水野の数学参考書レビュー［高校数学・大学入試］

□ボアネルゲスさんからのご質問

はじめまして。こんにちは。現高３のボアネルゲスと申します。

自分は今年北大理学部を目指して勉強して来ましたが、センターが散々な結果に終わってしまい浪人を決意しました。センター試験でも数学の出来が悪く。�T・Ａが５２点、�U・Ｂが７０点でした。

これまでは、１つの教材をやっていても点数が上がらず、もっと良いものは無いのかと色々な教材に手を出してしまっていました。普段の模試などでは７割弱ぐらいだったのですが、今回のセンターを受けてみてやはり基礎から叩き直そうと思い、浪人では教材を決めて腰を据えてやろうと考えているのですが、なかなかどれをやるべきか決められないため、こちらへ相談させていただきました。

基礎からやるということで、まず「本質の解法」�T〜Ｃ（旺文社）を教科書と合わせてやろうと思うのですが、傍用問題集などをまず最初に完璧にするべきでしょうか？また教科書の公式などはすべて証明から求められるようにするべきなのでしょうか？その後についても、「数学基礎問題集精講」（旺文社）、「数学標準問題精講」（旺文社）、「１対１対応の演習」（東京出版）、「やさしい理系数学」（河合出版）、「理系数学 入試の核心」（Ｚ会出版）などがあり、自分ではどれをつなげていったら良いのかわかりません。また、分野にまたがった融合問題などがある問題集も教えていただけたら幸いです。

時間はかかってでもしっかり数学の力を上げたいと思っています。ご教授よろしくお願いします。

＝＝＝＝＝【ＰＲ】＝＝＝＝＝
『参考書・問題集・赤本の買取を専門に行う古本屋、学参ブックス』

当店では、学習参考書や各種予備校のテキスト、教材など受験に関する中古商品の買取を専門に行っています。
今月受験も無事終わって、来月から晴れて大学生という皆様。塾、予備校の経営者、講師のかた。または学校の先生がた。
専門店だからこそ、他の古本屋、ブックオフ等では買取を行っていない（値段のつかない）予備校のテキストや古い赤本なども大切に査定し、幅広く買取させていただきます。

＄「学参ブックス」
＄ → http://www.bookbank.jp/gakusan/

＝＝＝＝＝
□ボアネルゲスさんへの回答

今年の数学�T・Ａは「ちょっと攻めすぎじゃない？」と言いたくなる（らしい）出題で、苦労された生徒さんが多かったようですね。上位は比較的安定しているようですが、いま一歩それに届かない生徒さんとの差がすごくついた試験だったと聞きます。ただ、想定より難易度の高い問題（課題）に出会ったときは、ご自身の学習（生活）スタイルを見直すチャンスでもあります。来年度もセンター試験が同じ難易度になるとは思いたくないですが、とにかく１年間しっかりと基礎から固め直していきましょう。

まず迷うのは、ベースとなる本を何にするかです。教科書に載っている、定理の導き方なども確かに大事ですが、それだけを（何でもないものから難解なものまで）ベッタリとやるのはさすがに効率も悪く、おすすめできません。受験校にもよりますが、定理を導き方から覚えるのは、忘れたときに思い出すための手段と割り切って、手持ちの中で言えば

○「本質の解法」（旺文社）
　→ http://green.ap.teacup.com/reviewermizuno/93.html

をベースにし、忘れた内容を思い出す際には面倒がらず教科書を見直す、というふうにすればよいでしょう。また、教科書に見当たらない問題が、（種類にもよりますが）傍用問題集で「例題」として扱われていることもあります。教科書学習時には、このレベルは意外と抜けてしまうところですので、「ここでやっていたのか」と思い出してもらうためにも、一度やった本は少なくとも手元に置いてたまには見直す機会をつくるようにして下さい。

さて、その次段階で使う参考書・問題集を迷わされているということですが、やはり意識して欲しいのは「力試し」です。�V・Ｃまでひととおりやるとその間に�T・Ａ・�U・Ｂを忘れるということもあるのですが、分野別編集のセンター対策本で、（特に今年は悔しかったでしょうから）多少問題のレベルが上がっても対応できるものに思い切ってチャレンジしてみませんか。具体的には

