭治郎の実の妹だから、主人公をヒロインに奪われる事は有りません。腐女子の皆さまは、安心してこの作品を堪能する事が出来ます。そして、主人公に大事に守られているネズコちゃんに自分を投影して主人公の愛を独占する事も可能!!

今の時代、『週刊少年ジャンプ』の読者に占める女性の割合は高い。そして『ジョジョ』や『銀魂』は一定数の腐女子ファンを生み出して来ました。だから『鬼滅の刃』に最初に飛び付いたのは、そんな腐女子の方々だったと私は妄想しています。

■ 「正しさ」や「努力」が評価されない時代だからこそ ■

仮に腐女子の熱烈な支持がヒットの下地を作ったとして(連載中止を阻止出来ます)、国民的作品になる程の魅力が、この物語の何処にあるのでしょう?

実は私はヘソ曲がりなので、この作品が苦手です・・。アニメ版の後半は観るのも辛い。何故ならば、主人公達が「真っすぐ」過ぎて、眩しくて見ていられない・・・。

「能力主義」の現代の時代、マンガやアニメの主人公も「チート・キャラ」が幅を利かせています。「俺 tueee」的キャラに代表される様に、絶対的なスペックが元々高いキャラクターが多い。

生まれながらに金銭的に余裕があって、幼少の頃から塾に通って、市立の小学校から大学まで進んで、そこそこの成績で一流企業に就職。これが現代の「勝組」。多くの若者達は、この様な勝ち組を嫌いながらも、フィクション(夢)の中では、「勝組の立場」に同調してしまいます。そう、夢の中ぐらいは「無双」したいのです。

これに対して『鬼滅』の主人公の炭治郎は、「弱く」「普通」で「貧乏」。ただ、彼はあくまでも「真っすぐ」でネズコちゃんの為なら「努力」を惜しまない。(父との関係から隠れた才能は有りそうですが)。これ、本来、少年漫画の主人公が持っていた「属性」ですが、いつの頃からか「インスタントな高スペック」キャラに主役の座を奪われていた。

『鬼滅』が腐女子のみならず、普通の男子、そして今では多くの国民に支持されるのは、「普通の人の努力がキチンと報われる物語」だから、そして「正しい事を、正しい事だと真っすぐに語る物語」
だからだと私は妄想しています。

本当は評価されたい「普通の人」が、この物語の最大の支持者なのでしょう。

■ 理解出来る敵と、根本的な悪 ■

炭治郎達が倒すのは「鬼」です。元は人ですが「鬼」にされてしまった存在。

非情な鬼も多いのですが、複雑な事情を抱えた鬼も居る。「鬼には鬼の事情」がきちんと有るのです。「敵の事情」をきちんと書き込む事は日本の漫画の基本なので、特筆すべき事では有りませんが、炭治郎はそんな鬼たちに「優しい」。

この「優しさ」も、現代を生きる私達が飢えている感情では無いか。不本意な人生を歩み、日々、誰かや自分を騙す様にして生活のお金を稼ぐ私達は「鬼」に身をやつしているとも言えます。そんな私達が求めているのは「君はそのままで良いんだよ」という「優しさ」では無いか。

一方で本当の敵は読者の対峙する「社会」に相当する。理由など無く、ただ自分や廻りの人々を苦しめる存在。圧倒的な力で、自分の存在を否定するモノ。

少年漫画の構造では「普通」ですが、この作品はキチンとそれを踏襲しています。

■ 「変なキャラクター」 ■

ここまで書いて来て、私には『鬼滅の刃』の魅力の本質がまだ掴めていません。何故なら、同様の傾向の作品は、現代の少年マンガには少なくないからです。では何故『鬼滅の刃』はこれ程までに支持されるのか・・・。

