『マンガでわかる人工知能』
三宅 陽一郎(監修)
備前 やすのり(マンガ)
2018年
池田書店
★★★☆☆
一切の事前知識を前提としない「マンガでわからせる人工知能入門」。小学校の高学年から年配の読者まで広く対象とした一般向けの本。
全6章構成。(人工)知能の定義、人工知能研究の歴史、機械学習、ディープラーニング、人工知能がもたらす社会の変化、人工知能とともに生きる未来、といった内容。全体の分量は200ページ程度で、マンガ部分が70ページ程度、イラストが70ページ程度、文章だけのページは残りの60ページ程度。マンガで描かれた内容を改めて文章で解説していくスタイルなので、イザ!となればマンガだけ読んでも内容を理解できるようになっている。
「はじめに」に「人間の知的作業は『人工知能に解かせる問題領域をはっきりと決めて、人工知能に作業を任せる』という仕事に重点が移ることになります。」「まずは本書を『人工知能に何をさせたらいいのかな?』という軽い気持ちで読んでください。」とある。まさにそういう内容の本で、「人工知能に仕事を奪われる!」というような不安に駆られている読者の不安解消を意図しているようだ。
人工知能の技術的側面については人工知能研究の歴史に沿って説明されており、第1次ブーム、第2次ブーム、(現在の)第3次ブームの流れもつかめるようになっている。人工知能の技術が社会の隅々にまで組み込まれていく将来像については…、正直「良いこと」ばかり書いている、という印象。工学系の人って基本的に「技術の進歩=善」という発想だし、「問題が起きたらその時に対処すればよい」って感じだからなぁ。工学系の人に「社会」を語らせると大抵こうなる(笑)。
最後の方を読んでいて考えていたことは、「これからは、人のすることは相談や交渉、広い意味での『政治』になっていくのかな…?」といったこと。僕は「不合理な決め事を取り決めていく」ということが「政治」だと思っているところがあるんだけど、そういうことに人が専念することになるのか。もっともそれも(人工知能による)「代理エージェント」に仲介・サポートして貰うかたちになるんだろうか?
奥付けに「執筆協力:三津村直貴」とある。実際の文章はこの人が書いたということなのだろうか。監修者が三宅氏であることもあり、コンピューターゲーム中での人工知能の活用のような、ゲームクリエイター寄りの視点から語られている箇所もところどころにあり面白い。
ところで、「リケ女」のイメージって、やっぱりメガネと(自宅でも)白衣着てることなんですね…(表紙のイラストでは着てませんが)。そもそも人工知能の研究者は白衣着ないんじゃないかと思うけど…?
本文200ページ程度。
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Kota's Book Review

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