自転車の旅で北海道を走っていた頃、知床のYHに泊まったことがある。ウトロの町からまだ半島の先にある、小さな旅人宿。そこはまだ電気がなく、ランプの下で食事をした覚えがある。その頃の北海道では、まだ、ランプが日常で使われていた。
宿泊のお客さんからバーベキューをしたいと要望があったので、今年初めてのバーベキュー小屋をセットした。準備しているとき、僕がお客なら蛍光灯の明かりの下で食べるより、ランプのような小さく穏やかな灯りの下で食べたいなと思い、家内の実家からもらってきたランプに灯油を入れ、火をつけてみた。
このランプは飾りではなく、函館近くの茂辺地で商家を営んでいたころの実用品で、もう何十年もたっているもの。もらってきた時に「カサ」がなかったので、小樽の北一ガラスで買ってきてつけた。
ポワッと穏やかに燃える炎を見ていると、気持ちが安らぐ。ホヤについたススをきれいにするのは、子供の仕事というのを聞いたことがある。ホヤに手を入れることができるのは、子供の小さな手だからということらしい。
北海道の人里離れた開拓の小屋で、ランプの小さな灯りですごす夜は、どんなだったのかなあと思いを馳せる。でも、子供の小さな手で磨いたピカピカのホヤは、粗末な食事もおいしい夕食に変り、明日になればまた、頼もしい愛馬といっしょに木の根を掘りこしにでかける活力になったのではと思ったりする。


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