受験参考書ではないが、筆者の琴線に触れた本につき特別に詳解、いや紹介
「算数・数学まるごと入門」(聖文新社)
算数を通じて数学的考え方の基本を解説しようとする意欲作。いわゆる受験参考書とは違い、むしろ最近はやりの「復習本」に似たスタイルだが、内容はかなり本格的。数と式・図形・場合の数・論理といった、低学年の生徒さんから取り組める分野を主に扱っている。内容はそれぞれの節で完結しており、1つの節の最初に中学入試問題、続いて大学入試問題を扱うという構成なので、未習内容を含む節はとばして読むことも可能。
聖文新社という出版社を知らない人も多いと思うが、その年ごとに出題された大学入試問題を集めた「(年度版)全国大学数学入試問題詳解」という、いわゆる電話帳(第1集〜3集プラス医歯薬の計4冊)を出しているところで、この「まるごと入門」の著者はその執筆者の1人である。
読者層として思いつくのは、やはり中高一貫校の中学生(とくに2〜3年生)で、算数は得意だったのに数学になってつまずいてしまった生徒さん。目標である大学入試の姿が見えてこないこの時期、授業についていけないとどうすればいいか悩みがちだが、そういう時期にこそ、自分が学んだことをふりかえり、自信を取り戻して欲しいからである。未習の内容も出てくるが、この本のメインは問題を解くことでなく、その裏にある数学的な背景や考え方に触れることなので、そこは意欲で読み進めていって欲しい。個人的にもそういう生徒さん向けのネタ本を探していたところだったので、当レビューのコンセプトからしばし離れて読みふけってしまった。
あと、別の意味でぜひ読んでもらいたいのは、中学入試を経験していない「自称難関大志望者」の皆さん。理由はもちろん、小学生のときからこういう問題を解いて中学に入ってくる生徒さんと争うのだということを少しでも自覚して欲しいから。