それはキャラクターが「変」だからでは無いか・・・・。

この作品のキャラ、「頭身が変」だよね・・・。頭が大きい。そういえば造形も丸味を帯びています。・・・これ、「縫いぐるみ」的な造形。だから「キャラがカワイイ」。

少年漫画ではこの様なデザインのキャラは受けない。だから、私は本屋で最初に表紙を見た時に「女子作家」だな・・・と確信した。

さらに、「鬼殺隊」の多くの隊員も「変なキャラ」が多い。これ「キャラ立ちが強い」と言うよりも、どこか「ズレている」。

『ONE PIECE』などもオフビート感の有るキャラが多いが、むしろ『銀魂』的な「残念感」の強いキャラに近い。こういうのって腐女子って好きだよね。

『鬼滅の刃』が多くの人に支持されるのは、キャラクターの「残念感」が作り出す「安心感」では無いのか。「圧倒的な力を誇る鬼殺隊の剣士も実は残念なヤツだった」・・・これで読者とキャラの距離は一気に縮まります。

「私〇〇のこういう所好き〜」という「残念ポイント」が各キャラにそれぞれ準備されている。この一種に「緩さ」が、『鬼滅の刃』の最大の魅力なのかも知れません。



今回は、私自身は全くハマっていな『鬼滅の刃』の評論に挑戦してみました。「全然違うだろう!!」という御叱りはコメント欄まで!!
6

2020/10/14

アニメにおける古典と前衛・・・『天晴浪漫!』と『デカダンス』  アニメ
 

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『天晴浪漫!』より


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『デカダンス』より


最近はアニメ熱が少々冷め気味でしたが、そんな私を一気に沸点越えさせる作品が二つも現れました。『天晴浪漫!』『デカダンス』

『天晴浪漫!』はハリウッドの古典的映画の魅力をアニメの中にギューーーーと凝縮してみせた。一方、『デカダンス』は前衛的な表現でSF的な興奮を堪能させてくれる傑作。この2作品を比べて「どちらが優れている」といった評価は無意味。両作品とも「表現の限界に挑む」エネルギーにおいて同等のレベルに達しており、それが確固としたアニメ表現の基礎の上のドッシリと構築されている事が、凡百の実験的アニメとこの二作品を隔てる「表現限界の壁」だと実感させられる。

一方で、富士山の如くドッシリと構えるこれら二作品に比して、一気に成層圏に突き抜ける『天元突破グレンラガン』の様な作品が存在する事が、アニメという表現の魅力なのだと再認識させる「指標」的作品とも言えます。

■ 安定した構成が、ハチャメチャな物語を視聴者に許容させている『天晴浪漫!』 ■

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『天晴浪漫!』より


明治維新、未だ侍が帯刀していた時代に、一人の発明好きの人騒がせな少年と、彼のお目付け役を申し付けられた道場の師範代が、漂流してアメリカに渡って大陸横断自動車レースに出場する話。

・・・ストーリーを要約すると「何それ??」の様な話ですが、一つ一つ丁寧にシーンを積み上げ、人と人の繋がりを綿密に構築する事で、この作品は物語の強大な推進力を生み出しています。登場人物のハートにしっかりと火が灯り、走り出したらゴールまでは止まらない。

話の基本は、ハリウッド映画でも良く有る「大陸横断自動車レース」ですが、テイストはアメリカの古典アニメの『チキチキマシン猛レース』。コッテコテのキャラが、コッテコテの自動車に乗って、時にはライバルの邪魔をしながらゴールを目指すシンプルなストーリー。

ただそこに、漂流してアメリカ船に拾われた風変りな日本人二人を「混入」する事で、埃を被った「レース映画」が見違える様な輝きを放ち始めます。これ、『Tiger and bunny』に近い手法で、『Tiger and bunny』ではマーベルのヒーロ物というジャンルに「ヒーローという仕事」という概念を導入する事で、摺り切れたジャンルに新たな魅力を生み出しています。一方『天晴浪漫!』は、「野蛮なアメリカ人のDNA」とも言える「レース物」に「発明家の日本人」という異物を混入する事で、新たな座標からアメリカ文化やハリウッド映画の古典を俯瞰して見せる。

「大陸横断自動車レース」という映画ジャンル自体が、「荒野を失踪する馬や幌馬車隊」といった西部劇のメタファーですが、『天晴浪漫!』では、時代を「ガソリン自動車の創成期」とする事で、自動車レースを西部劇の舞台の上で展開する事に成功しています。

