『テクニカル分析入門――株の売り時、買い時を知る――』
田中 勝博(著)
2005年
日本経済新聞社
★★★☆☆
日経文庫の1045。株式市場の相場の動きを予測する「テクニカル分析」について易しく解説している入門書。サブタイトルは「株の売り時、買い時を知る」。
これまで日経文庫の本には「難しそう」「敷居が高い」といったイメージを抱いていたのだが、少なくとも本書に限って言えば、そんなイメージは的外れだった。全くの初心者に向けてテクニカル分析の様々な手法を紹介し、どのような目的でどのような手法を用いるべきか、注意点を交えながら易しく解説してくれている。
内容的には、テクニカル分析の使いどころ(投資のタイミングを計る)について述べた後(第1章)、「上昇か下落かを読む手法(トレンド分析)」として、移動平均線、チャネルシステム(エンベロープ)、ボリンジャー・バンド、ピボット(フィルター・ルール)、パラボリックを取り上げ(第2章)、「割安か割高かを読む手法(サイクル分析)」として、方向性指数(DMI)、サイコロジカルライン、%Rオシレーター、相対力指数(RSI)、ストキャスティクスを解説している(第3章)。次いで、「人気度を読む手法(需給分析)」として、出来高分析、売買代金分析、価格帯別出来高分析、OBV、累積出来高分析、逆ウォッチ曲線、騰落レシオ、ボラティリティ(本当はこれはテクニカル分析には含まれない)を紹介し(第4章)、最後に「過去のパターンから将来を予想する手法」として、ロウソク足、トレンド分析(エリオット波動分析、フィボナッチ級数、トレンド・パターン)、マーケット・プロファイル、ポイント・アンド・フィギュア(P&F)について解説している(第5章)。手法の紹介ではないが、第6章(最終章)「システム売買と投資家心理」では、感情を交えず機械的に売買(特に損切り)を行うことの重要性について述べている。
本書では、単に手法を解説するだけでなく、「『ファンダメンタルズ分析』によって投資対象を絞り込み、『テクニカル分析』によって投資のタイミングを計る」「取引の原則は『トレンド』に乗ること」「相場の大きな流れである『トレンド』と、トレンドを構成する周期的で小さな上下動である『サイクル』を分けて考えるべき」「配当を期待する『投資』と、キャピタルゲインを狙う『投機』では、儲けを出すために採るべき戦略が異なる」といった、株式投資における基本的な考え方が随所で述べられている。これについては、各手法の使い方を理解するためには必要な記述だと思うが、冗長に感じる読者もいることだろう。また、第6章の章タイトルの一部となっている「システム売買」とは、「ソフトウエアによる自動売買システム」のことではなく、「テクニカル分析によって与えられたシグナル通りに機械的に売買を行う」というような意味合いで用いられているだけなので、「自動売買システム」についての情報を求めている読者はやや注意が必要かと思う。
個人的には、FXでのチャート分析に応用するつもりで読んだ。各手法の特徴や使い方についてだいたいのところを理解することはできたと思うが、それらを本当の武器として使いこなすためには、最適なパラメーターを自分で見つけ出す(例えば、移動平均線1つとっても、何個のデータの平均をとることにするか)等の試行錯誤が必要だと思う。
本文160ページ程度。
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Kota's Book Review
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Terai, S. Web Page

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