当サイトでは、数学検定の対策、問題集選びについても議論しています。複数のかたから有益な情報をいただいておりますので、それも含めてこちらでまとめさせていただきます。
【問題の難易度・出題について】
選抜試験(ふり落とす試験)でなく検定試験(力の付き具合を見る試験)という意図からと思われるが、首都圏の私大でよく出題されるような「ひねった」問題は少なく、素直な「取らせる」出題がほとんどである。また、特に1次(計算技能)の問題では、受検の標準学年(例えば準2級であれば高1程度)で学ぶ問題は半分強程度で、前の学年で学ぶ内容もかなり含まれている。2次(数理技能)になると、一部教科書や傍用問題集で目にしない内容・題材のものも見受けられるが、小問で誘導されていたり、実験(問題文中の文字変数に幾つか値を代入してみること)によって方針が見つかることが多い。試験時間も余裕がある。
各級の出題形式、試験時間、申込方法などは数検公式ホームページを参照のこと。ただし、詳しい出題範囲や合格基準等については下記サイトの情報だけでは分かりにくいので、他の情報源も参考にされたい。
$「数検」公式ホームページ
$ →
http://www.suken.net/
$ 参考:ウィキペディアの「実用数学技能検定」の項目は→
こちら
関連の書籍については、いわゆる過去問集と対策書に大きく分かれる。前者は、過去問とその解答・解説を中心に収録したものである。後者は、基本事項のまとめや例題と練習問題から予想問題模試までを収録したものが主だが、予想問題模試のみを収録したものも(演習量を増やすという用途を考えれば)対策書と呼んで差し支えないであろう。
【過去問集について】
○「実用数学検定 過去問題集」(日本数学検定協会) ※12年から年度版となる見込み
「本家」日本数学検定協会が監修した過去問集も長く発売されていたが、長く模範解答しかついておらず解説が充実していなかったため、創育・学研などから発売されている解説冊子の付属した本の方が「お得感」がある状態が続いていた。ところが、12年始め頃から解説冊子の付属したものが級別に順次発売され、準2級(高1程度)・2級(高2程度)・準1級(理系高3程度)のものが6月下旬頃からアマゾンでも扱われるようになった。
本のタイトルを見ると「2012年度・2013年度版」と書いてあるので、今後少なくとも2年ごとに(もしくは毎年?)最新の問題を収録した新刊が順次発売されていくと思われる。
なお、準1級・1級(大学教養程度)については、解説・周辺事項の充実した「発見」というB5判のシリーズが以前より発売されていた。
【対策書について】
ほとんどの対策書は本の前半で1次(計算技能)対策、後半で2次(数理技能)対策を扱い、巻末に1次・2次それぞれの予想検定問題とその解説がつく構成になっている。準2級(高1程度)・2級(高2程度)ぐらいまでは各社からひととおり発売されており、基本事項の導入の詳しさや練習問題の数、解説の丁寧さなど学習者のレベルに合わせて選ぶことができる。しかし、受検者の少なさも影響しているのだろうが準1級(高校の理系学部卒業程度)〜1級(大学の理系学部教養科目程度?)になると極端に数が少なくなる。
前述のとおり、内容的には目新しいものをほんの一部含むという以外、数検独特の出題といえるものがほとんど見られないため、特別の対策の必要がさして見当たらず、対策用の参考書・問題集は英検や漢検に比べて少ない(作り手側も、作っても売れないと思っているのかも?)。
○「受かる!数検」(学研)
オーソドックスな問題集。基本事項のまとめもコンパクトで、教科書の当該分野まできちんと学習し終えた状態で短期に対策するのであればこれで十分だろう。裏を返せば、内容的には極めてそっけない。先の学年で習う内容を先取りして学び対策したいという人にはもっと詳しい対策書が必要。
○「本試験型 数学検定試験対策問題集」(成美堂出版)
