数検準2級で扱われる基本事項を1冊で網羅し、検定3回分の予想問題も収録
「数学検定準2級に面白いほど合格する本」(KADOKAWA)
ついにKADOKAWAがここに手を出したか、というのが(ページを開ける前の)第一印象であるが、それはさておき本書は「実用数学検定」(以降「数検」)の対策本。準2級は「高1程度」で、主な出題範囲は中3〜高1内容。同シリーズで「3級」(中3程度)の本も発売されたが、当サイト「水野の数学参考書レビュー[高校数学・大学入試]」で対象とするのは高校数学を扱った書籍につき、本書のみ紹介させていただく。
構成としては大きく第1部「原則編」、第2部「実践編」に分かれていて、後者はいわゆる予想問題3回分(1次、2次とも)とその解説からなる。後者、実践編の解説は、1次検定も含めて詳しく、紙面にもかなり余裕がある。問題は前者、原則編であるが、こちらは第8章まであるうち、第7章まではほぼ基本事項の羅列(原則見開き2ページにつき1テーマで、いわゆる基本事項「数検でるでるテーマ」が5つ程度並び、その右下にいわゆる例題「数検でるでる問題」が1枠ある)になっている。
先発の協会オフィシャル対策本「要点整理」では分野別の練習問題が節末に配置されているところ、それらを予想問題形式にまとめて後半に移動させ、1冊で基本事項の確認と検定の本番シミュレーションの両方ができるようにした感じ、と言えば伝わるだろうか。もちろん、KADOKAWAの参考書お得意の、薄めの赤字による補足に紙面は埋め尽くされ、親切感(?)も感じられる。「こういう」紙面が苦手な人にはおすすめしないが、実際に全部読むかどうかは別にしてこれだけ書かれている、というだけで安心感を覚えられる人もいるだろうから、筆者(水野)としてはとりあえず「気になる人は実際に書店で手にとってみよう」と言っておくことにする(笑)
さて、目を引くのが第8章で、ここでは(ページ数的には少ないが)基本事項そのものではなく、数検で問われる「技能」(測定技能、証明技能などいくつかは2次検定の問題用紙にも明記されている)にスポットをあてている。「整理技能」(思考力を試す部分がメインとなる問題)と書かれた問題は、通常のいわゆる「高校数学の」参考書・問題集では対応しにくいが、大学入試で出題される整数問題などに取り組むうえで基礎となりうる箇所なので、意欲のある人は(本書で扱われている量は少ないが)こういった部分にも目を向けてみよう。また、必要に応じて中学内容に戻って解説しているので、数学が苦手なまま高校生になってしまった人が、受験を意識したときに(実際に検定を受けるかどうかは別として)入試対策の入口における力試しに、本書の「実践編」に取り組み、解けない問題があったら該当する基本事項だけを効率的に「原則編」で復習する、といった使い方も考えられる。
基本事項のページに関して、これだけの公式などを網羅してコンパクトに収めるのには確かに苦労もあっただろうが、全体的にゴチャゴチャして見えるのが残念。検定を受けようかどうか迷っている(が、それほど意識は高くない)人が見ると、量に圧倒されてしまいそうな気もする。「対策本」として見るなら、扱う基本事項はもう少し出題されやすいものに絞り(いっそ見開き左上に「数検でるでる問題」をもってくる?・・・でもそれだと基本事項の使いが中途半端になってしまい、他社の対策本と差別化が図れなくなるか・・・)、もっと「お手軽度」「即効性」の高そうな紙面にするという手も、あったかも知れない。