国公立大入試の標準レベルの問題を分野別に集中的に演習できる良書
「こだわって!国公立2次分野別問題集」(河合出版)
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当記事は「改めて定番書レビュー」06年4月に書いたものです。
執筆当時、すでに旧課程時代の本として認識していましたが、新課程版の分野別演習書・問題集の品揃えが不十分と感じていたため、古本で探す皆さんのために、記事を削除せず残していました。
「2度解く!〜」(旺文社)などの発売も受け、09年2月に「徒然レビュー(再録)」カテゴリに移しています。
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【評価】※1〜10の10点満点
総合:9
得点源にしたい得意分野の強化:9
志望校の頻出分野を集中的に演習:8
難関大志望者の苦手対策:6
全部買う:1
旧課程時代の本だが、国公立の2次レベルの問題集で分野別になっているというだけで存在価値が高く、使いでのある本といえる。もちろん手当たり次第にやるのではなく、このシリーズの特性を理解し、うまく使う必要があるが、ピッタリはまったときの効果は絶大(のはず)。演習書で言えば「1対1対応の演習」(東京出版)のレベルにひととおりメドがついた状態なら、知っている問題を少しひねった程度のものも一定数見つかるようになる。
まず考えられる用途として、記述模試で確実に点がとれる得意分野をつくる目的で使うことが考えられる。たとえば他分野との融合の少ない「確率」などが狙い目になるが(もちろん得意な人に限られるが)、受験勉強のスタートダッシュにこういう本を使えば手っ取り早く「貯金」をつくってしまえる。同様に、志望校が決まったら、志望校で頻出の分野の記述問題をこの本で易しめから難しめまでひととおり押さえることも勧めておこう。
対して、入試標準レベルの問題がほぼ解けるようになってしまえば、過去問対策と並行して逆に苦手対策にこの「こだわって!」を使うことも考えられる。志望校の過去問演習をしていると、苦手分野の問題にはいつも微妙に手が出ずストレスを感じることも多いだろう。そんなとき、この「こだわって!」で目標よりやや下のレベルから段階を踏んでいくわけである。同時に演習量を増やすことにもなり、忘れていた解法を思い出し定着させるのに役立ってくれるだろう。
あえて難を言うと、しょせんこの本は「問題集」なので、どの程度の予備知識が必要か使ってみるまで分からないということがある。解答の指針を述べる部分をもう少し多くしてあれば、たとえば「青チャート」などとの接続がもう少しスムーズになるのでは。とはいえ、メインで使う本は別に用意し、こちらはあくまでサブと割り切るのであれば、あまり気にならない。
【基礎知識】
国公立大入試の記述問題に対応できる力を養うことを目的とした問題集。理系と文系に分かれており、理系は「微分」「積分」「微分・積分総合」「数列・極限」「確率」「行列・いろいろな曲線」「ベクトル」「指数・対数・三角関数」「複素数・複素数平面」「数と式・関数」「図形と方程式」、文系は「微分・積分」「数列」「ベクトル」「指数・対数・三角関数」「数と式・2次関数」「確率」「図形と方程式」「複素数・複素数平面」のラインナップを誇り、高校数学全体をカバーしている(複素数平面は現課程の範囲外になっているのでとばす必要があるが)。なお、理系と文系で同じタイトルのものは、「文系」が「理系」から7〜8割程度の問題を抜粋したものになっているので注意されたい。
収録問題としては、理系で1冊(1分野)あたり約50題。幅広い大学から集めているという印象を受ける。問題のサイズは解答時間にしておおむね15分〜30分程度。難易度は中堅と呼ばれる国公立で合否を分けるものから一部難関大の問題も入るという感じで、国公立大入試の全体像がつかめるようになっている。また、教科書学習時にはあまり触れられないが難関大では頻出と思われる解法が、1冊を仕上げる過程で自然と複数回出てくるようになっていて、本格的な過去問演習前の足固めになる。
同じ河合出版の本では「やさしい理系数学」「理系数学の良問プラチカ」という本もあるが、この「こだわって!」は分野別の強みを生かし、それよりやや易しめから難しめまで網羅しているので、うまく使い分けたい。本による難易度のバラつきも少なく、使いやすい。