今年の冬は、台湾からの助っ人Yさんと数年ぶりにスキー場へ行った。雪の中でYさんは、僕のつたないスキー教室でもめきめき上達して、ここを去る頃には2級のバッジテストを受けるほどになった。ニセコのスキーエリアど真ん中にいるのに、駅裏にあるリフトが一本しかない小さな町営スキー場によく行った。スキーを教え、また覚えるだけならこのゲレンデで十分だった。札幌に住んでいた頃、スキーウェアを買う金がなく、ジャージの上からウィンドブレーカーを着て、地下鉄真駒内駅からバスで藻岩山スキー場に通っていた頃の純粋さを思い出していた。
僕らがここに来たのは、田舎暮らしをしながら商売をしたかったから。その当時、田舎暮らしをしながら暮らしていけるところは、スキー場の近くしかなかった。それは、北海道の冬の存在。あえて吹雪の中を遠出する人はあまりいない。札幌でもそうだが、経済の冬枯れがある。でも、その頃はスキーブームで、スキー場には人がたくさん来ていた。それでも、僕らはあえてスキー場から離れたところを選んだ。リゾートエリアに取り込まれたくなかったから。
ニセコは今、国内外の資本が入り混じってリゾート争奪戦になっている。
毎日、忙しくかつ退屈な日々を送っている人にとっては、リゾート地でゆっくりしたい気持ちはよく分かる。ましてや、雪を見たことのない人たちが異国の地で滑るパウダースノーは、この上ないリゾートだと思う。
でも、僕らはもっとリゾートから離れて、対極にある日常の社会に入って行こうと思う。


2