昨日、ほぼ25年振り(?)に、(バンド等の練習のための)リハーサルスタジオに行き、独りでエレキギターを弾いてきた。自宅用ではない大きなアンプでギターを鳴らすのも、同様に25年振りだろうと思う。
実は7月頃から妙に熱心にギターの練習をしていた。ところが、数年前にギターアンプを処分して以来、うちにはギターアンプがない。すぐにアンプから音を出したくなった。できれば自宅用ではない、大きなアンプで音を出したい。
調べてみると、札幌には練習スタジオがいくつもあり、自宅からの徒歩圏内に2軒も存在することが判明。ところが…、元来臆病で行動力のない当方、なかなか一歩踏み出せないでいた。
だいたい、僕は自宅用の15〜30Wのトランジスタアンプしか触ったことがない。スタジオにある大型の真空管アンプの扱い方がわからない。
と言うワケで、予習もした。『
リハスタ定番アンプ100%使いこなしガイド』(2014年 リットーミュージック)なんてムックも買って読んた。付属CDを聴いて、Marshallのアンプはディスト―ションサウンドだけでなくカッティング向きのクリーントーンも綺麗なことに驚いた。
それで意を決して、昨日近所の練習スタジオに行ってみたのである(前日に予約の電話をするだけでグッタリ疲れた(笑))。
僕が使うことになった部屋には、MarshallのJCM900というスタックアンプが設置されていた。
幸い、この機種は上述のムックに紹介されており、複数のオススメセッティング例まで掲載されていた。多くの練習スタジオに置いてある定番のアンプのようだ。
今回はお試しのツモリだったので予約していたのは1時間だけ。セッティングはムックの通りにして早速弾き始めたのだが…(エフェクターも処分してしまって持っていないので、アンプに直)。
何と言うか、プロミュージシャンも使うような大型の真空管アンプに対して僕が抱いていた幻想が吹き飛んだような気がする。
自宅で小さなトランジスタアンプでギターを弾いていると、「大きなアンプにつなげばもっと良い音が出るんだろうなぁ」などと思ってしまう。違うのだ。良いアンプは素のギターの音をデフォルメせずにそのまま出す。大きな音を出すと、自分の下手クソさがハッキリとわかるのである。現実を映し出す、大きな歪みのない鏡のようなものなのだ。正直、部屋に入って10分後には余りの下手クソさに嫌になり、途方に暮れていた。
それでもこの体験は示唆に富むものだった。まず、上述の通り、「良いアンプは良い音が出るのではなく、ありのままの音が出る」ということを知ったのが第一。第二に、そうやって自分の出している音を聴いてみると、自分は実に「余分な音」を出しているのだ。「出したい音」よりも「出したくない音」の方が出ているくらい。全てをもっと丁寧に行わなければならないし、だいたいミュートが致命的にできていない。自宅でアンプに通さずにいくら練習してもダメだ。「出したくない音が出ている」ことに気が付かないからだ。
関連しているのだろうが、大きな音を出すと、ハンマリングで出る音もかなりちゃんと鳴る。僕は(プリングほどではないが)ハンマリングも苦手で、アンプを通さずに弾くとハンマリングでは充分な音量が出ない。ハンマリングの練習もアンプを通してでないとできないと感じた。
第三に、アンプの「音作り」がこれまた難しいことを知った。ギターアンプにはイコライザーのつまみがあって、好みの音質に調整することができるのだが…、どのつまみをどの程度回したらどんな音になるのか、これが全く見当付かないのだ! 「何か音が籠もってるな〜」と「Middle」を下げてみたら、ますます音が籠もってしまった。実際は中音域が出ていないことが、「籠もって聴こえる」という音質につながっていたのだろう。この辺りは経験が必要になりそうだ。
それと関連して、1つ発見もあった。今回持って行ったギター(ストラトキャスター)に関しては、その昔(25年ほど昔)、「このギター、こんなに良い音だったのか!?」と感激したことがある。そのとき使ったアンプは確かFenderの真空管アンプで、弾いた場所がまた素晴らしく、大学の小講堂のようなところ(学校の体育館の半分くらいの大空間)。ただコードを押さえてバーンと全音符を弾くだけで、驚くほど良い音が小講堂に響き渡った。「バリッ」というのだ、音が。
昨日わかったのは、おそらくこのときイコライザーのセッティングとしては低音をかなり絞っていたのだろう、ということ。低音が出ないと、ピックで弦をはじくアタック音が強調されるので、「バリッ」とした音が出る。
第五に、個人練習時にも(と言うか、個人練習だからこそ)メトロノームに合わせて弾いた方がいい、と実感した。カッティングはもちろん、そうでないフレーズでも、メトロノームに合わせて弾いてみると急に難しくなる。普段はそれだけリズムに乗っていない演奏をしている、ということだ。
第六に、練習は本番(人前でのライブ演奏)通りにしなければならない、とも感じた。例えば、僕は自宅ではベルトの必要ない部屋着を着ていることが多い。昨日はGパンを穿いていたのでベルトをしていた。ただそれだけの違いなのに、ベルトのバックルがギターのボディ裏にガチガチ当たるのが気になるのである! また、普段は室内だから当然靴は履いていない。昨日はスニーカーを履いているだけで様子が違うのが気になり、途中で靴を脱いでしまった。椅子や床に座って弾くのもダメだ。「自宅でも立って弾く」のは当然である。上手く弾けなくて「座って弾けば、もっと上手く弾けるのに!」なんて思ったが、すぐにこの言い訳の無意味さに気付き、苦笑するしかなかった。
そして最後に…、今回強烈に感じたのは、わざわざ練習スタジオに出向いて大きなアンプにギターをつないで練習するのだとしても、ただ漫然と弾いているだけでは上達しない、という予感だ。「今日はこれに取り組む」と課題を明確にしてから行った方がいい。そうしないと、ただ時間が流れていくだけなのだ。課題を決めて1週間自宅で練習をし、その成果をスタジオに確かめに行く、くらいのツモリでないと…、上手くならないのではないか、と感じた。
今回スタジオに持って行ったギターはシングルコイルPU搭載のギター(勿体振った言い方をしているが、実はFender USAのストラトである。自分でも「宝の持ち腐れ」だとわかっているのであまり言いたくない(涙))なので、クリーントーンを中心に試した。クランチ系のセッティングも少し試してみたが、マーシャル伝統のディストーションサウンドはほとんど試してみなかった。
その中で最後の最後に気持ち良かったのは、クリーントーンでの単音カッティング。実は7月にギターの練習を久し振りに再開するキッカケになったのが単音カッティングで、全くできなかったのが5日ほどで少しできそうな気配が感じられたのが、その後夢中になって練習を続ける原動力になっていた。
最近は単音カッティング自体の練習はあまりしていなかったのだが、予約していた1時間が終わる直前にちょっとやってみたところ…、(たまたまアンプのセッティングと合っていたのだろうが)実に気持ちの良い音が出た。課題は明らかで、ミュートが不完全で本来はミュートすべき「出したくない音」が鳴りまくっていること、ピッキングの安定度もまだまだで、弦に当たるピックの角度によって音が変わってしまうこと、メトロノームの一定のリズムに乗った上でのノリのある演奏にはまるでなっていないこと…。
まるでできていないことだらけで10分で嫌になってしまったことは上にも書いたが、それと同時に、これだけハッキリと自分の下手さ加減を直視せざるを得ない状況で練習を続ければ、確実に上手くなるハズだ、との感触も得た。せっかくスタジオの会員にもなったし、地道に個人練習を続けよう。

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