オーディオのシステム・アップを図ると、よく聴く愛聴盤程に聴こえなかった新しい音の発見があり、嬉しく思う事がある。
昨年、楽音舎のシステムにパワー・アンプという新たなる増幅機能を導入してみた訳だが、これが良い結果に繋がったようで、音楽と僕との距離がより一気に縮まり、より愉しく日々のお勤めを送れるようになった。
低音の鳴りがスコーンと抜けるようになるまでは、やや時間がかかったが、TANNOY独自の同軸ツィーターの響きは割とすぐにきらびやかな響きに変わり、人の声などはより真っ直ぐに、近くに、生ギターはゴン!と弾けば堅く鳴り、優しく爪弾けば穏やかに響き心地よい。
ビートルズのホワイト・アルバムの「I WILL〜JULIA」の生ギター作品の連なるB面の流れなどは特に魅力的で、すぐそこでジョンやポールが優しく歌ってくれている程に1968年が近くにあり、オーディオというものは、お布施をすればするほどに、ミュージシャンや時代との距離を短くしてくれる素晴らしいタイム・マシンなのだということを痛感せずにはいられない。当然ながら38年分、音楽が近く感じる分だけの新しい発見もある.(今は20年分くらいにしておいた方がよいかな?)。
「I WILL」のその辺の木箱でもポコポコ叩いているような鳴り物の響きを以前より心地よく感じながらも、右スピーカーから聴こえてくる「シャッシャッシャッ」とリズムを刻むブラシのような音が、実は生ギターをミュートしながらカッティングをして作られた音だという事を発見した.明らかに空ピックのような弦の響きがあった。そしてこの曲に各種鳴り物を多重録音しながらも、思わず口ずさんでしまったかのようなポールの口笛を確認出来るのは、曲のエンディングの一歩手前辺りの所にある。が、ご存知だった方はごめんなさい。この発見は音源となっているドイツ盤のカッティングが素晴らしいということも勿論あるのではあるが、皆様がお手持ちのホワイト・アルバムにも個々の持ち物の差はあれど、必ずや刻み込まれている音なのである。
是非、大音量でお楽しみあれ。
今年はもう少しすると、レコード・プレイヤーとアンプを中継する少圧トランスを増強する予定。
アンプ(LUXMAN-L−506F)自体に使われているフォの・イコライザーよりも相性が良ければ良い結果が出るはずである。アナログ・レコードはお布施をすればするほどより願いをかなえてくれる賜物ではあるが、その時にまた、ホワイト・アルバムがどんな風に聴こえてくるか、ちょっと楽しみでちょっぴり怖くもある。だが新鮮な空気を送り込んでくれるのであれば、これからもオーディオ地獄巡りは出来る範囲で続けていきたいものである。
物欲とは別に動機が正しいから僕は正しい煩悩の持ち主なのである。


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