同シリーズの続編の位置づけ、網羅的学習を補う演習書
「分野別 受験数学の理論 問題集」3場合の数・確率/5数列/6微分・積分(駿台文庫)
同社の「分野別 受験数学の理論」に準拠した問題集が登場。「理論」編では序盤に定義等が並び、最小限の例を扱ったあとはレベルの高い問題をいくつか拾って解説していたが、今回の「問題集」はその間を補いつつ、かなり上のレベルまで含めて網羅的に扱っている。上位を目指したい理系志望者で「理論」編が気に入った人向けに限定するが、薦める場面があるかも知れない。他には、例題のパターン網羅的な学習を「青チャート」の重要例題程度のレベルまで終え、次のレベルに進みたいが、じっくりやりたいのでしっかり解説された本を探しているという人には選択肢に入るかも知れない。
目をひくのは、問題を解くうえでの注意点や代表的な出題パターンなどが分野の最初にまとめて述べられている点。一般の演習書・問題集にあるような、基本事項をただ列挙しただけのような「まとめ」とは一線を画しており、好感が持てる。この部分だけでもかなり読ませる構成であるから、「問題集」というよりこれ自体が1冊の「参考書」になってしまっている感じ。得意分野だけでもいいので、時間をかけて取り組み、一気に高い到達点を目指したい人がいたら、「理論」編とともにチャレンジして欲しい。
逆に、教科書レベルに少々毛の生えた程度の基礎知識しかない一般の受験生が、中途半端に手を出すのは時間と労力の無駄であるから注意したい。たとえば、教科書学習時には触れにくい内容として「一般項が求まらない漸化式で表される数列の極限」などがあるが、入試でも標準以上の範疇に入るこういった問題まで普通に扱われているからだ。まあ、「一般の受験生はお断り」であっても、そこまで扱うことがこのシリーズのウリでもあるわけだし、「理論」編と同様、筆者ごときにあれこれ言えるレベルのことではないから、「このシリーズはこういうシリーズだから、分かって使おうね」という言い方にとどめることにする。
【参考】
「分野別 受験数学の理論」(駿台文庫)は旧課程時代にSEG出版から『受験教科書』というタイトルで発売されていたシリーズで、受験に必要な数学の知識を深く学びたい生徒さん向けに、教科書内容をより深く学び、さらには主に難関大理系学部志望者向けに、知っていると入試で差がつく知識を網羅した力作である。ただ、当レビューでは力作すぎて一般の受験生の皆さんに薦める場面がなく、ある意味では残念。やりたい人は自己責任で、どうぞ。