百一さんの潤滑油
「粟播きっこ(粟の種まきの日の出来事)」
雪が消えて、北上山地の山々に紅色の「山桜」の花が咲き始めていました。
「山の畑」では、「稗と粟」の「種播き」が待っています。
「稗と粟」の「種播き」ですが、雪が消えて土が乾けば、「ふみ鋤」を使って「畑」を耕し、「畝を立て」ます。
その畝に、「稗」であれば「じき(下肥)」に「稗の種」を混ぜたものを、「手で振って」播きます。また、「粟」であれば畝に「馬の肥え」を入れ、その上に「種を播きます。
「隣の家では、山の畑さ粟も稗も播いてしまったテナ」
「リク」かっちゃんは「隣の農作業」の進み具合が「気になって」いるようべす。
なにしろ、「リク」は冬の間に痛めた腰が、未だに良くなっていないのです。
自分では、とても「ふみ鋤」も押せない按配です。ですから、気だけがあせるようです。
今年の「稗と粟巻き」は「伍介」とっちゃんと「ミヨ」に頼むしかないのです。
「リク」は、囲炉裏のほとりから
「『ミヨ』、畑を耕したが・・・『粟と稗』の種播きの準備してな・・・」
などと叫ぶだけです。
「ミヨ」は、その都度、
「ハイわがりました・・」
と「リク」に答えています。
「『おがさん』の代わりに稼ぎやんすから、『おがさん』は『腰っこ』いたわってユックリど休んでくなんせ・・」
「ウンそうさせでけろ・・」
頼もしいことに、「ミヨ」の若い身体ときたら、「ふみ鋤」で「下半身」を鍛えた所為か、いっそう強靭さが増し、張りが出てきたように見えます。
やがて「粟播き」の日に成りました。
「ミヨ」と「伍介」は「いそいそ」と種播きの準備をしています。
馬っ子に「馬の肥」を山と積み、農具も背負わせました。
「ミヨ」が馬を引きながら、
「それでは、畑に行ってきやんス」
と「リク」に挨拶しました。
その時です、
「それではな・・・今日は『とっちゃんと、稗残して粟ツコ播いてけろ・・』・・わがったナ」
「ミヨ」は、
「ハイ、わがりました・・・『とっちゃんと、稗残して(何故か小声でした)・・・そんで、粟っこ播いて来ますから・・・」
と、「伍介」の方を向いて、「確かめた」ように見えました。
「ミヨ」は 馬っ子を引きながら「伍介」の後をついていきました。
さて、「山の畑」に着きました。
「ミヨ」は、少し恥ずかしそうにしていました。
それでも、思い切って「もんぺ」の紐を「緩め」ました。
驚いたのは「伍介」です。
「伍介」の傍に寄った「ミヨ」は、「伍介」の手を取って「ミヨ」の「火照る処」に押し当てました。
「伍介」は「一瞬」ですが「ひるみ」ました。
それでも、全て理解したのか、「ミヨ」の「火照る処」を「しだき」始めました。
「ミヨ」の「ホト」が「溶け」始めました。
その「手触りとほのかな匂い」は「伍介」にも「敏感」に伝わっていきました。
「伍介」の「清水(スンズこ〕」は、たちまち「漲り」、「脳髄」が痺れるようです。
「ミヨ」は
「おどさん、早く・・・」
と「萱」で作られた「小さい小屋」縺れるようにして倒れこみました。
「ミヨ」の「ホト」の中に、「伍介」の「清水」が包み込まれました。
「ホト」は「蠕動」しながら、「まとわり付き」、時に「強く吸いつき緩め」ます。
「伍介」は、我慢が出来ません。「ミヨ」の中に「清水」をどっと注ぎ込みました。
「ァ・・当たる・・」
「ミヨ」は「伍介」に呟きました。
そのときです「ミヨ」の「門」が閉まり、強い力で「吸い込み」始めました。
「伍介」の「清水」を、一滴も無駄にすまいと「腔」に「吸い込んで」いるようです。「ミヨ」の意識が、薄れていきました・・・。
これが「粟播きっこ」と言われている所以です。
「リク」かあちゃんが「ミヨ」に頼んだのは、
「父ちゃんと協力して、稗の種は後回しにしてまず、粟の種を播いてくれ」
と言ったのです。
ところが「ミヨ」には、「稗(ひえ)」が「へ」に聞こえたのです。ですから「ひえ残して」が「へ・残して」と聞こえたのです。
「ミヨ」にして見れば、「リクおかあちゃん」の命令ですから・・・。
「父ちゃんとへのこ」したまでです。
帰りの馬を引きながら、「ミヨ」の「腹っこ」が少し「ぽってり」と見えたのですが・・・。
今度は、「粟播いてから、稗残すか」・・。
「ミヨ」の独り言です。
どうせ顔も血液型もおなじだし・・。

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