実際にガソリン自動車が発明された時代には、「相手が先に拳銃を抜いたら正当防衛が成り立つ」様な「野蛮」な時代は過ぎていますが、そこはアニメ、違和感無く「そういう時代なのね」と納得させてしまいます。

この作品の正当な感動の仕方は、「たった二人でアメリカに放り出された日本人二人が、知恵と剣の技で活躍する」というストーリーに胸を熱くする・・・というもの。実は80歳になる母に見せたら「アニメは良く分からないけど、これなら分かるわ。次を見せて、どうなるの?」と言う位い、シンプルで誰にでも分かり易く、主人公達に感情移入がし易い。

監督の橋本昌和は「劇場版クレヨンしんちゃん」の監督として活躍された方なので「子供でも分かる」という基本をしっかりと押さえています。脚本もほぼご自分で書かれていますが、「キャラクターの肉付け」が非常に上手い。全ての登場人物に、しっかりとした背景を与える事で、彼らのエキセントリックな行動や言動を自然なものとし観客が受け入れられる下地を作っています。さらに関心させられるがの、その背景を提示するタイミングが絶妙な事。これは脚本や物語の基本でも有りますが、最初から素性が知れているキャラクターに人は興味を持ちません。「コイツ何物だよ」とか「コイツ、イカレテルぜ」と思うから、物語の先に進みたくなる。

一方で、主人公の天晴と小雨。そして彼らの理解者であるシャーレンやアル・リオン、ホトトの背景は比較的早くに、丁寧に描かれています。これらの人物に最初に実在感を与える事で、物語のコアを確立し、そこにハチャメチャな登場人物の暴れ回るスペースを作り出しています。そして、ハチャメチャな彼らの過去を最適なタイミングで明かす事で、視聴者は「ハチャメチャな物語を許容」して行く。


■ 『チキチキマシン猛レース』に散りばめられたハリウッドの古典映画 ■

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『チキチキマシン猛レース』より

『天晴浪漫!』を一言でいえば『チキチキマシン猛レース』のリメイク。昭和40年生まれの私の世代には懐かしいアメリカのアニメです。ブラック大魔王が、あの手この手でレースを妨害して勝利しようとしますが、いつも失敗して助手のケンケンがシシシシーーーって笑うアレです。

レースが物語の軸として一本通っているので、そこに様々な要素が加わってもブレが無い。後半は殆ど西部劇となりますが、名作西部劇へのオマージュが散りばめられています。さらに、そこにカンフー映画的な要素と、チャンバラ活劇的な要素が加わって、最高のエンタテーメントを提供しています。

どのシーンも見事なのですが、私は鉄橋爆破のシーンで、ソフィアを載せたまま走り去る列車のシーンでゾクゾクしました。絵コンテは岡村天斎だったかな。

OPの映像も素晴らしい。


『天晴浪漫!』OPより

OP詐欺みたいな作品の対極にあるOP。短い時間の中で、作品のテイストを的確に提示し、さらに登場人物を紹介する。リズムにシンクロさせたテンポ良いシーンの切り替え。これこそ、アニメのオープニングの見本です。


最後にこの作品はP.A WORKS作品。「働く女の子シリーズ」で定評のある会社ですが、『有頂天家族』とこの作品は見事です。京アニよりも作風が固定されていないのがPAの魅力。


■ 異世界物に対するSFの逆襲・・・『デカダンス』 


『デカダンス』OP より

OPで比較すると『デカダンス』は『天晴浪漫!』とは対照的です。これを観ただけでは、この作品の内容は全く予想出来ません。

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『デカダンス』より

『デカダンス』・・・私、実は1話冒頭で一回視聴を中止しちゃったんです。なんか『ガルガンティア』みたいだなと思って・・・。これ、間違いでした。どなたか、拍手コメント欄で「デカダンスはどうですか」みたいなコメントを下さったので、慌てて見直したら・・・傑作でした。作品紹介が遅れたのは、一気に観たいので、放映終了まで視聴せずに温存していたから。こういう作品って、次が気になって仕方無いじゃないですか。

