看護・医療技術系の短大・専門学校(以下「看護・医療系」)の入試問題というと、出題範囲も限られており難易度的にも高くない代わり、重箱の隅をつつくような、慣れていないとギョッとしてしまう問題がたまに見られる。また、総じて競争率も非常に高いため、数学では高得点を求められ、ミスは許されない。演習量も必要となり、スタートレベルが高くない受験生にとっては特に数学が悩みのタネになっていると思う。
ただ、実は看護・医療系の入試問題というのは、よく学校で教科書といっしょにもらう「傍用問題集」と呼ばれる本にそのまま載っている問題がほとんどで、ひねった問題についても多くはそこに入っている問題の類題である。だから、もし出来るなら傍用問題集そのものを隅々までやり直せば事足りる。ところが、これが意外と出来ず苦労している人が多い。主な問題点をあげてみよう。
0)
受験生のスタートレベルはまちまちである。中学から数学が苦手だった人、高校で受験レベルまで意識した数学の授業を受けていない人、あまり真面目に学習しなかった人は、必要に応じて個々のちょうど良いレベルまで戻らなくてはならない。
・・・ただし、このテーマについてここで語りだすと、本編以上に労力を要するので、申し訳ないが深入りはしない。以下、高校数学の教科書レベル程度の授業を受けた人を主対象とする。
1)
傍用問題集は(当たり前だが)学校の授業と並行して使うことを前提として編集されるいるため、自学自習には使いづらい。主な理由として・・・
−分量が多すぎる(または少なすぎる)
−入試問題としては出題されにくい、瑣末な問題も多く収録されている
−教科書のある箇所を参照しないと解法の分かりづらい問題がある
−本文中に例題などがなく、ただ問題が並んでいるだけの本もある
−解答が略解のみの本もある(または解答が別売で、かつ学校で買わなかった)
2)
傍用問題集のほとんどは市販されていないため、学校でもらわなかった人、またレベル(というより網羅性?)の低いものしか持っていない人はそもそも使えない。
−レベル的にちょうど良いと思われる代表的な本は・・・
「スタンダード」「4STEP」「サクシード」「クリアー」(数研出版)
「ニュースコープ」(東京書籍)
−レベル的にやや足りないと思われる代表的な本は・・・
「基本と演習テーマ」「3TRIAL」「反復ノート」(数研出版)
−逆に、1問が重たいなどレベル的に高すぎると思われる本は・・・
「オリジナル」「スタンダード」(数研出版)
「ニュークオリティ」(東京書籍)
そこで必要となるのが導入書である。ある程度多くの例題を扱ったものが欲しければ、初学者〜中級者向けの総合参考書(いわゆる網羅系参考書)である
○「黄チャート」(数研出版)
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http://green.ap.teacup.com/reviewermizuno/136.html
○「シグマトライ」(文英堂)
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http://green.ap.teacup.com/reviewermizuno/157.html
がおすすめ。このレベルの本はとりあえず1冊は持っておきたいので、ある程度絞り込んだら、あとは解説が読みやすいと感じたものを選ぶようにしよう。また、出来れば基本事項の導入もついている本の方がよい。これらの本でもきついという人には、導入が読みやすい「高校これでわかる数学」(文英堂)もある。「白チャート」(数研出版)も定番だが、到達点だけが低く、初学者にはそれほど親切でない印象があるので、(すでに持っている人にまで「替えろ」とは言わないが)筆者としては薦めない。
もう1つの選択肢として存在するのが、予備校講師などが執筆している導入書である。話し言葉をうまく使って書かれているもの(いわゆる講義調参考書)も多く、どうしても文章が長くなるため、そういうものは分野別編集になっている。最近になって、しっかり書かれているものが増え、定番と呼ばれるシリーズもいくつかできた。このジャンルの定番は、何といっても
○「坂田アキラの看護・医療系数学T・Aが面白いほどわかる本」(中経出版)
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http://green.ap.teacup.com/reviewermizuno/264.html
○「看護・医療系の数学T・A」(学研)
であろう。さらに
○「森本啓夫のココから始める入試トレーニング」数学T・A(中経出版)
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http://green.ap.teacup.com/reviewermizuno/667.html
なども、代表的な問題の解法に絞って詳しく書かれている。定番としては「沖田の数学T・Aをはじめからていねいに」(東進ブックス)もある。ただ文章がだらだら続いて読まされる印象を受ける。ただ、他に初学者向けの本を持っている前提で「過渡的な」(例えば苦手対策などの目的で、ザーッと一読してしまってあとは愛用の本に移る)用途に限定すれば威力を発揮するかも知れない。
このへんの話題については、別記事「数学T・Aだけでも何とかしたい!」でも触れているから、適宜参考にされたい。
$ 参考:「数学T・Aだけでも何とかしたい!」
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http://green.ap.teacup.com/reviewermizuno/583.html
また、一定レベルに達したあと、類題を練習して演習量を補い、過去問演習に備えることも必要になってくるだろう。そのための演習書・問題集として、可能ならば手持ちの傍用問題集を使ってもよいが、とくに持っていない場合は、看護・医療系とうたわれたものが複数出ているので、それらを使ってもよい。その際、できれば、看護・医療系の入試問題集以外の学参も出版している会社の本を使って欲しい。その次に信頼できるのが、看護・医療系の専門予備校系の出版社(たとえば東京アカデミー系の七賢出版)のものであろう。あとは正直言って玉石混交である。
○「高校生の進路別 看護・医療系短大・専門学校の数学」(池田書店)
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http://green.ap.teacup.com/reviewermizuno/914.html
○「オープンセサミシリーズ」(七賢出版)
高校で教えている内容自体もいろいろと変わっているわけだから、巻末に載っている発行年月日ぐらいはきちんと見て、古いものは避けること。あとはやはり解説面であろう。実際に書店で見て、出来そうだと思ったものを買うようにしたい。
最後に、当サイトと同盟関係にある看護・医療系の数学に特化した学習支援サイトを紹介しておく。オリジナル教材の販売をされているほか、掲示板では問題の解き方を質問したりもできるので、活用していただきたい。
$「ぴったし!看カン♪」(相互リンク・同盟サイト)
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http://lykeion.info/kango/