○「解決！センター」（Ｚ会出版）
　→ http://green.ap.teacup.com/reviewermizuno/292.html

というシリーズが候補になるのですが、少しひねった問題も含めて、こういった本で早いうちにものにしてしまってはどうかと思います。さらにその後は、多少時間がかかってもよいなら

○「数学標準問題精講」（旺文社）
　→ http://green.ap.teacup.com/reviewermizuno/121.html

等で苦手な分野・出題パターンをしっかりつぶしていけば、本番で見慣れない問題が出ても、ボロが出ることは少なくなるはずです。ここまで来ると、目標とする大学の過去問（もしくは少しレベルの低いところの過去問）にも取り組めるようになると思うので、次の「力試し」はその段階で心がけるようにしましょう。

ご質問内容から、これまでは１冊の参考書が長続きしなかったが、これからは着実にやっていきたいということでしたので、今回は多少効率が悪くなっても（もしくは今までの取り組み方のクセが出て１問１問への取り組みが多少甘くなっても）複数の本に同じ問題が載っていて重要な事項・出題はどこかでフォローされるように考えてみました。ですので、問題を見ていて「これはさすがに見たことがあるなあ」とお思いになったら、そこは出来たことにしてとばしても構わないと思いますが、先を急ぐあまり何でもかんでも無理やり出来たことにしてとばしまくられると結局二度手間になります。受験は自分との戦いだと言われますが、精神的な部分だけでなく「自己分析」のような部分も、筆者は大事だと思っています。

＄ 参考：「３割購入＆８割理解」
＄ → http://green.ap.teacup.com/reviewermizuno/192.html

　　　

ツイート


　

教科書学習時に差がつく問題が凝縮された問題集。高１・高２模試の対策用？

「基礎力判定（／実戦力判定）問題集 新課程版」数学�T・Ａ／�U・Ｂ（学研）

ほどよくひねった出題で理解度・演習量によって差がつく、いわゆる良問をチョイスし編集した問題集。前書きには、学研が実施している全国模擬試験の問題が元ネタになっていると書かれていて、数学以外の教科のものも含めて同じように作られていると思われる。レベル別に「基礎力判定」「実戦力判定」の２シリーズがあり、後者にはそこそこひねった（考えられた）出題も見受けられるが、あくまで教科書学習後すぐ受ける模試がもとになっているので、モロ入試レベルといった問題はほとんど見られず、レベル的には似通っている。

Ｂ５判で、中学生用のワークを若干地味にしたような紙面構成。答案や計算を書けるスペースが確保されているが、人によっては不十分と感じるかも知れない。また、差がつく問題だけを集めたような構成になっているので、どの問題にもまったく手が出ないということも考えられる。その場合は明らかに基礎力（／実戦力）不足なので、別冊解答を読むだけのような学習はせずに、あせらず基礎レベルの本に戻ってやり直すこと。少々ひねっているとはいえ、レベル的にはたかが知れているので、こういった問題にいちいち引っかかっていては勿体無いし、結局は効率だって悪くなるからだ。

出版社にとっては、模試の営業の際などに「模試での出題の目安・対策になりますよ」という触れ込みでついでに売り込めたら２度美味しいのかも知れないが、学校や予備校・塾で受ける模試が学研模試でなくとも、（一部のハイレベルと呼ばれる模試を除けば）出題の参考にはなるので、模試前の対策用、私大や看護・医療系の入試対策基礎の確認用、また低学年から先取りで使うとしたら数学検定などの検定試験の対策用といった用途も考えられる。演習量を増やすというか「問題慣れする」という意味で、期間を限定して取り組んでみても良いかも知れない。

【リンク】

※新課程版（１２年以降）基礎力�T・Ａ／�U・Ｂ／実戦力�T・Ａ／�U・Ｂ

　　　

※現課程版 基礎力�T・Ａ／�U・Ｂ／実戦力�T・Ａ／�U・Ｂ
　（リンク先の内容は当方にて確認済み。表紙に「新課程」とあるので注意が必要です）

　　　

※１２年５月８日執筆分に加筆修正

ツイート

大学入試に向けた各教科の学習に役立つサイトです。

＞＞＞＞＞高校数学・大学入試数学のサイト

○数学のオンライン参考書・問題集サイト

■数学ナビゲーター（相互リンク）
金沢市にお住まいの、中村晃さんのサイト。オンライン参考書がメインのサイトですが、申し込めば有料にて直接指導を受けることもできます。
■場合の数・確率を勉強しよう！（相互リンク）
加藤隆太郎先生のサイト。場合の数・確率に特化しており、数え上げの基本から入試問題まで丁寧に解説しています。書籍化もされました。
■高校数学１日１０分（相互リンク）
高校数学の基本問題を毎日解いていこうというページ。

