最近、ある受験生の保護者のかたから、「今受けている学校の授業で、受験に対応できるか心配だ」というお悩みが寄せられました。筆者も同じ仕事に関わる者として他人ごとではないので、少し時間をかけて考えさせていただきたいとお返事しました。
筆者は、いわゆる進学校の授業の進め方はおおよそ下の4つに大別できると思っています。
$ 1)一般の学校と同程度の進み方だが、応用・発展を多く扱う。
$ 2)教科書の基本事項程度しか扱わないが、進度が速い。
$ 3)1と2の中間で、一定レベルの内容でそれなりに速く進む。
$ 4)教科書からまったく離れた授業(学校・指導者オリジナル)
さらに大事なのが、それに対して自分(生徒さん)はどうしたいのかということです。授業ついていけないので足りない知識を補うのか、逆に上のレベルを目指すために何かを上乗せするのか。この2つはあくまで学校の授業についていく方法ですが、授業をある程度無視して自学自習を中心にしてもかまいません。・・・このように、さまざまな場合がありますから、個々人に合った学習アドバイスをと考えると、それこそ千差万別になってしまいます。だから「受験情報」も世の中に溢れるのでしょうが・・・。
ご質問をいただいた保護者さんの場合を考えれば、学校の授業の進み方は1に近いようです。反して、保護者さんご自身は3のような指導法を思い描いておられるため、学校の授業が「あっちへ行ったりこっちへ行ったりしている」という印象になってしまうようです。学校の授業の進め方が信頼できなくなってしまうと、たとえばOBによるおすすめの参考書の紹介など学校が提供する「受験情報」までが薄っぺらいものに見えてしまうようです。
いろいろなご質問の内容を踏まえ、数学に関して言うなら、高1か高2が終わった時点で既習範囲のセンターレベルの問題にある程度メドがつけば大丈夫だと思っています。「ある程度メドがつく」というのは、具体的には時間を度外視すれば受験者平均程度は取れて、解けなかった問題も一般的な対策本の解説を読めば何とか納得できるというレベルです。
# 関連記事「苦手分野はまずセンターレベルまで」
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http://green.ap.teacup.com/reviewermizuno/334.html
学校では授業が終わったことになっているが内容が定着しているかどうか心配だと思ったら、「基本事項に詳しいが、センターの過去問にも触れられる」という内容の対策本がいろいろと出ていますから、これらを使って早めに知識の整理を始めてください。学校指定の参考書がレベル的に合わない場合も、今は市販で良い導入書(「再導入書」を含む)がありますから、探せばきっと皆さんに合ったものが見つかるはずです。
前後しましたが、前述の1(進度は速くないが応用・発展が多い)以外のタイプの授業への対処法について、筆者なりの考えを述べておきます。
2(内容は易しいが進度が速い)と3(1と2の中間)に対してはほぼ同じで、
$「苦手な人は授業中に習った基本だけでも確実にする」
$「得意な人は学校で使っている教材の残りの問題に挑戦する」
というふうに、授業中心に考えるのが基本と思います。
とくに2の場合、「スパイラル学習」といって、上の学年に上がったときに、今までに習った内容が少し難しくなって出てくることが多いと思います。このとき、基本事項の繰り返しも多少はあるでしょうが、たいていは「演習授業」といって、内容自体も進度(1コマで扱われる問題数)も少し速くなるのが普通。つまりは、生徒さんに対する要求も同時に高くなっていくということです。
授業を受けるだけの段階では「わかった」と思っていた人も実際にやってみると案外出来ない、なんてことがあります。宿題にしっかり取り組むことはもちろんですが、ただやるだけでなく、それを通じて自分の力を見極め、余力の範囲で自分のための学習を心がけて欲しいと思います。そして、早い段階できちんとした学習習慣をつけ、次以降が単なる2度手間の学習にならないようにしましょう。
最後に、最も困るのが4(教科書を逸脱する)です。実はこのタイプは1と似ていて、肌に合わなければトコトンいやになってしまうことが多いので、何かしたければ基本的に自学自習が中心になります。
授業に関しては、どうしても「しのぐ」方針になります。無視しようにも定期考査など「しばり」がありますから、とりあえず授業ノートの内容を覚える程度はすべきでしょうが、内容に関しては、受験一辺倒・効率一辺倒で考えず、とりあえずは前向きに考えるようつとめて欲しいです。雑学的内容、単なる余談としか思えない内容だって、意外なところで役に立つかも知れないからです。
そのうえで、どうしても自分でやりたいところは別に市販の教材を買って学習していくことになります。その際、授業との「二重生活」に苦労するでしょうが、とにかく「やりたい!」という強い信念を持ち、ある程度の期間、我慢して取り組みましょう。
