※先日、ある指導者のかたから以下のようなご相談をお受けしました。
ご本人の許可も得まして、当「処方箋」コーナーの形式に再編集したものを
共有させていただきますので、参考にしていただければ幸いです。
□Tサンさんからのご質問
水野先生こんにちは。私は、家庭教師を生業としている者ですが、今回は大学受験レベルの数学の参考書について、教えていただけないでしょうか。
中学受験の頃に私が担当していた生徒さんが関西の中高一貫校に入学し、現在は高1で数学Uの微分・積分を学習しています。そろそろ受験に向けた本格的な内容に入ってくる時期でもあり、また私に担当して欲しいと言われました。大変嬉しいことなのですが、教える私自身が、大学受験レベルの数学の内容を忘れてしまっています。その生徒さんは医学部を志望しているので、ゆくゆくはそのレベルまで指導できるようになりたいのですが、まずはどのような参考書・問題集からやればよいでしょうか。
また、その生徒さんは、学校の授業で「4STEP完成ノート」(数研出版)と「メジアン数学演習T・U・A・B」(数研出版)を使っているそうですが、それらの解答冊子は渡されていないようなのです。その点も含めまして、よろしくお願いします。
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□Tサンさんへの回答
よくよく考えてみれば、筆者自身も教職を志したのが遅かったので、忘れていた高校数学を自分で復習したんでしたっけ(苦笑)。その頃のことを思い出しながら、回答させていただきます。・・・と言いつつ、医学部受験レベルまでと言われると、問題によっては解答を参照して初めて何とかという程度で大変恐縮ではありますが。
# 参考:「その頃」の話はこちら
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http://green.ap.teacup.com/reviewermizuno/593.html
釈迦に説法かも知れませんが、実際に受験のために学習するのと違い、指導のための復習であれば、基本事項や問題の解法を完全に暗記したり、制限時間内に解答したりする必要はありません。そこで、細かい部分については指導しつつ生徒さんと一緒に学習していくことで徐々に補っていくようにし、指導者ならではの視点を養うことに注力していくことにしましょう。
そこで意外とバカにできないのが教科書(現行課程の)です。ご自身が忘れていらっしゃる内容を思い出すのはもちろんですし、現行課程にはTサンさんが高校では学ばなかったであろう「データの分析」も扱われていますから、まずはその部分をあたってみるべきですが、お得意な分野についても、絶対に一度はきちんと読み直された方が良いです。どの公式がどこで説明されているかそ知ることも大事ですし、「こんな公式がここで載ってるの?」「この公式って、こういうふうに導かれるんだ」といった気づきもあります。
また、少々余談になりますが、昨今の大学入試では基本事項自体を述べさせたり導かせたりするのが(東大で三角関数の加法定理を証明せよという出題があって以来?のブームから)もはや一種の定番になりつつあって、好んで出題している大学もありますので、指導される際もそういった部分に目を向けさせるよう、お声がけをお願いします。
さて、教科書をしっかり押さえたうえで、問題集や学校の先生が作成されるプリントをご覧いただければ、学校の授業で扱われている内容の「レベル感」とでも言うべきものが、わかるかと思います。生徒さんが「分からない」とおっしゃった場合、単にサボっているのか苦手なのか、その問題特有の考え方が必要になるのが身についていないのか。さらには、授業では基本をすっとばされてしまったから練習が足りないのか、それとも教科書に無い部分を「常識だから」と言って学校の先生が補われたのが、説明が中途半端だったか「合わなかった」か何かで理解できていないのか、そういった分析も出来るようになると思うんですね。そして、差がつく問題はやはり
○「フォーカスゴールド」(啓林館)
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http://green.ap.teacup.com/reviewermizuno/1715.html
などの分厚い参考書に頼ることになるでしょうが、こういったものをいきなり見てしまうと、どれが重要なのか、どれは必須でどれは参考程度でもいいのかというふうな見分けがつかないと思います。生徒さんが学校の授業にちゃんとついて行けていれば大丈夫なのですが、調子がいいときも、個別指導を受けられる環境にあれば、学習の「段階」のようなものをきちんと意識させてあげられた方が絶対に良いので、どうかよろしくお伝え下さい。
最後になりますが、数研出版であれば、主に学校の指導者向けに作られた参考書・問題集データベースである「スタディエイドD.B.」というPCソフトが発売されていて、高校用であればだれでも買うことができます。少々高いですが、これを買えば学校の授業で解説してもらえなかった問題を教えてくれと言われた場合も、最小限のことは教えてあげられると思います。また、家庭教師の場合であれば、もしかすると保護者さんが費用を出してくれるかも知れませんから、交渉されてはどうでしょうか。
普段なかなかお受けしないたぐいのご相談でありましたが、筆者自身も、自分の至らなかったところを振り返って、日々の指導について考え直すきっかけになりました。感謝致します。