音楽を聴く楽しみというのは新たなる覚醒みたいなもんです。
だから知らなかったものであればそれが何年前のものでも構わないというのが僕のテーマです。
今年最初の感動は「ALNALDO BAPTISTA/LET IT BED(写真)」の2004年の作品。売ってくれた方、ありがとう。
聴いたとたんにイメージしたのは時計が反対に回っていく感覚。
丑年の今年らしく「んも〜」牛の声からこのアルバムは始まります。
その牛に絡んでくるのは鳥のさえずり、川のせせらぎ。
「面白いや〜」
と思い聴いていると一定のパターンで回っているこのイントロ。
自然界にいる穏やかな幸せに身をゆだね、なんともポカポカな気持ちになっていると聴こえてくるのは・・・近所の娘さんがピアノを練習しているよ・・・全く上達しないなあ、あの娘・・・そんな風景が頭をよぎり、気がつくとヘロヘロな歌が重なってくる。ナニを唄っているんだろう?勝手に妄想を働かせる・・・いや、違う・・・いつの間にイメージさせてもらっている。音の構築にぴったり自分の身も重なった。幸せだ。てな感じで聴いている僕でさえいつの間にかこのアルバムの主人公になり、初めて聴いているのに一緒に歌を唄うというより口ずさんでいるような、そんな幻惑を覚えた作品です。
初めてムタンチス(mutantes)なるグループを聴いたのはもう10年以上前ですが、その時から今も思うことは「こいつらがもし英語圏内のグループだったらピンク・フロイドくらいにはなっていたかな?」ということです。彼らの登場はサイケ文化とかさなる1966年。ブラジルが軍事政権下で表現が制限されていた頃のバンドです。今回、アルナルド・バチスタのソロを聴いて、あらためて、ありがとうといいたい。ムタンチスをず〜っと追っていたわけではないのに、ここにあんたの作品があって、僕のつぼを押してくれて、ありがと〜。これを機に、あんたの作品を追っていくことを楽しみにしていくよ。
それにしても、本当に天才だなと思わせるのはなんとでも自由に聴きたまえという作りになっているところだ。
2004年のサイケデリックと言っても構わない。シド・バレット・ファンは真っ青だろう。ブラジルのアンビエントと言ってもおかしくない。ブライアン・イーノ・ファンはごめんなさいするだろう。
なのにどこかにブラジル音楽のルーツもあって、曲そのものの健全なクオリティーの高さが光っている。
そこに散らばっている数々の効果音はあてずっぽに作った偶然の産物のように聴こえるかもしれないが、僕には散らかったおもちゃを箱の中に少しずつ整理整頓していく作業のように聴こえている。その中のいくつかは多分壊れているゼンマイ仕掛けのクルマだったり人形だったり・・・そして今は西暦なんねんなんなんだと、あ〜名盤だ。
音故知新・・・古いものを聴いて新しいものを知る

0