特に夏休みを前にした時期(6月下旬〜7月上旬)が多いように思いますが、以下のようなご質問がよく寄せられます。
$ ○○大学の○○学部に行きたいのですけれど、
$ 「○○○」(定番書)を全てやればここの入試にも対応できるでしょうか。
$ やはりもう少したくさんやらなければダメですか?
こういったご質問に対してどう答えるか。それは筆者の永遠の課題でもあります。筆者は現在(09年7月現在)メルマガだけで3年以上、その前も含めたらさらにプラス5年ほどでしょうか、こういった活動をしていますが、一応メインは「数学の参考書・問題集選び」であるものの、それ以外の、コーチングであるとかメンタルケアであるとか、そういった面が大きなウェイトを占めることに気づくわけです。
筆者として、特に最近意識していることは、質問されるかたの学習そのものに対する心構えをご質問の文面から読み取ることです。取り組む参考書・問題集を早く決めたい(もしくは限定したい)という気持ちがどこから出てきているか、ということに注意を向けるということです。
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学習にあてる時間を十分にとり、他教科との兼ね合いも考えたうえで、効率よくやり、確実に自分のものにしたい。だから、志望学部の標準レベルの問題を扱った定番書に絞って無理せずそれだけを完璧にしたい。そのために、瑣末な問題が省かれていた方がよい。
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・・・例えば普段からこういった心構えで学習を進めていて、そのうえで(目的意識があって)ご質問をいただけたのであれば、ある範囲内であればどのような本を選ぼうとも、それを完璧にしてくれるでしょうし、そしてもし入試本番で少し違う問題が出たとしても、何とか知恵をふり絞って『対応』できるようになると思うのですね。そして、そういった心構えは、文面のどこかにも現れるものなんです。
そこまで考えると、入試傾向によって多少の軌道修正が必要になるかも知れませんが、基本的には質問されたかたがやりたい(もしくは納得して取り組める)ものを「そのとおりですよ」と薦める方向でプッシュできます。逆に多少『無理めの』本であっても、「こんな本もあるのを知っていますか?もしよかったらどうぞ」とチャレンジさせてあげることも出来ます。結果として、筆者も多くの情報が提示できて嬉しいですし、質問されたかたも安心して学習を進められ、かつ実力も養ってもらえると思います。
ところが、以下のような気持ちで質問をされたとしたら、どうなるでしょう?
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とにかく志望大学・学部の入試問題のパターンにすべて事前に触れておかないと不安で仕方がないから、それはどの範囲の問題・解法で、それを最も少ない問題数でカバーできる本は、よく噂に聞くコレでいいんでしょうか?
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最近、受験勉強というものを意識するようになったんですけど、何をしたらいいかイメージがイマイチわかないんです。○○大学○○学部志望であれば、どれぐらい勉強するのが普通なんでしょうか。やっぱりしんどいものなんですか?
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・・・これは非常に残念なことで、どんな本を選ぶ以前の問題です。もとより、入試問題などというものは、作問者である先生が出題範囲の基本事項を組み合わせて作りさえすれば、(それが入試問題として機能するかどうかは別として)基本的に何でもアリのものです。おおよそこれだけのパターンを押さえておけば大丈夫、ということもよく言われますし、筆者とて言うことがありますが、それもあくまで何年分かの入試問題を見たうえでの推測でしかありません。また、推測しか出来ないのです。
こういった状況があるのを、受験生の皆さんですからまさか知らないということはないでしょう。そのうえで「これだけやれば大丈夫ですか?」という質問を投げかける行為は、甘え以外の何物でもありません。もちろん限られた時間の中で学習を進めていくわけですから、内容の取捨選択は必要になります。が、その責任は当然学習者本人にあり、結果は自分のものとして受け止めなくてはなりません。その責任を誰かに押し付けたいという気持ちだけは(・・・だけですよ?)、まあ百歩譲って分からなくもないのですが、そこが「見えて」しまうと、こちらとしても甘いことは言えなくなってしまいます。
個々の皆さんのおかれた状況・文脈。そこまでのイメージができて、初めて筆者本来の仕事(具体的にどの教材を薦めるか)にとりかかれるといっても過言ではありません(汗)。が、ここまでの段階を踏めば、回答で何を言いたいかは実はもう決まってしまうのですね。
・・・ほとんどの場合、ご質問の文面の中に、すでに回答があるのです。
冒頭のご質問であれば「やはりもう少しやらなければダメですか?」がそれにあたりますが、筆者の回答は一部の例外を除いて「そのとおり!」です。なぜなら、ご質問の文面にそういうことを書くということは、その必要性を自分の中でかなりの部分理解できている表れだからです(これは筆者の経験から。・・・もしも、何が何でもその本だけで受かりたいなら、「何周ぐらいすれば確実にものになりますか?」とつけ加えるだろうと考えられますよね?)。
ただ、ひと口に「もう少したくさんやる」といっても、それが即難しいものをやるということにはなりません。ここからは、様々な教材を即座に見比べることが出来、さらに入試の過去問集もある程度は手元に常備している筆者の領域ともいえましょう。大きく分けて次のような方向性をおぼろげに考え、読み取れる情報をもとにそのどれを中心にするか決めていくような感じです。
$ 1:メインの教材に入る前に、基礎の確認・反復ができる本を補う
$ 2:メインの教材と並行して、抜けている部分や演習量などを補う本を補う
$ 3:メインの教材を終えたあとの確認や力試しができる本を補う
$ 4:メインの教材とは別個に、関連・発展内容に触れられる本を紹介する
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$ X:それ以前に、本当に回答の最初を「お説教」で固めてしまう場合もあります
ずっと前から目的意識を持って何でもきちんとこなしてきた人と、今の時点で甘えが抜けきっていない人とでは、それまでに受けた授業や使った教材の内容が同じでも、当然のようにその理解度・定着度に差が生じます。そして、その積み重ねが解答時間・正確さ、さらに応用力・記述力といったところにも繋がってくるわけです。
それを踏まえ、どこまでは足元を見つめ直し、どこからは先を見据えてもらうか。そのバランスをギリギリのところまで突き詰めていく・・・と言えば多少(いや、かなり?)大げさですが、筆者はこうして日々皆さんのご期待に応えるべく、奮闘しています。