模試形式の問題集だが、ページ数が多い分、全体的に紙面に余裕があり、重要事項は巻頭に簡単にではあるがまとめられている。例えば準2級で1次・2次それぞれ5回の予想検定問題が収録されていて、その解説の中で基本事項の解説が繰り返されており、結果的に各問題が丁寧かつオーソドックスに解説されている。
全体として、かなり早期に発売された本のわりには内容的なバランスが最もとれていた。特に未習分野がなければ、検定教科書プラスこの本で対策は万全だと思う。ただ、未習分野がある人には、使えるかどうかギリギリの線。筆者が勤務校に来てから早い時期に買った本で、「数検対策がしたいが、習っていない所があるので、その部分も対策できる本が欲しい」と言いに来る生徒さんに貸し出したこともあるが、今となって考えれば、勤務校の生徒さんだからこそこの本で事足りたのかなとも思う。
○「数学検定合格問題集」(新星出版社)
模試形式の問題集。例えば準2級では1次2次それぞれ6回分の実力模擬テストがあり、基本事項もその解説の中で触れられている。各問題は講義調をとり入れ、丁寧に解説されているが、まったくの初学者向きとはいえない。1次レベルはある程度学習済みで合格ラインに達している本が、2次対策のために使う本だと思う。模擬テストと模擬テストの間には苦手分野の補強のための演習問題が収録されているが、苦手・未習分野をここでカバーできるかどうかがカギ。
「3級」の著者は代ゼミの西岡康夫先生だが、カリスマ講師のひと味違う講義を期待すると若干拍子抜けするかも。また、解説に講義調をとり入れた本の宿命として、解答(受検者が答案用紙に書くべき内容)と「解説」がごっちゃになりやすいことがあげられる。この本だけで学習していると、読んで理解するだけならしやすい半面、実際に答案用紙に解答を作ろうとするとどう書いて良いか分からないままになる恐れがある。筆者もこの部分がずっとひっかかっていて、結果的に使う(薦める)場面は多くなかったように思う。読ませる部分は多い本であるのに残念である。
○「U−CANの数学検定ステップアップ問題集」(自由国民社)
初版は「主婦の友社」から出ていた本。まさか当サイトでそんなものを扱うとは思っていなかったが(汗)、筆者の見た限りでは内容的に最もバランスのとれた「対策書」に仕上がっており、分量的にも適当。初版が発売されたのが07年ということで、後発のメリットもうまく生かしていると思う。10年10月現在、普通に出回っているのは09年に発売された「第2版」だが、書店によっては07年発売の「初版」がまだ残っていることがあるので注意されたい。ただし、初版も第2版も内容的に大きな違いはない。
基本事項のまとめと例題のあと、「A」「B」2レベルのチャレンジ問題(練習問題)があるが、その解説が目を引く。使った公式が横に書かれていたり、ページ下に「これだけは覚えておこう」とポイントが強調されていたりと、初学者にもわかりやすく工夫されているだけでなく、実際の検定で使われた問題に関しては正答率も表示されている。巻末には予想検定問題は1次・2次それぞれ2回分ずつ収録されており、その解答・解説が別冊になっている。
この手の、タイトル通り「ステップアップ」形式の本に共通することであるが、易から難まで問題が満遍なく収録されているので幅広い到達度・レベルの受検者に対応できる半面、すでにある程度予備知識を持った状態で取り組む場合にはムダが多くなる。自学自習に堪える構成だが、効率よくやろうとすると、例えば得意分野はいきなりチャレンジ問題からやるとか、苦手分野・未習分野は導入・例題から丁寧にやるといった工夫はおのずと必要になる。そういう意味で、チャレンジ問題の「A」と「B」で扱われている問題の毛色がかなり違う箇所があるのが気になる。例えば「A」だけでも最小限の内容が網羅されるようにすべきだったのでは。
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【謝辞】
当記事の執筆に際し有益な情報をいただきました、てふぽんさん、on-chan先生に厚く御礼申し上げます。
※10年10月7日執筆分に加筆修正