人類が衰退した未来。人々は分厚い装甲に囲われた自走式都市の閉じこもって生活しています。歳はガドルと呼ばれる謎の生物の攻撃に晒されています。人々の中の戦士と呼ばれる人達がガドルと戦い、ガドルの肉は人々の食料となって生活を支えます。

実はガドルと戦っているのは「タンカー」と呼ばれる残存人類だけでは有りません。ガドルが現れるとギアと呼ばれる肌の青い戦闘集団が現れ、ガドルと戦います。ギア達は戦力も豊富で強い。タンカーとギアの交流は有りませせん。ギア達はデカダンスの上層部に住んでいて、タンカー達は低層部のバラックに住んでいる。

父親をガドルに殺され、自身も右腕を失ったタンカーのナツメは、戦士になる事を夢見ています。しかし、片腕の彼女は外壁修理工の仕事にしか就けません。そこで出会ったのが親方のカブラギ。クールでどこか達観した感のあるカブラギですが、彼の生活は徐々にナツメに振り回される様になる。そして、ナツメはカブラギが以前は凄腕の戦士だった事を知るのです。


<ここからネタバレ>

ネタバせずにこの作品を評論する事は出来ないので、視聴を予定されている方はここから先は読まないで下さい。

『デカダンス』は世に蔓延る「異世界転生物語」のSF的アンチテーゼです。

「異世界転生物語」はゲーム好きの夢の世界であり、同時に逃避場所でも有りますが、その原点は『ソードアートオンライン』の様なSFに有ります。(神話などを除けば)

『ソードアートオンライン』はフルダイブ型バーチャルゲームで、プレイヤーがゲーム世界に没入し、ゲーム世界をあたかも現実世界の様に知覚する設定。これを「死による転生」に置き換えたのが「異世界転生物語」。

仮想現実によるバーチャル物としては『マトリックス』が思い浮かびますが古典は『トロン』でしょう。オリジナルの『トロン』はサイバー空間を描く事を目的としていたので、ワイヤーフレームで表現され、それを現実と錯覚する事は有りません。一方、『マトリックス』のサイバー空間はかなり「リアル」で、人々はそれを「現実」と錯覚して生活しています。

これらの古典的なサイバー空間物に対して、『デカダンス』は世界をひっくり返して見せます。ゲームの世界が現実で、ゲーマーはサイバー空間に存在する。

人類は旅か重なる戦争で疲弊し、サイボーグとして新たな生を生きています。AIに完璧に管理された戦いの無い世界、エネルギーを補充し続ければ死も存在しない世界の最大の娯楽はゲーム。サイボーグ達は、素体と呼ばれる「生体」に意識を転送する事で、ガドルを撃退して要塞を守るという「デカダンス」というゲームに興じています。

ゲーム世界に転送される「異世界転生物語」の中の人達は「バーチャル」ですが、『デカタンス』ではゲームの中の人こそが「リアル」という逆転には驚きます。

この逆転は、「ゲームキャラにこそ生物としてのリアルが有る」という逆転の現実を視聴者に突き付けます。

「異世界転生物語」は主人公がゲームの中の人となる事で、ゲームの中の人を「リアル」と認識する構造ですが、『デカダンス』ではゲームに転生(転送)されるゲーマーの方が生物としてのリアルを失っています。彼らは死んだらログアウトするだけのバーチャルな存在ですが、タンカーの死は生物学的なリアルな死です。

この作品の主題は「リアルとバーチャルの逆転」なので、この構造が分かった時点でSFとしての物語の90%は終わったも同然ですが、映画やアニメはエンタテーメントとして、この設定を使って人々に感動を与える必要が有ります。