　□文系数学web問題集　解説画面のレイアウトが「紙面のきれいな学参」ぽい。
　□難関大学への数学　難問中心。姉妹サイト「難関大学への物理」もあり。
　□高校数学応援ブログ web問題集　元予備校講師、kurukurumathさんのサイト。
　□フリー教材開発コミュニティ エフテキスト　無料のオリジナル教科書、演習問題。
　□オルタナティブ・マス・クラブ　導入寄りのオンライン参考書。
　□高校数学の基本問題　基本問題の練習ができます。
　□高校数学++【なんちな】++　視覚教材など。

○大学入試数学の学習法を扱ったサイト・数学指導者サイト

　□Yahoo!ブログ−語りかける数学　同名参考書の著者のブログ。
　□数の理ゼミナール　本音を語る数の理ゼミナールブログ他が熱い！
　□そら先生の数学ぶろぐ　メルマガ「数学マスターへの道」発行者サイト。

＞＞＞＞＞数学以外の教科を扱ったサイト・指導者サイト・塾サイト

■大学受験対策！！早稲田・慶應・難関大学の合格法（相互リンク）
元英語講師による大学受験サイト。英語の学習法が中心。
■ビジュアル英文解釈の使い方と英語勉強法（相互リンク）
駿台文庫の定番参考書の使い方を、英語が苦手な人向け、得意な人向けに分けて概説。リンク集が充実しています。
■高校生英語教材（相互リンク）
高校生向けの英語教材、英会話、通信教育などの英語学習応援サイト。
■物理の参考書・問題集のおすすめランキング（相互リンク）
物理の参考書を、難易度の順番にランキングにしたサイト。自分の学力に合った参考書選びの参考に。
■大学への物理（相互リンク）
物理の学習法をメインに据えた、正統派の学習支援サイト。
■まじめペンギンの楽々生物講座（相互リンク）
看護・医療系受験予備校講師、K.HAYASHI先生のサイト。高校生物の基本事項がコンパクトに整理されており、基礎から勉強したい人におすすめ。
■大学受験突破塾（相互リンク）
熊谷さんのサイト。大学受験合格をプロが直接指導！学習法はもちろん生活面の指導も受けられ、毎日が充実するネット受験指導塾です。
■個別指導塾 てらこや（相互リンク）
岡山県津山市にある個別指導塾「てらこや」のサイト。塾長さんのブログてらこや広場もあります。
■中学受験アカデミア２１（相互リンク）
　−中学受験【難語対策】と【お役立ち情報】
　−academia21（アカデミア２１先生公式ツイッター）
千葉県の中学受験専門家庭教師アカデミア２１先生のサイト。ツイッターを通じて知り合ったのですが、対象学年が違うものの同じ参考書の書評をされていると知ってびっくり。新たな繋がりに期待したいと思います！
■塾 フランチャイズ（相互リンク）
学習塾のフランチャイズを考えている方向け、安心して開業ができる、安全経営までサポートするワンツーワン個別学院の詳細について解説されている経営者向けページです。
■一家庭教師のつれづれなるままに（相互リンク）
『不登校・引きこもり』または、『塾などで成果が出ない』等の方のためのプロ家庭教師、tome先生のブログ。
■A Teacher's Diary（相互リンク）
Miyata Fumiaki先生の日記。いろんな国でいろんな生徒を教えていらっしゃいます。次はドバイへ行かれるのですね！応援しています。

