ここ数週間、雨の日が多く自転車に乗る機会が少ない。といっても、店が終わってから夕暮れ時までのほんの2時間ほどだが、短い夏を味わいに出かけるのがこの時期の楽しみである。
今日は定休日なので、午前中の涼しい間に五色温泉まで出かけてみる。もう、雪解け水はなくなっただろうか。
五色温泉に続く道の登り口に「馬頭観音」の碑が建っている。
羊蹄山周辺を自転車レベルの速度で走っていると、道ばたや畑の隅に建っているのをよく見つけることができる。
厳しい開拓の頃には、なくてはならない馬の力。人と汗みどろになりながら岩や木の根を掘り起こし、作物ができる土地してきた愛馬。その愛馬の死に、とむらいと感謝の気持ちを表わすためにそれらの碑が建てられたのだろう。

ここに越してきたころには、まだ馬を飼っていた農家も少しあったが、30年たった今、ほとんど見かけない。馬たちがいたところには、大きなトラクターが何台も置かれている。
雪は残っていなかったが、イワオヌプリ分水嶺付近の硫黄系の白い小石が敷き詰められた小川には、ここ数日の雨が雪解け水と同じように流れていた。

このイワオヌプリの裏側山腹には、太平洋戦争の頃に硫黄の採掘を行った建物の跡が残っている。僕が登った20数年前には、作業小屋の跡なのか、土台とおぼしき朽ち果てた木組みがあった。倶知安の郷土史によるとその採掘した硫黄は、当時、今日僕が走ってきたルート付近に採掘場と町を結ぶ長い索道があり、それ載せて、火薬の原料となる硫黄を麓に降したらしい。
道沿いには「ガクアジサイ」が、ポスターカラーの「ターコイズブルー」色に輝いていた。北海道の夏は、あと3週間。


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