『デカダンス』は、AIに管理された世界へのサイボーグ達の反逆と、タンカーと呼ばれるリアルな人類との融和を終点とする事で、物語を成立させています。

■ 作画のカロリーをリアルな世界に集中される裏技 ■

『デカダンス』はアニメファンには「踏み絵」となる作品です。特に「作画厨」などと呼ばれる作品の表面しか評価しないファンは振り落とされる。

『デカダンス』のリアル世界は非常にクォリティーの高い作画によって構築されます。戦闘シーンの動画も素晴らしい。一方、サイボーグ達の世界は手艇的にマンガ的・記号的に描かれます。これはアニメという表現様式の本質に迫る表現でも有ります。「アニメ=キャラクターの記号化」と捉えるならば、キャラクターは単純な四角でも丸でも構いません。『鷹の爪』や『古墳娘のコフィーちゃん』や『石膏ボーイズ』が良い例です。記号に声優さんのセリフが付けば、人はキャラクターとしてそれを認識し、感情移入が可能です。

しかし『デカダンス』ではリアルな絵柄と簡略的な絵柄が同居しているから視聴者は違和感を禁じ得ません。『サマーウォーズ』の様に、簡略的な絵柄が「バーチャル空間」のシンボルとなっているならば受け入れ易いのですが、『デカダンス』ではシンプルな絵柄の世界も「リアル」とされるので、それを受け入れられない人が少なからず発生する。さらには、シンプルな絵柄とリアルな絵柄が同じリアルとして同居する場面まで有るので、ライトなアニメファンは「こんなのあり得ない〜〜」と、その時点で作品自体を否定してしまいます。

多分、タンカー側のリアルなシーンの作画クオリティーを限られた予算で追及する為の苦肉の策だったのだと思いますが、これは製作サイドとしても大きな賭けだったと思います。結果的に現在のアニメファンのレベルを図るバロメーターの様な作品となってしまった。

多分、サイボーグ世界もリアルな絵柄で描いたならば「大傑作だ!!」と褒める人が続出したでしょう。私はこれを「勿体ない」とは思わない。シンプルな絵柄で挫折する様なファンの評価などゴミに等しいから。

その意味において、作品が視聴者を選ぶ『デカダンス』は、アニメという記号で成立する映像表現の本質をも追及する意欲的な作品なのだと私は評価しています。これはヌルヌル動く上質な動画をファンに提供する「ユーザーフレンドリーなアニメ作品」では無く、SFとしてのアイデアを視聴者に問う作品なのですから。


監督は『モブサイコ100』の立川譲。有能ですね!!


『天晴浪漫!』と『デカダンス』の2作品の前に、2020年夏アニメの他作は別の地平に取り残されています。それが例え『とある魔術師の超電磁砲T』であっても『ソードアートオンライン・アリシゼーション』であっても・・・。



この二作品に対抗出来るのは『彼女お借りします!』『ピーターグリルと賢者の時間』『魔王学園の負適合者』しか無い(3作品も有るじゃないか)。これらの作品はアニメを視聴する少年少女(年齢は問わず)のリビドーに素直な点で評価出来ます。これはこれでアニメらしい。

特に『彼女お借りします』は・・・あの終わり方は次が気になって仕方ないじゃないか!!続巻をネット版で全話買っちゃったじゃないか!!講談社のワナにしっかり嵌っちゃったよ!!
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2020/8/28

DT男子の純情・・・『彼女、お借りします』  アニメ
 

『彼女、お借りします』OPより
このOP、カワイイよね。PO,EDで登場人物が踊るのはアニメから始まった演出ですが(なぜ踊るんだろう?インド映画か?) 実写ドラマでも採用され、それがアニメにフィードバックした様なOP。自撮りのカメラをクィってやる演出も実写的で可愛い。

EDもヒャダインの作曲が冴えています。



■ DT男子の頭の中は〇〇〇の事でイッパイ!! ■

今期アニメ、第二期、第三期以外の作品に、目新しいものが無いのですが、『彼女お借りします』は頭二つ程、他の作品より目立っています。

少年マガジン連載の「ラブコメ」ですが、流石はマガジン。安定した面白さです。

特にイケメンでも無い普通の大学生の和也は「DT男子」。同じサークルでイイ感じになった麻美ちゃんと〇〇〇する日を妄想して日々を過ごしています。ところが、そのギラツキをウザがられて麻美ちゃんに振られてしまう・・・。

失意の和也は、ついつい「レンタル彼女」なるサービスを利用してしまいます。待ち合わせ場所に現れた千鶴は、人々が振り返る程のお嬢様系の美女。そんな彼女が、本当の彼女の様にデートしてくれるのですからDT男子にタマラナイ。

