『ヤバい経済学――悪ガキ教授が世の裏側を探検する――』
スティーブン D レヴィット・スティーブン J ダブナー(著)
望月 衛(翻訳)
2006年
東洋経済新報社
★★★☆☆
Steven D. Levitt and Stephen J. Dubner, 2005,"
Freakonomics: A Rouge Economist Explores the Hidden Side of Everything", William Morrow & Company.の翻訳。
若手経済学者のレヴィットと作家・ジャーナリストのダブナーが手を組んで世に送り出した、異色の読み物。タイトルの「経済学」を気にする必要はない。要は「面白い話をしようぜ」ということだ。
インチキ、八百長、人種差別、ヤクの売人、暴力犯罪に知的犯罪、と繰り出される刺激的なトピックに目を奪われがちだが、本書で扱っている様々なトピックの間には特に関連性はない。そういう意味では本書を貫くテーマというものはない。貫かれているのは方法論。様々な社会現象に対する「専門家の意見」のほとんどには根拠がないし間違っている。マトモな議論をしたいなら、どうしてデータを見てみないの?というのが本書の主旨。データそのものに語らせてみると、思いもよらない常識外れの関係性が見出されてくる。
これが何故「経済学」かと言えば、著者らに言わせれば、そもそも「経済学という科学は基本的に、決まった対象があるわけでなく、むしろ方法の集まりであって、だからどんなにおかしな対象だって扱っていけないわけじゃない」からだ。「何をどうやって測るべきかを知っていれば混み入った世界もずっとわかりやすくなる」し、「経済学は、他にも増して、計測の学問である」という。普通は雇用だの不動産だの銀行だの投資だのについて分析するわけだが、「経済学の手法はそんなことにだけ使えるわけじゃなく、もっと――そう、もっと『面白い』ことにも使えるのだ」という確信犯。巷に溢れる「専門家の意見」がいかにデタラメであるかを次々と暴いていく様は痛快。
「ヤバい」雰囲気を出すためか、ライ麦畑の男のコみたいな感じの口語体に翻訳されている。原著の雰囲気がどんな感じなのかわからないが、日本語版の雰囲気づくりには翻訳者の功績が大きいのではないかと思う。ただ、こういうのは読みづらくてたまらんという人もいるだろう。
巻末に膨大な引用文献のリストあり。
本文約270ページ。
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Kota's Book Review
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Terai, S. Web Page

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