昨日の夕方、買い物に出たとき、ちょっと挙動不審なおじさんと出くわした(僕自身が「おじさん」なわけだけど、僕から見ても「おじさん」だったので、45〜50歳といったところか)。近所のマンションの集合玄関に入る2〜3歩手前で、何かをグイッと飲み干したのだ。何でそんなところで急いで飲むのかな。自宅に戻ってからユックリ飲めばいいじゃない? 空き缶をそこらに捨てていくつもりか?
僕が彼を「ちょっと変だな?」と思ったのは、彼が妙にソワソワしているように見えたことと、その服装。ジャンバーを着ていなかったのだ。彼が着ていたのは普段着風のチェックのシャツで、温かそうな服だったが、2月の外に出て行くような服装ではない。しかしまぁ、寒くて震えている、というワケでもなさそう。
上着を着ないで、マンションの玄関先で、しかも、姿勢としてはマンションの内部に入っていく直前という格好で、いったい何を飲んでいるのか。他のオフィスビルの裏口や屋内駐車場の出入口付近で、タバコ・缶コーヒー休憩をしている会社員をよく見かけるが、そういう人たちはたいていビルの外の方向を向いている。
当然、マンションの中に入っていくのだろうと思っていたら、手に持っていたガラスのコップをズボンのポケットに押し込み、踵を返し、歩道に出てきた。歩き方が少し変。
ポケットに突っ込んだガラスのコップ…、そうか、カップ酒か。きっとこういうことだろう。このマンションの隣のビルの1階にはコンビニがある。ジャンバーを着ないで外に出てきて、コンビニでコップ酒を買い、家族にバレないようにうちに戻る前にグイッと飲む。何食わぬ顔をして家に帰る。
彼はコンビニの外のゴミ箱の前まで歩いていくと、カップ酒のコップ(カップ?)を丸い口から投入した。ゴン!という音が響く。
しかし、何故それなら最初からゴミ箱の前で一気飲みしないのだろう。僕にとって最も不審だったのは、彼がマンションの玄関の手前で、まるでこの後すぐにマンションに入っていくような姿勢で、何かを飲み干したことだったのだ。
そのおじさん、ゴミ箱にコップを捨てマンションに戻るのかと思ったら、そのままゴミ箱の前を通り過ぎ、マンションからはドンドン離れていく。歩き方が左右非対称と言うか…、一気に酔いがまわったのだろうか? それとも、単に後ろめたい気持ちがあってコソコソ歩いているだけだろうか? おいおい、まさかこのままコンビニの駐車場に停めてある車に乗り込んで、車を発進させるんじゃないだろうな。
彼は車には乗らなかった。代わりに(「代わり」ではないけれど)、コンビニの角をクルッとまわって、そのビルの正面玄関から中に入っていった。マンションではなく、オフィスビルである。時刻は午後4時45分。まだ仕事中なのかな…。
以上の情景から推測すると、会社の勤務時間中に、どうしても酒が呑みたくなり、トイレやタバコ休憩に行くフリをして会社の外に出、コンビニでカップ酒を購入、その場で飲むわけにはいかないので、隣のマンションの集合玄関の影で(歩道から顔の見えないように後向きで)一気に飲み、念のためポケットに空きカップを隠した上でコンビニのゴミ箱にすみやかに証拠隠滅、左右非対称に歩きながら会社に戻っていった、ということか…。
アル中、なのかなぁ…。そうなんだろうなぁ…。本人隠しているつもりなのだろうが、バレバレだよなぁ…。「こうなる前に、どうしてホドホドでやめられなかったの?」というのが素朴な意見だろうが、アルコール依存症の本を読むと、そもそも依存性薬物というものは「ホドホド」のところでやめられるものではないらしい(極端な言い方をすると、初めて飲んだときから依存症は始まっている)。だから僕はお酒をやめてしまったのだ。こうなる前に(そして、「自分は絶対こうなる!」という妙な「自信」があった)。
もともと自分なりの「理想の生き方」を追求するタイプではないけれど(そして、「他人の生き方」についてトヤカク言うのも好きではないタイプなのだけど)、こうはなりたくなかったのだ。そして、間違いなく自分はこうなる、と思ったんだよね。それが僕がお酒をやめられた理由かなぁ。
選択肢は2つしかない。こうなるか、こうならないか。だったら、迷うことはない。
※ 第3の選択肢「こうならない程度に、ホドホドでやめておく」を考慮の外に追い出してしまうことがポイント。

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