　□学習参考書出版 アルス工房
　　参考書・学習ＤＶＤの出版社。講師オーディションには筆者水野も出場しました。
　□中村編集デスクのホームページ　理系教材編集デスクのサイト。下記メルマガにコラムを掲載していただきました。
　　−理系教材編集者のメルマガ　中村さんのメルマガ
　□教育失敗学から教育創造学へ　様々な経歴をお持ちの中学教師が教育を語る。
　□朝霞派 -as＠ka-ha!-　予備校生物科講師、朝霞（あさか）靖俊先生のブログ。
　□はぐれ雲講師のいろんなお部屋　英語講師haguregumonoyouni先生のブログ。
　□元塾講師の大学受験参考書レビュー（ただし理系科目のみ）
　□大学受験【現代文】ネット・学習法Blog　現代文の学習法サイト。
　□古典からのメッセージ　予備校講師のサイト。
　□桶川市の学習塾ヒカリ＆セルフラーニング・アシスト・ブログ
　□プロ家庭教師の江間です。
　□教員ＮＡＯＰお仕事手帳　教員の仕事と手帳の使い方に関するブログ
　□日本メンタルフィットネス協会
　　元数学教員でもある下口雄山（しもぐち・ゆうざん）先生が設立された協会。
　　自律訓練法をとり入れた集中力アップを体感できる合宿研修には筆者も参加。

＞＞＞＞＞［番外］中学数学・小学算数・趣味の数学など

■ヨッシーの算数・数学の部屋（相互リンク）
ヨッシーさんによる趣味の算数・数学のサイト。動く図形のアニメＧＩＦ画像が充実しているほか、質問コーナーもあり。
■独学で簿記１級、２級、３級を合格する方法（相互リンク）
簿記１級に合格され、さまざまな分野の受験勉強に精通された管理人様が、簿記検定に合格するためのノウハウを公開。一部大学入試に採用されている「簿記」に興味のある皆さんは是非どうぞ。
サイト作りにあたっては、当サイトの構成や指導法も大いにご参考いただいているということで、光栄に存じます！

　□すうじあむ〜数学総合博物館〜
　　筆者が以前に数学エッセイ（？）を投稿し「最優秀賞」受賞した、会員制数学サイト。
　□数学を楽しもう会 元高校教諭、溝上武史先生主宰の社会人向け数学教室。
　　−高校教師の数学勉強会マル秘レポート 溝上先生のブログ。
　□なぞらぼ　科学系の会員制サイト。
　□大人のための楽しい数学教室 和（なごみ）　月１回から楽しめる数学教室のサイト。
　□プロ家庭教師３０年の日々　よっちゃん１１４０先生のブログ
　□数学ハッピーライフ　数学イベント司会経験をお持ちのフリーアナウンサー、篠崎菜穂子さん
　□種市算数研究所　算数授業研究。　□中学受験算数を楽しく極めたい　問題のワンポイント解説。
　□計算問題.com　問題生成システム・プリント集など。

＝＝＝＝＝
※その他のリンクは・・・

○いろいろリンク：学習法全般・大学受験情報・・・受験情報集めに役立つサイト
○いろいろリンク：その他のサイト・・・大学生のサイト、受験生のブログ、その他
ツイート

　
　　

０１年度〜１１年度の過去問のほとんどを分野別に網羅した問題集

「世界一わかりやすい 東大の理系（／文系）数学合格講座」（中経出版）

東大数学の過去問（０１年度〜１１年度）を分野別に解説した問題集。過去問系の問題集の中では「アプローチ」部分の導入が詳しいのが特徴。過去問シリーズとは銘打っているが、必要な知識を確認する「確認問題」、演習量を増やし理解を深める「類題」もところどころに収録されている。著者は駿台・東進の講師、築舘一英（つきだて・かずてる）先生。

「理系〜」の章立ては「整数と数列」「場合の数と確率」「座標平面上の図形」「初等幾何とベクトル」「数列の漸化式と極限」「微分法」「積分法（定積分）」「積分法（面積）」「積分法（体積）」「行列」となっていて、また問題ごとに数学�V・Ｃの知識が必要かどうかを「○」「×」で区別しているので、数学�V・Ｃを未習の生徒さんなどにも使いやすくなっている。

紙面構成は、この出版社にしては落ち着いた感じだが、図が「アプローチ」「解答」の両方に入っていたり「コメント」が囲みになっていたりするので、パラパラと見ていくだけでもどの問題の解説か何となく分かるし、問題によっては解答より多い紙面を「アプローチ」に費やして噛み砕いて丁寧に解説しており好感が持てる。また、現課程の生徒さんが苦手とする不定方程式の整数解についても、新課程の教科書でされているような解説が加えられているほか、ここに限らず全体的に無理のない説明で、著者の専門（数学教育学）が生きていると感じる。

