mixiの時代(?)から現在にわたってお世話になっている中村一郎先生が数学の参考書を出版されています。本来「レビュー」に載せるべきものなのですが、中村一郎先生、および出版社アルス工房様とは少なからずご縁があり、公平な目でこのシリーズを評価することが筆者には出来ないため、こちらで紹介させていただきます。
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「イチローの驚愕数学」TA/UB/模試(アルス工房)
解説が付属DVD及び動画サイトで観られるのが特徴の、センター対策演習書。他に英語、国語のシリーズもある。レベルは、入試基礎〜センター標準が中心。
「動画による解説をウリにする本」と聞くと、まず気になるのが分量だが、「数学TA」「数学UB」では、DVD1枚にそれぞれ600分、720分もの授業映像を収録。基本事項の導入や問題に取り組むうえでの注意点のような内容も充実しているが、そのかわり収録「問題」のボリュームは少ない、一応T・A、U・Bとも14問を収録しているが、センター試験の大問を意識した1問もあれば「えっ、これだけ?」と思いたくなるものも含まれる。授業映像を見て理解できるかどうかを基準に、入試基礎レベルを確認する用途と割り切ろう。「模試」の方は、T・A、U・B各2回ずつ、計4回分の模試形式の問題を扱っている。こちらはセンターの過去問をもとに数値や設定を変えたような問題が多く、総じて実戦的な内容が多い。収録されている授業映像は240分と若干コンパクトだが、その分、映像に動きが多くなっている。
中村一郎先生は、ご自身で一橋進学塾という大学受験塾を経営されており、現在もスカイプ等を介して直接指導にあたられている。最もお得意なのは小論文だが、数学を含めたほぼ全教科を指導されているというマルチな方で、筆者のサイトもよく見てくださっているそうである。そんな中村一郎先生を知っていると、本シリーズの付属DVDではその魅力が十分に伝えきれていない気もする。筆者が以前に見たことのある別の動画では、身体もよく動かされる(?)など演技もつけて熱っぽく指導されていた記憶があるので、それを期待してしまうとやや興ざめである。DVD1枚に授業映像をすべて入れ込むことにこだわらず、必要に応じて複数枚にするという手は無かったのだろうか。逆に、授業内容を理解するうえで「授業者の動き」が如何に重要なポジションを占めているかということを、筆者は再確認させられてしまった。
もう1つ、授業映像ではポイントをズバッと解説し、それ以外の部分は本文でフォローするという考え方もある。が、そう思って本冊を開いてやると、本冊の厚さのかなりの部分を占めているのが「公式カード」という事実に、別の意味で「驚愕」させられてしまう。確かに必要な内容であったり、センターでは知っていると得しそうな内容(トレミーの定理など)のものもあったりするのだが、筆者には「カードで数学の公式を覚える」という学習法がどうしてもイメージできず、大変申し訳ない。同じコストをかけるならやはりDVDの映像にもっと動きをつけるべきだったのではと思うばかりである。