2006/1/29

A pair of gloves  写真・カメラ


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2006/1/22

日曜日の  彼と彼女の風景
お昼を少し過ぎた頃、二人はターミナル駅近くのファーストフード店にいた。

向かい合って座る窓際の席で、会話を楽しみながら笑顔で食事をしている。二人共既にハンバーガーを食べてしまい、フライドポテトをつまみながらコーヒーを飲み、互いの冗談に声を上げて笑っていた。しばらくそうしているうちに映画の上映開始時間が迫ってきたので、二人は店を出ることにした。

「ごちそうさま」と彼女が言った時には彼は既に立ち上がり、トレーを持って返却場所に向かって歩き始めていた。彼女もすぐに立ち上がり彼の後を追ったが、何か違和感を感じていた。

返却場所のすぐ近くにフロア係の女性がいた。トレーを持って近づいて来る彼に「ありがとうございました」と言うと、彼からトレーを受け取った。彼は無言だった。彼のすぐ後ろを歩く彼女がその女性に「ごちそうさま」と言うと、笑顔が返ってきた。

さらに違和感が大きくなってきた彼女は、彼に続いて店の階段を下りながら、何故なのか考えていた。あと3段で階段が終わる頃、彼女はその理由が分かった。理由が分かってしまうと、どうにも我慢ができなくなってきた。彼に続いて店の自動ドアから出て少し歩いた所で、彼女は立ち止まった。

前を歩いていた彼は、彼女が立ち止まったことに気付き、振り返った。
「私帰る」
彼女の言葉に驚いた彼は「どうしたんだ?」と尋ねた。
「私はどうもしていない。どうかしているのはあなた」
そう言われても何のことだかさっぱり分からず、無言でその場に立ちすくむ彼に彼女は続けた。
「挨拶はすべての基本よ」
益々訳が分からなくなり困った表情になった彼に向かって、彼女は
「さようなら」
と言うと、彼をその場に残し、映画館と反対方向にある駅に向かって歩き始めた。

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2006/1/15

ショッピングセンターの  彼と彼女の風景
屋上駐車場に出るドアが開き、右手にコーヒーが入った紙コップを持った彼女が出てきた。

左手に折れて自分の車まで真直ぐに歩き、右のドアを開け乗り込んだ。センターコンソールにあるカップホルダーにコーヒーを置き、運転席の窓を全開にした。

まだ寒い季節の休日の午後、彼女は待ち合わせの場所に15分程早く着いた。昼食後のコーヒーを飲まなかったことを思い出した彼女は、ショッピングセンターに入りコーヒーの専門店を探し出してテイクアウトのコーヒーを買い、自分の車まで戻ってきた。

4.2リッターV8のエンジンを抱えるボンネットの先端には、丸形のヘッドライトが4つ独立に並んでいる。この車の運転席に収まっている時が一番落ち着く時間なのかもしれないと思いながら、彼女はコーヒーを飲んだ。

ほどなく、屋上駐車場に出るスロープを上ってくる車が見えた。この車が自分の車の後ろに付いた時、バックミラーに映るのだろうかと考えてしまう程車高が低い。同じV8だが3.5リッターのエンジンをミッドシップに持つこの車は2基のターボで加給されている。

駐車場に止まっている彼女の車を見つけ、その車は一度前を通り過ぎてからバックで右隣に並んで止まった。左のウインドーが下がると、サングラスをした彼が一枚の紙を差し出した。2枚のドア越しに無言でそれを受け取った彼女は、彼にコーヒーカップを渡した。カップを受け取り、一口飲んだ彼はカップに印刷された店名を確認するように眺めた。もう一口だけ飲んでから、彼はカップを彼女に返した。

数秒の間見つめ合った後、彼は左手を彼女に差し出した。少しだけ首を傾げながら、彼女も左手を出して握手をした。二人の手が離れるのを合図にしたかのように彼の車が発進し、一度だけブレーキランプを灯した後、スロープに消えていった。

こんな紙切れ一枚で二人の人生が変わってしまうのだろうかと、まだ少し残っているコーヒーを飲みながら、彼女は考えた。

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2006/1/8

校門を出て  彼と彼女の風景
彼は緩やかな坂を下ってきた。大きな通りまで出てバス停の時刻表を見ると、次のバスまでまだ10分以上あったので、彼は右手の交差点を渡りコンビニに入った。

いつものチョコバーを買おうと陳列棚を探したが、ちょうど売り切れてしまっているようだった。代わりに何か腹の足しになるものは無いかとその陳列棚を時計回りに回ると、パンの棚の前で両手に一つずつパンを持ってどちらにしようか悩んでいる彼女がいた。近づいていく彼に気がつかない彼女のすぐ横まで来て、彼は「左手に持っているやつの方が美味しい」と言った。

「うわぁ、驚いた。ちっとも気がつかなかった」と彼女は笑った。「私も左のにしようかと傾いていたところなの」と彼に言い、右手に持っていたパンを棚に戻した。
「ここで会うなんて珍しいな。部活の帰り?」と言う彼に彼女は頷き、二人並んでレジに向かった。彼女はレジの横にあるケースから温かいお茶を取り出し、それも一緒に買った。
「俺は肉まんにしよう」

二人でコンビニを出てバス停まで戻り、ベンチに座ってパンと肉まんを食べ始めた。

3口ほど肉まんを食べたところで、彼女がじっとこちらを見ているのに気がついた。
「たべる?」と彼がいうと、彼女は「うん。だってとっても美味しそうなんだもん」と笑った。
「じゃあ温かいお茶と交換ね」
彼は「一口だけだぞ」と言ってから、受け取ったお茶を飲んだ。
大きな口を開けて肉まんを食べ「うん、美味しい」と言うと、彼女はさらにもう一口食べた。

「あ、ずるい」と言う彼に「さっきの一口は交換したお茶の分」と彼女が言った。
「じゃあ今度の一口は?」と彼が問うと「間接キスの分」と答え、彼の目を見てにっこり笑った。

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