田舎暮らしにあこがれる人が必ず一度はやること、それは畑仕事。
せっかく自分の土地がたくさん余っているのだからと、野菜やハーブを植え、しばし田舎暮らしを満喫する。人によってその耕作時間の長短はあるが、結構な割合でやめてしまう。
それは、思ったほど成果が上がらないのに労力がかかり、ブヨや蚊にさされ、そんなにしてまでという思いと、日々の生活費をかせがないといけなくなり、農作業用に買ったもろもろ道具が放置される。
僕たちもそのような経過をたどったし、まわりを見てもそうだった。
悠々自適の年金生活者だったら、まだやっていたかもね。
ただ、僕たちの場合、農作物のほかにハーブ類を植えたことによっていろいろ勉強になることが多かった。
ハーブで一番思い出深いのは、タイム。畑仕事の休憩場所にコンクリートの平板を敷いたところ、少しだけ植えたのが毎年どんどん広がって、休憩場所はタイムの園になった。
匂いの強い魚や肉に少しだけ振りかけると、さわやかな香りがその匂いを消してくれる。
その繁茂していたタイムは、平板を別の場所に移した途端に旅人のように消えてしまった。
ハーブとスパイスは、日常の日本の食卓にたくさん使われているにもかかわらず、個体の香りや味を一つづつ観察することはあまりない。それは、カレー粉や七味とうがらしのように、ミックスされた状態で売られていることが多いからだと思う。ガラムマサラもしかり。
30年使い続けていると、ほんの少しだけこいつらの素晴らしさが分かるようになってきた。
つづく。

空いている土地に目いっぱいハーブを植えた。その数、30数種類。

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