こちらに書く記事では「時には教科書に戻ってみよう」を参照することが多いですが(→
http://green.ap.teacup.com/reviewermizuno/674.html/
http://green.ap.teacup.com/reviewermizuno/html/kyokasho.pdf)、またまたその関連です。発展させると「小・中・高一貫 受験数学のツボ(仮称)」のネタにもなりそうですが、例によってここにアップし、皆さんのご意見等をお伺いすることにします。
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大学受験用の参考書・問題集で学習していて、不意に中学で学ぶ図形などの用語が出てきてその意味が分からず困ったり、少し前に習った定理が思い出せず詰まったりしたことはありませんか??特に図形分野に関してがそうなのですが、現課程の高校向け参考書・問題集の中には現課程の中学校の教科書で学んだ生徒さんを想定できていないものが一部にあって、それ自体けっこう根が深い問題でもあるのですが、今の生徒さんがそういう環境で学ばなければならないのもまた事実です。そこで、そういったもの(用語・事項・解説)に万が一出くわしてしまったとき何をすればよいか、そしてそこから何を学ぶべきかということについて考えてみたいと思います。
たとえば、ある生徒さんからメールでご質問をいただいた中にあったのですが「等脚台形」(平行でない1組の対辺が等しい台形)という用語はどうでしょう。筆者自身はというと、小学校時代に通っていた塾でたまたま言葉だけ教えてもらい知っていましたが、普通に習うとすればおそらく中学生、ひし形や長方形の性質が出てくる中2あたりと考えるのが妥当ですね。ところが実はこの用語、現課程の中学校の検定教科書には出てこないのです(知っていましたか?)。でも、中学生向けの教材でもいわゆる一貫校に通う生徒さん向けの教材になるとほぼ登場しますし、それゆえ予備校が実施する模試の解説などにチョロッと出てくる可能性までないとは言い切れません。また、もしその性質のいくつか(たとえば「対角線の長さが等しい」)を知らなかったとしても、「線対称な図形だから当たり前でしょ?」と言われれば納得できるレベルのもので、だからこそ見過ごされやすかったのだと思いますが・・・。
まあ、教育課程をつくる文科省の無知やそれに振り回される指導者の苦労をここでこれ以上とやかく言っても仕方ありませんから、そろそろ具体的な話をさせてください。
考えられる策は大きく分けて2つあります。
1つは、とにかく今欲しい知識だけを素早く得ること。本当はいつもこれだけというのは考えものなのですが(それは2つめのところで言います)、切羽詰まっているときはそうも言えませんからね。数学用語の意味やその周辺の事項なら、インターネットの検索エンジンを利用するのが最も早道かも知れません。
単発の用語なら、たいてい1つめか2つめに「ウィキペディア」というネット上の百科事典の項目がヒットします。問題の解き方となると、当サイトの同盟サイト「高校数学の自習室」に専用掲示板があります。ただし、こちらは回答まで時間を要します。急ぐなら、数学以外も含めた質問サイト「教えて!goo」などのサイトも活用できます。過去に似た質問があったか検索することも(一応)できます。
ただ、筆者のサイトも含め、ネットには良質な情報とそうでないものが混在していますから、その中から、本当に使えるものをどう選び出すかという課題は残ります。必要に応じて複数の情報を見比べるなどし、その良しあしに対する「嗅覚」のようなものも養っていけたら良いと思います。
$ 参考:
$ ウィキペディア「相似」の項
$ →
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9B%B8%E4%BC%BC
$「高校数学の自習室」質問掲示板(入口)
$ →
http://lykeion.info/suugaku/rule/rule.htm
$ 教えて!Goo「判別式の使用法」
$ →
http://oshiete1.goo.ne.jp/qa2313144.html
もう1つは、必要に応じて中学生向けの本にでも戻ってきちんと調べ、疑問を自力で解決してしまうこと。特に高1・高2の皆さんに対してはこれをおすすめします。
今必要なことはさておき、将来同じようなことがあったとき、どの本に何が載っているか程度でもいいから知っておくようにすれば、数学の用語に限らず今後の学習においてあなたの強みになるはずだからです。
中高で教える数学の内容が定期的に変わっていることはニュースでもよく聞きます。そこで、とくに先ほどの「等脚台形」のように、高校生向けの標準的な参考書を何冊か見ても見つかりそうにない用語に関しては、教科書内容が少々変わっても内容のブレないもの(中高一貫校で学ぶ中学生向けの本など)も含めて当たってみます。
また、載っている本をすでに持っている場合も、その本のどこにあるか調べていくときに「あること」に注意すると、知りたい事項を効率よく見つける助けになるほか、調べることを通して多くのことを学びとれます。
・・・それは「論理のつながり」です。
数学は論理の組み立てで構築されている学問といっても過言ではありませんから、何かを調べるときに論理のつながりを手がかりにするのは至極当たり前のことなのですが、筆者自身が中高生のときに、そのことを意識していた覚えがあまりないので(汗)、恥をしのんで強調することにします。
例えば今回の「等脚台形」に関しては、有名な性質として平行な2辺のそれぞれ両端の角が等しいというのがあるのですが、ほとんどの本では、それを証明するのに、補助線を1本入れたうえで平行四辺形の性質を使っています。
# 典型的な証明を以下にアップしているので参考にしてください
# →
http://green.ap.teacup.com/reviewermizuno/html/toukyaku.pdf
ですから、問題がランダムに並んだ演習書は別にして、図形の本で「等脚台形」が出てくるとしたら、たいてい平行四辺形のあと、その関連事項として出てくるのが普通であるはずなんです。他の事項も含め、最初に習ったときにどんな事項と関連して出てきたかを覚えておくと、あとで思い出す際の良い手がかりになると思います。もし、そういった手がかりなしに調べざるを得なかったにせよ、見つけた内容がなぜその場所に書いてあるか考え直してみることは探したあとにでも出来ますから、そこで少しでも考えてやれば、調べた事項そのものだけでなくその周辺に関する理解も深まって有益であると思います。
数学に限らず、学校の授業で最初に習うときは(深く理解するよりもとにかく授業についていかなくてはなりませんから)出てくる用語・事項・解法をある程度受身的に覚えていくような学習になっても仕方がないと思います。が、少しの余裕を広い視野を持って今までに学んだ内容を見直してみると、最初は見過ごしていた様々なことが分かってきます。何かを忘れてしまったとき、もしくは見慣れない用語などに出くわした時も、「早く先へ進まないと不安だ」などと言ってごまかさず
*** 逆に、その事項を深く理解するチャンスだと考えて
少し立ち止まり、きちんと調べてみてはどうでしょうか。こういった積み重ねが、自分自身のために学習する姿勢にもつながってくるはずです。
※09年1月9日配送分のメルマガの記事をもとに再構成