気になった点があるとすれば、巻末に「ＭＥＭＯ」のページが何ページも続き、その全ページに何故か女性キャラのイラストが大きく描かれていた点ぐらいか。別にイラストが嫌いなわけではなく、ここに入れるべきものがあるだろうというのが率直な感想。問題文の一覧のページがないのと、解説に挟まっている「類題」も後でもう一度見ようとするとどこにあるか探しづらいので、そういったときに役立つ索引のようなものも入っていればなお良かった。

　

※１２年１月１３日執筆分に加筆修正

答案づくりのプロセスに触れられる志望校別演習書。圧倒的ボリューム

「世界一わかりやすい 京大の理系（／文系）数学合格講座」（中経出版）

圧倒的ボリュームで、京大理系数学の過去問を分析・解説した演習書。単に過去問を扱っているだけでなく、著者が前書きで語っているように「どうしてそんなことを思いつくのか、どうしてそのような解答になるのか」を追求した内容となっている。答案づくりのプロセスを言葉を尽くして語ろうとする姿勢に好感を覚える。

章立ては「整数」「固有分野」など、京大の出題傾向に即したものになっていて、例題を丁寧に導入・解説した後に類題がつく構成。最大の特徴は、解説が「理解」「計画」「実行」「検討」の段階に分かれているところ。通常の演習書における模範解答である「実行」に先立つ部分に重点を置こうとする意図が見て取れるが、特に自称・京大志望者がおろそかにしやすい「計画」の部分では、三角関数の公式の導き方や基本的な極限の公式などの基本事項の確認も忘れない。

著者は河合塾講師の池谷哲（いけや・さとし）先生。写真からは「東大〜」の著者に比べてベテランの風貌。豊富な経験による分析はもちろんだが、ご自身が受験生のときの苦労に基づいた、例えば「答案の下書きをとっておいて復習する。本番ではいきなり答案を書こうとしない」といったアドバイスには説得力があり、今の授業スタイル（問題をしっかり分析してから答案を書き始める）にもつながっている様子。これに、京大の先生に聞いたという（恐らく予備校主催の入試問題分析会に招かれた先生からの情報だろう）話から導かれる内容がアクセントになり、全体として予備校の授業を受けているような本に仕上がっている。

同じ出版社から「東大〜」というタイトルの本も出ているが、「理系〜」で比べるとこちらの方が倍ぐらい分厚い。過去問を分野別に扱っているという点では同じだが、著者（講師）が違うので内容・切り口もさまざま。シリーズものとは認識せず、似たコンセプトの演習書がたくさん出ていると考えよう。逆に、こういった語り口が気に入ったら、京大以外の難関大の理系学部の志望者にも使って欲しい本である。ネックはやはりボリュームで、周辺事項まで含めてじっくりやる時間がなくなる直前期にはおすすめ出来ない。夏休みか秋頃から取り組み始めるのがベストだが、特に入試標準レベルの仕上がりが遅い生徒さんの場合は、とりあえず「お守り」として持っておいて、時期が来たら得点源にしたい分野に絞って使うようにしよう。

　

＄ 参考：「世界一わかりやすい 東大の理系数学合格講座」（中経出版）
＄ → http://green.ap.teacup.com/reviewermizuno/1651.html

※１２年１２月３０日執筆分に加筆修正

ツイート

科目・分野の全体像を意識させる編集がウリ。中級者向け総合参考書

「本質の解法」（旺文社）

旧「本質がつかめる」を継承するシリーズの総合参考書。表紙に巻かれている帯には「受験直結」と書いてあり、「黄チャート」と同レベルかやや上で、章末にはかなり難しい入試問題も収録されている。例題数は絞ってあり、網羅性よりも科目の全体像を与える本といえる。

例題は教科書どおりの配列に並ぶ「Core Ex」「Block Ex」と、章末問題の前でまとめて扱われる重要問題「Special Ex」からなる。「Special」は学校の授業等でも扱いに差が出るところだが、面倒ならばまるごと飛ばせばよいので邪魔にならないのが嬉しい。あと特徴的なのは、節の最初にある基本事項のまとめのページに例題の問題文を載せてあること。その項目でどういう問題が解けるようになればいいのかがひと目でわかるこの試みには、見るべきものが多い。

