先月末にエレキギターやエレキベース、ギターアンプ、エフェクター等を中古屋に売り、中古屋の店頭に並んでいた楽器類を眺めているうちに逆にギターを弾きたくなってしまい、別のギターを押入れから引っ張り出してきて弦を張り替えたのが今月初め。新品の弦の金属的な響きに感激したのも束の間、1つだけ不満があった。6弦のオクターブ調整がムチャクチャ狂っていたのだ。開放でしっかり合わせても、Gコード弾くと6弦3フレットのベース音が明らかに上ずってる。
その不協和音っぷりがあまりにも気持ち悪いので、言葉自体は初めてフォークギターを買って貰った中1の頃から知っていたが一度も試みたことのなかった「オクターブ調整」に挑戦してみた。たいていのエレキギターの場合、「ブリッジ」と呼ばれる部品のネジをドライバーで回して調整するようになっている。
弦の長さとその弦を振動させたときの周波数は反比例の関係にある。弦の長さが1/2になれば、周波数は2倍になる。そして、人間は周波数が2倍の音程を「1オクターブ上」と感じる。ギターの場合、12フレットが開放弦のちょうど半分の長さの位置に打たれているので、12フレットを押さえて出る音程は開放で出る音程の1オクターブ上になる。オクターブ調整がズレている、というのは、要するに、12フレットの位置が開放弦長の半分の位置とズレている、ということなので、ブリッジの位置を微調整してピッタリの位置に合わせてやるわけだ(フレットの位置は変えられないので、弦長を変える)。
そこで、高校生の頃に買った超アナログ的なチューニングメーターを取り出し(10年くらい前?に入れた電池まだいきてた)、弦を緩めブリッジを動かしてはチューニング、弦を緩めブリッジを動かしてはチューニング、を繰り返した。開放弦を合わせて(6弦ならE音)、12フレットを押さえて出る音が1オクターブ上のE音より高くなってしまうなら、12フレットからブリッジまでの長さが開放弦の弦長の1/2より短いということだから、ブリッジをブリッジ側(なんかバカっぽい表現)に移動する。反対に12フレットを押さえて出る音がE音より低いなら、ブリッジをネック側に移動する。このギターの場合、全ての弦においてブリッジをブリッジ側に移動する必要があった。
よし!これでバッチリ!と数日間は思っていたのだけど、ついでに弦高の調整もしたくなってきた。弦高がちょっと高いのである。弦高はブリッジのサドルの高さを調整することで変えることができる。この際だから、これも調整してみた。
弦を緩め、ギターに付属していた細い六角レンチでサドルの高さを下げ、チューニング、緩め、下げ、チューニング、これを繰り返す。驚いたことに、サドルの高さを変えると弦の張力が変わってしまうため、オクターブ調整がズレる! と言うわけで、再びドライバーを取り出しオクターブ調整のやり直し。これでだいぶ弾きやすくなったかな、と思ったのだけど…。
サドルを下げたことによって、弦の張力が下がったのだけど、そして、弦の張力が弱い方が弾きやすそうなイメージがあったのだけど、極端な表現をすると、弦が「半音下げチューニング」みたいなベロンベロン状態に近づいており、これはこれで弾きづらい(慣れの問題かもしれないが…)。ギター表現というものは、しっかり押さえた弦を自らの指で揺らすことによって音に表情をつけるものだと思うのだけど、ある程度弦の張力が強い方が(弦自体の元に戻ろうとする力を利用できるので)弦を揺らしやすいのだ(もちろんチョークアップは力が必要になるけど、チョークアップだけがエレキギターの奏法じゃない)。数日後、サドルの高さを少し上げることにした(と言うわけで、またオクターブ調整のやり直し)。
ちなみに、エレキギターのメンテナンスについて解説しているWEBページをいくつか読んでみたところ、ギターというものは、エレキギターでもフォークギターでもクラシックギターでも、正確な音程が出ることをそれほど期待できるような楽器ではないそうだ。僕は「正しいフレット位置は、弦長によって物理的に決まる」と思っていたのだけど、弦の太さを変えた場合はもちろん、同じ太さでもメーカーを変えた場合や、極端なことを言えば、弦を張り替えた直後と弾き込んだ後では、オクターブは狂ってしまうものらしい。正確な音程は出ないけれども狂っているようには聴かせないというのが、プロのギタリストの技というものらしい。
さて、このギターのオクターブ調整はまぁこの辺でやめておこうという気になったのだけど、上述のWEBページなんかを見ているうちに、そもそもの問題はネックが反っていることではないかという気がしてきた。ギターのネックには数十kgの力が加わっているそうで、これだけの力がかかっていればだんだん曲がってくるのだ(弦を張っている側に反ってくることを「順反り」と言う)。だから、一様にオクターブ調整が狂っていたり(12フレットで出る音が全ての弦で1オクターブより高くなっていた)、高フレット位置になるほど弦高が高くなっているような状態になっていたのではないかと思う。
ネックが反るというのは、ネックが木でできている以上、ある程度仕方ない問題なので、ギターにはあらかじめ手が打ってあって、ネックの中に「トラスロッド」と呼ばれる金属の棒が埋め込まれている。これのネジを回すことによって、意図的にネックを反らすことができる。順反りの場合はネックの裏側方向に反らすことによって真っすぐに戻してやるわけだ。僕のギターで起きている問題がネックの反りによって起きているのであれば、ブリッジの位置調整やサドルの高さ調整で対処しようとするのではなく、トラスロッドを回してネックの反りそのものに対処してやるのがスジなのだ、本来は。
ところが、フェンダー系のギター(少なくともストラトキャスター)は トラスロッドのネジがネックのボディ側にある(※このときはそう思っていたのだが、フェンダーのストラトでも、ヘッド側に調整ネジのあるネックが使われている場合もあるようだ)。と言うことは、ネックをボディから外さなければ調整ができない。ボディの裏側のボディとネックのジョイント部に金属のプレートがあって、そこで4本のネジでとめてあるのだ。
しかし…、ネックを外すのはさすがに怖いな。このギター、実は結構高価なもので…。小学生時代からお年玉を貯め続けて、大学に入学した春にそれこそ清水の舞台から飛び降りる覚悟で買ったアメリカ製のギターなのである(フェンダー系のギターでアメリカ製ってことは…、要するに、Fender USAの製品なのである(笑))。12万円程度だったと思う(今から考えてみれば、バイクや車、あるいは不動産(笑)に比べれば、10万ソコソコの楽器なんてそれほど「高価」なものではないのかもしれないが、買ったときは本当に「清水の舞台から…」といった気持ちだった)。これ以上は楽器屋にリペアを依頼した方がいいかな? と言うわけで、ネックの調整にはまだ手を出していない。
しかしこれも考えようで。元は高価なギターと言っても、もう買ってから20年くらい経っているし、ずっとメンテナンスしていなかったからもう状態はボロボロだし。だいたいお金がないし。思い切って自分でやってみようかという気になりつつある。
っちゅうか、センターピックアップの混ざった音が好きなので、本当はピックアップセレクターの3点スイッチを5点スイッチに交換したいんだよな(パーツはギターに付属していた)。そうなると、ハンダゴテ片手に電気工作ってことになるけど、そのうちやっちゃうか? 自分でいろいろやらざるをえないってのが、ケチケチ生活のささやかな楽しみの1つでもあるわけだし。

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