塗装の一部が剥げて「もう壊れちゃってもいいや」と思ったわけでは決してないのだが、大学入学時に買ったFender USAのストラトキャスターのネック調整を自分でやってみようという気になった。11月頭に弦を替えて約50日。そろそろ弦を交換したくなってきたので、これを機会に。よくわからないが、ネックが順反りしているのではないかと思うのだ。「トラスロッド」なるものを回してやろう。
まず、全ての弦を外し、指板の表面やフレットの汚れを雑巾でゴシゴシ拭き取る。指板には文字通り「手垢」がこびりついてる。これを落とす。ヘッドのペグや、ピックアップ、ブリッジ周辺の、普段弦を張っているときには指の入らない箇所の埃を拭き取る。
無造作にギターを引っくり返して(こういうことをするから塗装が剥げちゃったりするのだが…)、ボディとネックのジョイント部を眺めてみる。金属のプレートと4本のネジがある。まぁ、こいつを弛めてやれば…、ネックが外れるのだろう。常識的に考えて。
ネジは驚くほど簡単に回った。逆に言うと、最後にギュッと締めてないのだ。取り付けの際に注意。また、思っていたよりネジはずっと長かった。まぁ、ボディを貫通してるわけだからねぇ…。
ネジとプレートを外すと、ネックそのものの重みでネックがボディから外れてきた(考えてみると、ネジがあれほど長いのだから、ボディから抜き取らなくてもネックは外れるはず…)。エレキギターのメンテナンスについて解説しているWEBページでは「絶対に無理な力を加えないで!」と書いてあるが、勝手に取れた。ネジの頭とネジ穴の入り口の間にロウのようなものがこびりついていたが、これがグリスのようなものを意図的に塗ったものなのか、単に汚れがたまっていただけなのか、よくわからない。
ボディを引っくり返してみると…、あ! ボディとネックの間に挟んであった(硬い油紙のような)小さな紙片がこぼれ落ちていた。これどこに挟んであったのかなぁ…。もう1枚はボディ側の窪みの一番奥にピッタリくっついていた(接着されていたわけではない)。
ネックを取り上げ、ジョイント部周辺を雑巾で念入りに拭く。貼ってあった紙に、製作者か誰かの(チェック用っぽい)サインがあった。また、日付らしき数字のスタンプが押してあったが、インクがにじんでいてよく読み取れなかった。
ボディ側には大きな「R」のサインが。氏名か工場名かわからないが、スタンプもいくつか押してある。また、ネックとボディをとめていた4本のネジ穴の他にも、2つの穴があけられていた。この辺りもオソルオソル雑巾で拭く。
何かもう一仕事終えたような気分だったが、カンジンなのはこれからである。ネックを根元(?)から眺めてみると、確かに12フレット辺りの位置で湾曲しているような気もする(単にデジカメのレンズのせいかもしれないが…)。ネックに埋め込まれているのが「トラスロッド」で、順反りの場合、こいつを時計回りに回してやれば、ネックは逆反り方向に反るので、両者が相殺されてネックは真っすぐになる(理屈上は)。
WEBページを見ると、「大型のマイナスドライバーを使って回す」という記述が多い。うちにあった中で一番大きなマイナスドライバーを当ててみたが、それでも小さい。自転車・バイク・スノーボード、どんな品物のメンテナンスの本にも書いてあるが、「工具の鉄則」は「サイズの合った工具を使う」だ。サイズの合っていない工具でネジやナットを回してはいけない。回す工具も、回されるネジもナットも痛んでしまうのだ。
しかし…、こんな大きなマイナスドライバー(プラスドライバーも)ないぞ、うちに。頭の中を大捜索し、スノーボード用の工具を持っていたことを思い出した。スノーボードでは、リフトに乗るたびに片足を外さなければならない。自然とビンディングのネジ(ボルト・ナット)が緩んでくるので、スノーボーダーにとってミニ工具セットは必需品で、ワックスやエッジシャープナーなんかと一緒にウエストポーチに忍ばせいるものなのだ。
押入れからブーツバッグを取り出す。あ、これはインラインローラースケート、次のはスキーのブーツ、3つ目がようやくスノーボードのブーツで、バッグ内をあさって工具を取り出す。トラスロッドの溝に合わせてみると…、まだ小さいが、もうこれでいくしかない。オソルオソル時計回りに回してみる…。
か、固い…。WEBページを見ると、「45〜90°ずつ回して様子を見ること」と書いてあるので、まぁ45°でいいと思っているのだが、これが固くて回らない。「無理は禁物」とどんなページにも書いてあるし…(力任せに回すと、ネックが割れてしまったりする危険性があるらしい)。試しに反時計回りに回してみると、簡単に回る。その調子で時計回りにも…、回らないんだな、これが。
何とか、90°近く回して、取り敢えずこれでいいことにする。
ところで、ネックの外れたギター本体というものは、これまたどうにも奇妙な形に見える。壁に立てかければ芸術的なオブジェのようにも見える。「小脇に抱えてみれば、素敵なハンドバックのようにも…」と遊んでみたが、肩から提げると案外重い。
再びボディを引っくり返し、ネックの取り付け。先ほどの紙片は、1枚は一番奥、もう1枚は中央辺りに置いてみた。ワッシャー代わりなんだろうか。ボディ側の金属のプレートは結局、ネジを「締め込み過ぎない」ためのものなのだろう。別に必要ないもんねぇ、これ。最後は軽く締める。
ホッとしつつギターを眺めていて気づいたのだが、トラスロッドのネジが位置する辺りはピックガードが削られている。ひょっとして、ネックをボディから外さなくても、専用の工具さえあればトラスロッドを回すことは可能? そうだとすれば、トホホだぞ、おい。
で、中国製の激安エレキギター弦(1セット250円!)を張って、チューニングし(オクターブ調整はまた今度…)、軽く弾いてみてショック。弦のビビリが発生している。全ての弦で15フレット以上の高フレット位置で、4〜5弦なんて10フレット付近でも音がビビる。トラスロッドの回し過ぎ? あるいは何だ? 反対向きに回しちゃったとか? それとも、前回の弦より細い弦を張ったことが関係してるのかな。そう言えば、
オクターブ調整したとき、少し弦高を下げたもんなぁ…。明らかに音がビビっている5弦に関しては弦高を少し上げてみたが、依然として要調整の状態。
調整したつもりがかえって妙な状態になってしまった…(予想通りとも言える)。しばらくこの状態で様子を見てみます。

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