『日本美術まんが 国宝トゥナイト』
いわきり なおと(漫画)
2010年
カンゼン
★☆☆☆☆
国宝と会話することのできる特殊能力をもつ隠れ国宝女子(「こくじょ」と読むらしい)岡倉てんこりんと巡る全国各地の国宝の数々…。タイトルに惹かれ、表紙イラストも可愛いと思ったのだが…、タイトルと表紙以外は全く好みじゃなかった(涙)。
日本美術マニアの著者(イラストレーター・漫画家)が趣味を活かしてWeb上で発表していたマンガ(「
国宝トゥナイト」)をまとめて書籍化したもの。取り上げられている国宝や重要文化財は絵画、仏像、建築…、時代も飛鳥・奈良時代のものから江戸時代中期のものまで…、と幅広いものの、どういう基準で取捨選択しているのかよくわからないなぁ、というのが正直なところ(国宝や美術史に詳しい人には、著者の選択のセンスを「そうきたか!」と楽しめるのかもしれないが…)。本書を締め括るセリフ「今宵 国宝とともに 国宝トゥナイト」は良かったんだけど…、誠に残念な1冊。
対象読者がよくわからない。国宝・美術好きにはもの足りない内容だろうし、「これまで国宝なんかに興味をもったことはない」という読者のために備えているべき「入門書」性も薄い。美術にはそれなりに関心があるが(日本史を含む)「歴史」に興味をもてなかった僕としては、もう少し網羅的と言うか、テーマ別にまとめるなり、時代別にまとめるなり、地域別にまとめるなり、日本美術史・文化史の全体像が見えてくるような工夫が欲しかった。
本編は赤と黒の2色印刷。巻末にカラー印刷の「美麗原色 国宝ビジュアルガイド」(15ページ)がある。その中の「特別編 まんがでわかる日本美術史の歩み」(4ページ)に肉付けした内容の方がよっぽど面白かったのでは…?とも思うがどうだろう(ただし、それでは「日本史」の副読本のような本になってしまうだろうが)。トリビア的な豆知識に感心したり、ページ下に記載されている博物館・美術館等へのアクセスガイドは便利だと思うが、そのためには観光ガイドブックのような本があるし…。
実は本書で一番の衝撃だったのは(まぁ誰にとってもそうだろうと思うが)、著者のあまりの絵の下手クソさ。それが意図的なものであれ非意図的なものであれ、僕の許容範囲を軽く飛び越えていた。「国宝ラブコメ」「日本美術ギャグまんが」と言っても、そのギャグが怖ろしいほどツマラないしなぁ…。著者が「むしろ2周目以降がおもしろいはず!?」(「あとがき」より)と言う通り、絵の下手クソさに免疫がついてしまえば、「お約束」化したワンパターンのギャグに対してもジワジワと可笑しさが湧いてくるのは確か。ただ、それも「トホホ笑い」レベルと言うか…(あ、いや、得体の知れないパロディ感覚だけは可笑しかったかもしれない)。
ちなみに、本書で紹介されている国宝の中で僕が一番好きなのは、奈良の東大寺大仏殿の奥にある「二月堂」だろうか。僕はこれまで奈良には2回しか行ったことがないのだが、何故か2回とも二月堂を訪れている(1回目は高校の修学旅行、2回目ももう15年も昔の話だ)。あそこから見渡せる風景は好きです(大仏殿の屋根を見下ろす高い位置、山の斜面に立っている)。また奈良に行く機会があれば、二月堂には行くだろう。それが国宝でも重要文化財でもなかったとしても(笑)。
175ページ程度(巻末の「国宝ビジュアルガイド」(15ページ)を含む)。
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Kota's Book Review
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Terai, S. Web Page

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