中学生向け解法事典の名を冠した総合参考書。前身の本に比べ例題が充実
「高校 総合的研究」数学T+A/他(旺文社)
「本質の研究」のリニューアル版として、中学生向け解法事典の名を冠して発売された総合参考書。本文の紙面構成は現課程版「本質の研究」と似ており、基本事項の導入の丁寧さなどはそのままだが、ページ数が大幅に増え、例題が充実している。対して価格はT+Aで1900円→1700円と安くなっており、好感を覚える。13年9月には「数学U+B」も発売されたが(2000円+税)、こちらも圧倒的なボリュームを誇る。この調子で「V」が出たらどうなるだろうかと逆に不安(?)も覚えてしまうが、こちらにも期待したい。
今回、類書にならってか、例題に「重要」マークと難易度を示す「★」マーク(1個〜5個)がついた。また、今まで例題として扱われていなかった、「一度経験しているかどうかで差がつく」問題が多く例題に採用され、辞書的使用にも堪えるつくりになった。これまでの「本質の研究」同様、節の中盤から終盤にかけての発展のさせ方と例題の配置、「Aランク」「Bランク」に分かれた章末問題も、前者(A)までなら一般の高校生にも取り組みやすくなっているので、難関大志望者ならば教科書学習時に身につけておきたい内容に、変に演習量に頼ったりすることなく、またマニアック過ぎる内容に偏ることもなく、ひととおり触れられるようになっている。
例題の下につく類題「問題」が一部の例題にしかなく、人によっては使いづらいと感じる向きもあるかも知れない。ただ、筆者個人としては、類題演習を含めて完全に定着させるべき内容と、とりあえず触れておくべき内容とを「類題の有無」という形で区別するという作り手の姿勢に共感を覚える。指針である「アプローチ」部分が言葉を尽くして丁寧に書かれているので、特に「相応の国語力はあるが、数学はまだ何となく苦手」という生徒さんなどは、とりあえずはこういった部分をなるべくじっくり読んで理解するように努めれば、今すぐは問題が解けるようにならなくても、次につながるはず。
著者(長岡亮介先生)は「詳解 数学」「本質がつかめる数学」と名を変えながらこの出版社から参考書を出しておられる旨をはしがきに書かれているが、今回の「総合的研究」にも並々ならぬこだわりがある様子で、著者のファンであれば、こういった部分からも様々な内容を読み取ったうえで、基本事項の理解、例題・類題の演習に励んでくれるだろう。
表紙カバーの配色などが同名の中学版と似ているので、特に通販で買う場合は買い間違いに注意が必要。同時期に、小学版(教科書レベルと中学受験算数がおよそ半々の内容)も発売されていて、今回、旺文社は小・中・高とタイトルを揃えて算数・数学の総合参考書を揃えたわけわけだが、小学版、中学版がともにフルカラーの紙面であるのと比べてしまうと、本書「高校〜」はどうも古臭い感じがする。くれぐれも「タイトルが同じ=フルカラー」という期待を寄せて本書を開くことのないように注意されたい。
【参考】中学版「総合的研究 数学」三訂版及び「同 問題集」のアマゾンリンク
※12年10月14日執筆分に加筆修正