ただ、デートの最初にお金を払って、約束の時間が過ぎれば「又のご利用を・・」をと去って行く。虚しさが倍になって押し寄せて来ますが、和也はついつい次のデートの予約を入れてしまいます。

病気に祖母に千鶴を「彼女」と紹介して事で引っ込みが付かなくなり、ズルズルと千鶴との「デート」を続ける和也ですが、だんだんと千鶴に心を奪われて行きます。しかし・・相手にとって自分はただの「客」。

一方でプロであるハズの千鶴の和也の言動にペースを乱されます。「客」相手のサービス以上の事をする羽目になります。本来なら断れば良いだけなのに、何故か邪険に出来ない。和也の必死で惨めな様に、ついつい押し切られてしまいます。

何一つ特別なものを持っていないDT男子の和也ですが、誠実なだけが取り柄。しかし、その誠実さは、和也の男友達も認める所でもあり、和也の最大の魅力なのです。

はたしてDT男子は、高根の花を射止める事が出来るのか・・・TV版は、突然和也にベタ惚れする別のレンタル彼女の登場で、俄然面白くなって来ました。


■ 二極化したラブコメ ■

少年漫画のメインジャンルのラブコメですが、その黄金期は80年代では無かったかと思います。やはり少年マガジンがこのジャンルのトップランナーだった。

柳沢みきおの『翔んだカップル』はこのジャンルの金字塔でしょう。不動産屋の手違いで同居する事になった高校生男女のアレコレを大学生になるまで描く作品ですが、「女の子といきなり二人暮らし」というDT男子には夢の様な出来事と、なかなか上手く行かない不器用な恋愛の現実実が、絶妙なバランスを保った作品です。いえ、むしろ一度付き合ってから別れたりと、今の「付き合ったらハッピーエンド」というオタクの脳内妄想的ラブコメよりも、リアルDTの現実がギッシリ詰まった作品でした。

漫画ファンにラブコメの名作はと問えば、多くの方が『タッチ』や『うる星やつら』や『めぞん一刻』を上げられると思いますが、私は『翔んだカップル』こそが、この時代のラブコメの金字塔だと疑いません。

マガジンは『胸騒ぎの放課後』とか『かぼちゃワイン』とか王道ラブコメの宝庫でしたが、サンデーはあだち充と、高橋留美子という二大巨匠がこれを迎え撃っていた。一方、ジャンプのラブコメって印象が薄いんですよね・・・『ストップひばり君』や『To LOVEる―とらぶる』の様に変な方向に尖がっているというか・・・。

いずれにしても、80年代は少年誌のラブコメの黄金期である事は間違いありません。(多分)


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『翔んだカップル』より


その後も様々なラブコメ作品が発表されますが、「オタク妄想化」のベクトルと、「ドロドロ展開」のベクトルに二分れます。

ドロドロ展開は『翔んだカップル』の延長線にある作品群ですが、『君のいる街』や『ドメスティックな彼女』など、少年マガジンの伝統となっている感が強い。これらの作品は年頃の男女が付き合えば当然SEXもする・・・という現実的な視点で描かれているので、『青春の門』などの往年の青春小説の漫画版だと思えば分かり易い。

一方で「オタク妄想化」のベクトルはSEXは封印されています。何故なら読者がそれを望んでいないから。ヒロインは主人公と読者の性の捌け口であると同時に神格化しており、絶対不可侵な存在です。だから「薄い本」ではイロイロとされてしまうヒロインも、作品中でイロイロしてしまったら、ファンはドン引き、原作者にはカミソリが送られて来るでしょう。

■ シンプルなラブコメが受ける時代 ■

私も55歳になって、いまさらラブコメなんて言っているのがハズカシイお年頃となりましたが、未だにラブコメには胸キュンさせられてしまいます。

だいたい主人公達がハッピーエンドでくっ付いてしますと「ケ、リア充どもが!!」っと二度と見返す事の無いマンガやアニメのラブストーリーにあって、最近、何度も観れる作品がチラホラと出て来ています。