但し、１２年度からの新課程には１３年２月現在対応しておらず残念。同じ出版社の総合参考書は上位向けの「総合的研究」（「本質の研究」をもとに内容を充実させたもの）だけで、レベルを合わせるとやや薄めの演習書「基礎問題精講」しかない。タイプ・レベルともにこのレベルに対応した新シリーズの発売を待ちたい。

　　

※０４年１月１２日「徒然レビュー」執筆分をもとに再構成／１３年２月９日記事カテゴリ移動・リンク追加

【おことわり】
以下のご質問は、センター試験直後に急ぎのご質問としてメールでいただいたものです。時期が時期でしたので先に回答は済ませておりますが、皆様にお役立ていただくためにこちらにも掲載させていただきます。

□qed h,tさんからのご質問　※やりとりした内容をもとに筆者にて書き直しました

中高一貫校に通う高３で、名古屋大の理系志望です。が、センターでほぼ全教科失敗してしまい、６割台しか取ることができなかったので、私大（東京理科大、立命館大など）をメインに考えることにしました。

数学はマーク式なんですが、過去問をやる以外に短期間でこれらの大学の対策になるような参考書ってありませんか？よろしくお願いします。

＝＝＝＝＝【ＰＲ】＝＝＝＝＝
『参考書・問題集・赤本の買取を専門に行う古本屋、学参ブックス』

当店では、学習参考書や各種予備校のテキスト、教材など受験に関する中古商品の買取を専門に行っています。
今月受験も無事終わって、来月から晴れて大学生という皆様。塾、予備校の経営者、講師のかた。または学校の先生がた。
専門店だからこそ、他の古本屋、ブックオフ等では買取を行っていない（値段のつかない）予備校のテキストや古い赤本なども大切に査定し、幅広く買取させていただきます。

＄「学参ブックス」
＄ → http://www.bookbank.jp/gakusan/

＝＝＝＝＝
□qed h,tさんへの回答

今年のセンター試験に関する話もあちこちから聞きましたが、すでに切り替えて頑張ってくださっていると思いますので、あまり難しく考えず、残った時間でも出来て、かつ結果に結び付きやすいことを考えましょう。

おっしゃるように、過去問演習は必ずやるとして、演習量を増やす場合は、同じ大学の他学部の過去問、他に受ける可能性のある（あった）大学の過去問などで、第１志望よりもやや易しいレベルのものをうまく活用して下さい。マーク式が中心になるとのことなので、センター対策の授業などでも言われたであろうとおり、解答時間を計って解いてみるのはもちろん、万が一途中で間違えた場合に戻って確認できるように、途中式を（あちこちに書かず）まとめて書いたり、図などを随時描き直したりする等の注意点を、再度思い出すようにしましょう。

そのうえで、演習量を増やすのであれば、志望校の頻出分野で得点源にしたいところ（もしくは不安を残しているところ）を分野別の問題集・演習書で集中的に補うのが常道です。例えば

○「短期集中インテンシブ１０」シリーズ（Ｚ会出版）
　→ http://green.ap.teacup.com/reviewermizuno/533.html

あたりが選択肢に入ってくると思いますが、今からあまり難しいものに手を出しても消化不良に終わる可能性が高いので、例えば微分・積分のように標準編と発展編に分かれているものは前者を選んだ方が無難です。

・・・が、もし「難問が出たらどうしよう？」という気持ちがどうしても消えないのであれば、差がつくテクニック、時間短縮の方法を集めた本を１冊は持っておくとよいかも知れません。ただ、こういった本はメインにはなりえませんから、もし買うなら読み物的なスタイルの薄い本にし、寝る前や、例えば試験場まで新幹線に乗るのであればその移動中などの時間をあてるようにしましょう。具体的には、

○「大学への数学 ちょっと差がつくうまい解法」（東京出版）
　→ http://green.ap.teacup.com/reviewermizuno/1726.html

などの本がありますが、読み物ですから、書店で実際に中身を見てみて、取り組みやすそうなもの、語り口が肌に合いそうなものを選ぶようにして下さい。

幾つかの例を示させていただきました。確実な選択肢はありませんが、やるべきこと、やりたいこと、費やせる時間を考えたうえで、悔いのないように努力しましょう。応援しています。

＄ 参考：「冷静に状況を整理すれば、答えは出る！」
＄ → http://green.ap.teacup.com/reviewermizuno/930.html

　　

