お客さんがレコード、CDの棚を漁る仕草でその人がどれくらい音楽が好きか、本気のお買い物モードかがすぐわかる。
今日の開店おひとり目のお客さんはアメリカ人男性で日本語が出来る方。
一枚一枚見逃さずにレコード棚を後から前方向に見ている。
時折手が止まり、
「OH!」
と声がもれるのを見ているとこちらも凄く嬉しくなる。
楽しくしている客がいるとこちらにも伝染する。
その間もうひとかた入ってきたお客さん。
これまた見ない顔の方だったがまずは立ち止まって壁を見て、しゃがんで映画のサントラ・コーナー、そしてロック、ポップス全般を実に丁寧に、しかもすばやく手馴れた手つきで見てくれている。
棚のキツイ所は数枚抜いて、そして手前から後方向に見ていくのが彼には楽なスタイルのようだ。
着ているT−シャツもいかしている。
僕には馴染み深いそのロゴのデザイン。
音楽が好きでタマラナイ人に決まっている。
後でどこで買ったシャツなのか教えてもらおっと。
おふたりとも目を離していても安心なお客さんなのがわかったところで、僕はトイレで用を済まし、手を洗っていると
「すいません。このラトルズのシングル見せてください」
と、T−シャツの若者に声をかけられた。
その時、アメリカ人男性が僕より早く反応した。
「わーはっはっはっは、ちょっと見せて。わーはっはっは!」
その様子を見ているT−シャツの若者も幸せそう。
どの辺が笑いのツボなのかは兎も角、可笑しいって幸せだ。
アメリカ人男性「あ〜、ありがとうございます。ごめんなさい、邪魔して〜。わーはっはっは!」
T−シャツの彼、笑顔で「いいえ〜モンティ・パイソンいいですよねえ・・・」
そして「じゃ、これいただきます」
オールディーズ系、サントラに混ざって邦楽の面白系シングルも数枚。
守備範囲の広い人だな〜と関心しつつ、僕は
「あの、そのT−シャツ。どこで買ったんですか?僕、ジョナサン・リッチマン大好きなんですよ」
と尋ねると、東京のレコード屋で買ったと教えてくれた。
その後、彼が「僕、もうひとりジョナサンで気になる人がいて・・・」
と言い、ジョナサン・キングの曲のワン・フレーズを歌いだし、「この曲しらない?」とニコっと微笑んだ。
どっかで聴いた声だな〜と思ったら、甲本ヒロトさんだった。
「今日は野外でライヴなんですけど、雨が降ってきちゃいましたね〜」
「あ〜、この傘使ってください。返さなくてもいいですから」
「うん、大丈夫!また来ます!」
そう言って甲本さんの方から握手をしてくれ
「どうもありがとう!」
と言い、お帰りになられた。
一発で人間的にファンになった。

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