これらの作品の共通点は商業誌以外の媒体(ネット)から発表されている事が特徴です。(「恋は雨あがりの様に」はスピリッツでしたが)

これらの作品の特徴は「少女マンガ的」な所・・・脚に絡みつく様なネバネバしたDT男子特有の妄想が微塵も感じられない。だから商業誌の編集者目に留まらなかったのかも知れません。

しかし、ネットメディアで発表されると、読者の支持を広く集めます。男性、女性に関わらず読者が多いもの特徴では無いでしょうか。

商業誌だと読者層がかなりニッチにターゲッティングされていますが、ネットの読者は多種多様です。そんな、広く浅い層にアピールする作品がヒットするのが、昨今のラブコメの特徴かも知れません。

但し、中身が薄い訳では有りません。『Relife』のアニメなどは私は3回以上観てますし、「恋と嘘」もアニメ終了後の巻を買ってしまいました・・・。


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『Relife』より

引きこもりの社会人を薬で若替えらせて、1年だけ高校生活を再体験させ、社会復帰させるという「リライフ・プロジェクト」の被検者となった海崎新。会社の先輩の自殺というトラウマを抱える彼が、高校生との触れ合いの中で、生きる活力や自分の能力を再発見する物語。同じ被験者の不器用な女子(高校生だと思っている)に28才のオヤジが惹かれてしまう・・・。ラストは「綺麗な終わり方」のお手本の様で、正座して観てしまいます。

アニメのサントラは「東京ザビヌバッハ」などで菊池成孔と組む事の多い坪口 昌恭が担当。現代ジャズの美味しい所が詰まっています。ポピュラーな一面もあるので現代ジャズファンにはお勧め。(ノイズ系では無いですよ)


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『恋と嘘』より

少子化対策として厚生省のコンピューター遺伝子によってが夫婦のカップリングを決める「ゆかり法」が施行された日本。高校生になると相手が通知されます。ところが、通知された相手と違う子に恋をしている主人公は、相手も女子も自分をずっと好きだった事を知らされます。しかし、彼女は告白の後は急によそよそしくなり・・・・。もう観ていてモジモジしてしまうピュアなラブストーリーですが、そこがタマラナイ。・・・「消しゴムって最強の恋愛アイテム」じゃねと思わせる作品。

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『ヲタクに恋は難しい』より

ヲタクがキモイ時代は過去の話。今ではイケメンもキレイなOLも普通にアニメやゲームトークに花が咲く時代。しかし、そんな真性ヲタクだけに恋愛は今一つ盛り上がりに欠ける・・・そんな現代のヲタク・アルアルが詰まった作品。実際に趣味が合うというだけでヲタク同志が付き合うと辛い思いをするでしょう。だって、コダワリ・ポイントは人によって微妙に違うから・・・。そこが「許せない」んだよね・・・。マターリとした現代の恋愛を上手に描いています。


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『恋は雨上りのように』より

ラブコン枠からは少し外れる、オヤジと女子高生の恋物語り。怪我をして競技から離れた傷心の女子高生が雨宿りに入ったファミレスの店長のちょっとした気遣いに胸キュンしてしまう。店長からすれば娘の様な年頃の娘に告白されて、大人としてどう接して良いのやら・・・。中年オヤジのピュアが詰まった作品。実写化されていますが大泉洋がまさに適役。


映画『恋は雨あがりの様に』より
小松菜奈もいいんだよねーーー。アニメやマンガ原作の実写ってガッカリする事が多いのですが、これはイイ。(最近はamazonでドラマ「僕らがやりました」そ観てます)


■ 私、結構「恋愛脳」なんです ■

普段、「陰謀だ」「SFだ」「ノイズミュージック」だ・・・・と、ちょっとオカシな趣味全開の私ですが、実は結構「恋愛脳」です。良質のラブストーリーは大好物です。

何歳になってもラブコメやラブストーリーにドキドキ出来るって素敵じゃないですか。現実でカミサン以外にドキドキしない為にも、2次元でドキドキを解消する行為は、社会人として正しいと力説させて頂きます!!

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