ツイート

今年も、大学入試過去問の解答・解説を執筆するお仕事をさせていただきます。

今年の入試問題と、その他の事項の書かれた書類（執筆セットと呼ぶそうです）が送られてくるのですが、早いものだと数日前に実施された入試のものがもう送られてきたりもします。筆者はもとより（一部を除いて）自分の担当科目のものしか見ませんから、受験生の皆さんには到底及ばないのかも知れませんが、皆さんの緊張感のほんの一部を味わいながら、年度末から来年度の初めぐらいまでのこの時期を過ごすことになります。



　

※アマゾンリンクは１３年度受験用のものです。尚、筆者の担当大学とは関係ございません

ツイート

　
　　

使い手を選ぶが、基礎から細かい内容まで丁寧に解説された力作

「難関大学に出る 数学�T・Ａ・�U・Ｂ解法の極意」（中経出版）

教科書学習を終えて、入試の標準と呼ばれるレベルに取り組めるようになった難関大志望者向けの演習書。学習意欲が高く、１問をじっくり勉強したい人に特におすすめしたい。著者は代ゼミ講師の箕輪浩嗣（みのわ・ひろし）先生。

入試での出題を意識した、「論証」「座標」といった短い章に分かれている。各章は１題もしくは数題の「確認問題」から始まり。そのあと、節ごとに基本事項を掘り下げて解説した「定理」、そして難関大の入試問題を中心とした「例題」とその解説、さらに関連事項について述べた「研究」が続く。内容・形式としては「入試数学の思考法」（駿台文庫）や「東大数学で１点でも多く取る方法」（東京出版）を連想させる。

本書の最大の特徴はやはり「研究」。例題の解答の所々にマークがついており、それに対応する内容が解答の後に並んだ、つまりは「注」なのだが、補足説明だけでなくかなり踏み込んだ内容のものもあり、これがとにかくずらずら並んでおり、細かい文字と縮めた図を駆使して詰め込まれている。この出版社（中経出版）らしくない・・・と言ったら怒られてしまいそうだが、ただ単に難しい問題を扱うだけでなく、それらを丁寧に解説した本を作りたいという著者の熱意が感じられる。見た目以上に「重たい」本だが、章の前半は確認程度に読み飛ばして後述の「研究」を中心に学習できるレベルに達している生徒さんにとっては、まさに栄養分のかたまり。しっかり摂取して欲しい。

少々余談になるが、こういう本を見ていると、ひと口に「予備校講師の授業を受ける」といっても扱うテキストの問題は同じでも、関連した話をどのレベルまでしてもらえるかで得られるものがどれだけ違ってくるか、そういったことを改めて感じずにはいられない。授業に参加する生徒さんも、講師と共有する時間を大切にし、少しでも多くの話（基本事項を掘り下げる場合は、より聞きやすい説明）を引き出すということを、もっと意識すべきである。わかる所から丁寧に、にこやかに説明してくれる講師は、もしかすると裏で泣いているのかも知れない（？）



ツイート

全体的に表現が堅苦しく敷居が高い印象。新課程には対応しているが古くさく感じる

「センター試験必出 数学公式１８０」三訂版［数学�T・Ａ・�U・Ｂ］（旺文社）

コンセプト的には、センター試験を意識した公式集タイプの新書判参考書。１ページずつ完結した構成で、ページ上に公式の名前があり、その内容と補足説明が続き、下に「例」とその「解」があるというオーソドックスな学習用公式集スタイルである。三訂版で新課程（１２年以降入学生対象）に対応。

元は恐らくかなり古い本で、課程が変わるごとに内容を少しずつ書き換えるということを繰り返して今に至っているように見えるが、類書がこれだけ出揃ってしまった現在の目で見てしまうと、つっこみ所が随所にある。全体的に言葉遣いが古臭く、「符号図」という聞き慣れない表現も見られるほか、下の「例」の問題も全体にひねり過ぎの印象を受ける。著者も高校数学寄りの経歴に乏しいと見受けられるし、一般の高校生・大学受験生が本書を進んで買うことはまずないだろう。

もし出版社が本気でこの本を売ろうと考えるなら、編集側で一度全体をしっかり見て、表現のクセや「例」の難易度のバラつき等を（時間とコストをかけて）改めるはずだが、それをしない（もしくは出来ない）ということは、そもそも売る気がないのだろう。



ツイート