懐かしい声が聞こえる
名前を呼ぶその声
とめどなく流れる泪
止める術を知らぬまま
三人と別れを告げてから、華はしばらくその場に立ちつくしていた。
何をする訳でもなく、ライブが行われていた場所を虚ろな瞳で見つめているだけだった。
時計台の鐘の音が七時の時を告げていた。
「華・・・」
澄み切った良く通る声が、名前を呼ぶ。
驚きながらも、華はゆっくりと後ろを振り返った。
その声の主に心当たりがあったから・・・
「三年ぶりにまさかこの場所で再会するとは思わなかったよ。運命ってやつか?あっ、三年経っても身長はあんま変わってないな・・・」
背後に立っていたのは長身の綺麗な顔立ちをした青年だった。
「・・・・」
「・・・俺のこと、憶えてないか・・・?昔ここで毎日唄ってた、ただのストリートミュージシャンのこと」
彼はおどけた口調でそう言ったが、その瞳の奥は悲しげな色に輝いていた。
「・・・・!!!」
「華っ!?」
華は何も言わずにその場から逃げるように走り去った。彼女の頬は泪で濡れていた。

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