『DVDでよくわかる ブルース・ギターの常套句200』
安東 滋(著)
2015年
リットーミュージック
★★★☆☆
「リットーミュージック・ムック」中の1冊。1997年に発売されたエレキギター教則ビデオ(VHS版)が、DVD版、オンライン配信版を経て、ムック化されたもの(動画と譜面は2001年発売のDVD版と同一、とのこと)。約1時間分の動画が収録されたDVDビデオが1枚付属する(と言うか、この商品のコンセプトから考えたら、「DVDに譜面を載せたムックが付属している」と表現した方が正確なのかもしれない)。ムックのサイズはA4変形判で譜面も大きく見易い。かつてのVHS版とDVD版に付属の譜面は小さくて見難かったようだ。
タイトルから、王道エレクトリックブルースの「どこかで聴いたことがある」ようなギターフレーズをただひたすら200例弾き続けるような内容かと思っていたが、少し違った。主にキーがEとAのブルース進行の曲を題材に、バッキング例とギターソロ例をそれぞれ2コーラスずつ14通りのスタイルで紹介している(各スタイル、動画の長さは1分程度で、譜面としては2〜3ページ程度)。「どブルース」というより「ブルースロック」色の方が強いかな、という印象。難易度はエレキギター初級〜中級といったところか。
DVDビデオの内訳は、バッキング例14通り(約15分)、ギターソロ例14通り(約15分)、練習用カラオケ14通り(約15分)、著者のブルーストリオによるデモ演奏3曲(約15分)。デモ演奏に関しては譜面は掲載されていない。カラオケとデモ演奏はオマケと考えると、実質的には、解説抜きで行われる約30分間の実演動画に、対応する楽譜を付けた、という商品。
オリジナルの教則ビデオ(教則「本」ではない)は、常套句として用いられるよくあるバッキング例やギターソロ例を次々と「演奏して見せる」というコンセプトだったようだ。動画でもムックの紙面でも、演奏上のテクニックや注意点についての解説は何もない(ムックの内容はほぼ譜面のみ)。動画は1997年(20年前!)にVHSビデオ製品のために撮影されたものなので、現在(2017年)の感覚からすれば、動画の鮮明さや画面構成、音声の品質は見劣りする。また、アドリブで弾いてるのかな?と思うような箇所がいくつもあり、フレーズ中のミストーンやリズムの乱れなど気になる点もある。
おそらくその辺りの不満を全て解消したものが、同じ著者による『39歳からの本格ブルース・ギター』(2015年 リットーミュージック)なのだろうと思う。こちらには動画はなく音声を収録したCDが1枚付属するのみだが、10通りのスタイルのバッキング例とギターソロ例だけでなく、フレーズのバリエーションも多数紹介されており、解説の文章も充実している。更に紙面にはブルース親爺のウンチクが満載(笑)。おまけに価格も僅かに安い。そして何よりも! ギターの音がずっと良い! 逆に盛りだくさん過ぎて消化できないくらいなので、そういう人は本作『ブルース・ギターの常套句200』から始めてみると良いかもしれない(2冊を併読するのも良いだろう)。本作がもの足りないという人にはもちろん『39歳からの本格ブルース・ギター』をオススメする。
本文75ページ程度。
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Kota's Book Review

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