講習会も今回が最後。一部予定外の事情もあったりして、息切れしそうになりましたが、何とかここまで来たって感じですね。今回のテーマは「累乗」です。
「累乗」という言葉、指数(かける回数)を右上に小さく書くことまで、今年の生徒さんは本当によく知っています。もちろん小学校の教科書には出てきませんが、累乗を扱った問題は中学入試でもよく出題されているので、塾の授業などで聞いて知っているのでしょう。
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【問】
2を2007回かけた数の1の位の数字は何になるでしょうか。
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このような問題は本当によく見かけますし、勤務校でも小問としてたまに出しています。生徒さんの反応を見たくて授業の最初にも少しやってもらったのですが、筆算の仕組みから1の位だけに注目してまず周期を見つける・・・と考えるまでもなく、なかば反射的に
$ 2×2=4,4×2=8,8×2=16(6),16×2=32(2),・・・
$ 2007÷4=501あまり3 ※2000は4で割り切れるから7÷4でも同じ
という計算をして、ほとんどの生徒さんが「8」という答えを出していました。本当に、塾でそういうトレーニングをしてきたかどうかの確認ぐらいにしかなりません。予想はしていたものの、少々複雑な気分です。
誤解のないように言っておくと、これからの学習において大事なのは、皆さんがこの問題自体を解けるかどうかでなくて、まがりなりにも「累乗」という概念を知る必要性を感じ、勉強してきてくれたということだと思います。中学・高校では、1の位の数字だけでなく、その大きさについても扱うことになります。
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【問】
1枚の紙を折って2枚重ねて「1回」、2枚重ねになった紙を折って4枚重ねにして「2回」、4枚を8枚にして「3回」・・・というふうに何回も紙を折ります。計算上、何回ぐらい折ったら富士山の高さよりも厚く(?)なると思いますか。
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ノーヒントで生徒さんにたずねてみると、案の定「3000回」「1万回」のようにとてつもなく大きい回数を口にしますが、しばらくいろいろと推測してもらいながら、問題を整理していきます。
たとえば、「1枚の紙の厚さはいくらで考えるのか」ということがあります。数値が与えられないと出来ないという生徒さんもいたのですが、そこで考えをやめてしまうのは良くないと諭しました。今回は、自分の身のまわりにある物を使って測ってほしかったので、あえて言わなかったのです。
定規を持ってきていた生徒さんは何人かいましたが、普通に使われている定規の目盛りは1ミリ刻みなので、工夫が必要になります。手持ちのノート(30枚重ね)の厚さから求められるという意見が出ました。他に、たとえば5回折って32枚重ねぐらいにして、その厚さを測ってもよいでしょうね。一応、私の用意していた「答え」も紹介しました。ホームセンターなどでよく売っているコピー用紙の束が500枚で約5センチの厚さであることから、5センチ÷500=0.1ミリ(0.0001メートル)と分かります。
ということで、問題は、0.1ミリに2を何回かけたら3776メートルより大きくなるかという計算をすればよいことになり、事前に表計算ソフトで計算した結果(→
http://green.ap.teacup.com/reviewermizuno/html/fujisan.pdf)から
*** 26回
となりました(ちなみに27回折ればチョモランマより高くなる)。言われたら納得するのですが、どうしても「富士山」という先入観があるためにこの程度の回数でいけるんだという考えにはたどり着けないようです。
でも、別にコンピュータの力を借りなくても、20と30の間ぐらいの回数だということは計算できます。2^10(2の10乗)=1024ぐらいまでは手計算でも出来ますよね。特にこの1024という数を知っておくと便利なので、覚えておいて損はありません。つまりは、
*** 2を10回かけるごとに約1000倍になる
ということです。最初の厚さが0.1ミリ(0.0001メートル)でしたから、10回折ると10センチ(0.1メートル)、さらに10回折るとその1000倍で100メートルになります。もう10回折ると100キロ(10の5乗メートル)ですから、富士山の高さどころかもはや「宇宙」と言ってよい高さになってしまいます。
そこで、20回(100メートル)に戻り、今度は手計算で次々に2倍していくと、2の5乗倍で約3200メートル、6乗倍で約6400メートル。よって、26回目で富士山の高さをこえるだろういうことが推測できます。
確かこのネタ、かなり前になりますがテレビでもやっていましたね。
普通の大きさの紙でやっても10回折れるかどうかなので、大きい紙を何枚もつなぎあわせて折ろうということになります。そこで、グランドいっぱいの大きさの紙が作られました。1回目、2回目の折りはそれこそ人海戦術で、それを繰り返すうちに紙というより布団みたいな形になります。最後にはとうとうショベルカーみたいな車まで登場して、上から紙を押さえるという大仕事になりますが、それでもまだ20回も折れず、ギブアップです。
まあ、紙が折れるかどうかならお笑いのネタぐらいにしかなりませんが、もっと切実でこわいのは
*** 借金
です。利息計算に必要な知識を皆さんが学ぶ中学・高校の数学の区分では、高校の「数学B」で学ぶ「等比数列とその和」「帰納的定義(漸化式)」が当てはまるのですが、それに関係なく社会生活では大事なことですし、皆さんが思っている「累乗」に対するイメージ以上に急激に増えていくという性質があるので、高校では別途「数学基礎」という科目が設けられて、そこでも扱われています。
・・・それでは、最後にクイズです。
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【問】
2^10=1024のような累乗の計算の際、次の「指数法則」が役立ちます。
$ (a^m)×(a^n)=a^(m+n)
$ (a^m)^n=a^(m×n)
$ ※「^」は累乗を表す
指数の部分が0より1小さい数「−1」や0より2小さい数「−2」になったとき、累乗をどう決めたら指数法則にしたがうか考えなさい。
また、「√2」は2の何乗と考えたら都合がよいか、同じように考えてみなさい。
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