廻りだした運命の環
その先に待ち受けるモノは何?
答えはまだ見つけられない
「あっ、また下向いた」
陸と最初に出会ってから数週間の時が流れたそんなある日のことだった。
やはり華は同じ道を歩き、そして陸に声をかけられていた。
「だって・・・」
前と同じ事を言われ、ますます俯いてしまった華に、陸は予想外な言葉を発していた。
「せっかく綺麗な声持ってるのに、下ばっかり向いてたら唄えない」
そんな彼の言葉に、華は思わず顔を上げていた。
「私、歌は・・・」
「音痴なの?」
「なっ・・・私は音痴なんかじゃない!」
陸にそう言われ、さすがに腹が立ったのか、ここが人通りのある場所だということも忘れ、華は大きな声を出していた。
もちろん大声で叫んだのだから、周囲の人間に注目される。
そのことに気がついた華は顔を赤くして再び下を向いた。
「ふ〜ん。じゃ、ここで唄おうよ」
その言葉を待っていましたと言わんばかりに、瞳を輝かせながら陸はそう言った。
「えっ?ここで!?」
思ってもいなかった彼の発言に、華は戸惑いを隠せない。
しかし、そんな華とは正反対に、陸は当たり前のように言葉を紡いだ。
「そっ。今ここで。天(ソラ)まで響くような歌を唄うんだ・・・」

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