飲食の棟を建てて20年になる。それまでは、ロッジのダイニングを使ってやっていた。
開業4年目、集客力が抜群な雑誌に載ったことにより、少しずつ宿泊客が来るようになった。飲食の方も土、日にだけだったけど、ひたすら待ちの構えでいろいろやっているうちに少しだけ客が来るようになった。そこで手狭なロッジダイニングに宿泊と飲食の客がいっしょというわけにはいかなくなって、借金をして店舗を建てた。ほんの少しの宿泊と飲食だけど、観光地はその二つがいっぺんにやってくる。建てないわけにはいかなかった。
田舎で飲食をやる人が多くなった。いわゆる田舎レストラン、田舎カフェの類。オーベルジュの形態になると、かなりの資本と集客力が必要になるが、飲食店オンリーだと少しの資本とやる気でなんとかなる。といっても、田舎だとテナントという開業の方法はほとんどないので、一戸建を建て、店を造り、ほとんどがそこが住宅と併用となる。そうなると、ある程度の坪数が必要になり、少しといっても結構かかってしまう。
そこで、田舎で開業する人たちは古家を改築して営業を始める人たちが多い。最初から建てるよりかなり安く上がる。もちろん新築ではないので大なり小なり不具合はあるが、それを逆手にとって古民家風にするという手もあったりするから、アイデア次第でなんとかなる。
僕らが借金をして建てた建物は2階にあり、階段を幾段も登らなければならない。席も12席ほど。店を始めた頃は、2階に上がるというだけで客が帰ってしまったこともある。禁煙ですと言ったらこれまた帰ってしまう。カウンターどうぞと言ったらボックスに座りたいとまたまた帰ってしまう。スープカレーだけって言ったらまたまたまた帰ってしまう。注文の仕方を説明するとめんどくさいって帰ってしまう。
今、飲食店は面白くなってきたと思う。客側にキャパシティができて、独創的なものが喜ばれる時代になった。逆に無難なものを出すと、後が続かなくなる。ひとつのことを長くやっていると、時代の流れとともに変わる人の気持ちや考え方が見える。定点観測すると面白いもんやね。


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