言葉を尽くした丁寧な導入が特徴的な分野別の教科書型導入書
「佐藤の数学教科書」2次関数編/他(東進ブックス)
【評価】※1〜10の10段階
一貫校の中学生などの先取り学習:7
苦手対策にたっぷり時間がかけられる人:7
数学T・Aのセンターレベルより上の内容:4
数学U・Bの教科書レベルだけを手っ取り早く押さえる:3
言葉を尽くした丁寧な語り口調で教科書事項を導入・解説しながら、最終的にセンター試験の問題、同レベルの入試問題まで扱っていて、1冊でその分野の学習がある程度完結する、導入書と演習書の両方の機能をそなえた本。「日本で一番わかりやすい」というタイトルはどうかと思うが、検定教科書を講義調にした感じで、まったくどk自学自習に適するだろう。
問題レベル的にも、たとえば2次関数なら「グラフや定義域が動く最大・最小問題」や「2次方程式の解の配置」など、入試の基礎と呼ばれるレベルの問題はひととおり扱われているし、解説面でも、とくに重要な問題については、いわゆる「解説答」(答案形式を崩し、答えの中に説明を盛り込んだもの)と通常の解答を併記したりするなど工夫もみられる。解説答は、佐藤恒雄先生が提唱されている「4つの力」に沿ったものである。
使用者として真っ先に思いつくのは一貫校の中学生の先取り用。あとは、網羅系や傍用問題集の内容がイマイチ理解できていない人。何となく例題のマネをして解答を作っているけれど意味をわからずやっている、つまり「一杯いっぱい」でやっている人は案外多いはずなので、もし心当たりがあれば、復習するのが億劫になってしまう前にこういった本を読み、授業で聞き逃したポイントや扱ってもらえなかった問題の解法なども頭に入れ直したらよいのでは。
難を言うなら、本によって到達点(練習用に収録している問題の難易度)が違いすぎるところ。T・Aのセンター試験は総じて易しくU・Bのそれは難しいからそれに合わせたと解釈できないこともないが、先行5冊のウケがイマイチだったので他の導入書との差別化をはかるために途中から到達点を高くしたのではと疑ってしまう。諸事情あるだろうが、シリーズの統一感に欠けると使いづらい印象を与えてしまうだろうし、薦めにくい。
【基礎知識】
詳しく丁寧かつ基本に忠実な導入・演習書。「2次関数編」「三角比・平面図形編」等の分野別になっていて、1冊で通常の検定教科書1冊よりも分厚い。センター試験作問経験者でもある著者の佐藤恒雄先生の著書で、特に導入部分は言葉を尽くして書かれている。
収録問題では主にセンターで問われる入試の基礎と呼ばれるレベルまでひととおりのパターンも網羅している。昨今のセンター試験の出題レベルを意識してか、先行して出た数学T・Aの各分野を扱った本は全体に平易であるのに対し、後発の数学U・B分野のそれは全体に導入より例題の解説に重点が移っている。
【リンク】
$ 2次関数編、三角比・平面図形編、数と式編、個数の処理・確率編
$ 式と証明・複素数編、図形と方程式編、三角関数編、指数・対数関数編
$ 微分編、積分編、数列編、ベクトル編
※04年11月14日「徒然レビュー」執筆記事他をもとに再構成