『自分はバカかもしれないと思ったときに読む本』
竹内 薫(著)
2015年
河出書房新社
★★☆☆☆
「河出文庫」の「た36-1」。2013年に同じ出版社から「14歳の世渡り術」シリーズ中の1冊として刊行された単行本を文庫化した本。待合室で読む軽い本、という印象。
全4章構成。前半の1・2章は「『自分はバカかもしれない』と自信をなくすこともあるかもしれないが、実際には世の中の方がバカであることも多い」というような話。後半の3・4章は「『自分はバカかもしれない』と思ったら、具体的にどうやって自分を高めていくか」という処方箋。
まるで講演会のような、読者に直接語りかけるような文章(実際、中学生を相手にした講演の内容を文字起こししたものなのかもしれない、と感じた)。薄い文庫本で、ものの数時間で読み終わる。それはいいんだけど…、ちょっと内容が薄いんじゃないかなぁ? 講演会なら話の流れが大事なんだろうけど、書籍にするなら全体の構成や章立てにもう一工夫欲しい。
「自分には才能がない」とクヨクヨ思い悩んだり、逆に「どうせダメだから」と開き直ってそこに甘んじることくらい馬鹿バカしいことはない、という話。悩んだところでバカから脱却できるワケではないし、諦めてしまったらそれで終わり。結局、自分なりの方法で自分を磨き続けていくしかないのだ。
マラソンみたいなものなんだよなぁ。前に進んでいれば完走できる可能性がある。歩みを止めれば完走できないことは明らか。で、どうすんの? 完走したいの? 諦めるの? 完走したいんだったら、遅い歩みでも前に進み続けなよ。そういう話。どんなに遅くても、立ち止まってしまうよりはマシ。最終的に完走できないかもしれないけれど、前に進み続ける限り残り距離は確実に減っていくのだ。それに実際は「完走出来るか、出来ないか」ではなくて、「どうやって完走するか」を考えることの方が大事なんだよね。「完走出来ないかも…」と悩んだところで完走にはつながらない。「完走するために、今、何が出来るか」でしょ。
でも、複雑な気持ちにもなるんだよな。歩みを止めてしまうのには、それなりの理由がある。やったけど出来なかったのだ。「これはもう絶対に無理だ」と絶望し、本当に「諦めるしかなかった」のだ。それを「それこそバカだ」と言われてもね…。でもまぁ、著者の言う通り、それこそ、視野が狭いか、頭が固いか、なんだろうな。
こういうタイトルの本を買うのってレジでちょっと恥ずかしいじゃないですか。でも今回は売り場で見かけてつい買っちゃいました。で、読んでみて…、正直僕には響きませんでした。何と言うか、救われなかったんでしょうね、僕は。文庫化されたこともあり、著者は大人の読者にも読まれることを期待しているようだけど、僕はもう年を取り過ぎたか、頭がコリ固まってしまっているのかな…。
唯一「目から鱗」だったのは、「バカにはたいてい目標がない」という指摘。考えてみると、僕はいまだかつて「目標」というものを掲げたことがない。
「世の中で成功している人を見ると、必ずといっていいほど、目標設定がしっかりしています。いっぽう、人生があまりうまくいってない人を見ると、だいたい目標が、ない。けれども、不満は多い。『うまくいかない』って、しょっちゅう嘆いている。ぼくはそういう人にいってやりたい。うまくいかない理由は第一に、あなたが目標を設定してないからですよ、と。」(164ページ)
確かに「100kmマラソン、完走出来たらいいな♪」では完走できない(笑)。100km完走というゴールを小さなステップに分解し、1つ1つ確実にクリアしていく、というようなツモリじゃないと…。
「できる人は、ひとつの物事をああでもないこうでもないと、いろんな角度から眺めてみて、おもしろい面、ポジティブな面を発見することができる。」(187ページ)
「ぼくもいろいろな人を見てきましたが、できる人は、『つまらない』という状態に陥らないですね。どんな仕事にもそれなりのおもしろさというのを見出す。そういうふうに見える角度を探し出すんです。
ダメな人は逆ですね。その仕事のネガティブな面ばっかりに注目するんですよ。」(186ページ)
僕にも「面白がり精神」はそれなりに備わっているとは思うんだけど、人生全般を「楽しむ」気持ちが足りないという自覚はある。ここら辺りがポイントなのかなぁ…。
本文180ページ程度。
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Kota's Book Review

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