2006/2/26

Tiny flowers  写真・カメラ


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2006/2/19

「ねぇ  彼と彼女の風景
こっちのお店でもいい?」
ミスタードーナツの店の前を通り過ぎようとした時、彼女が彼に尋ねた。
「あぁ、いいよ。ちょうど腹も減ってきたし」
「じゃあここにしよう!」

二人でショーケースの中からドーナツを1つずつ選び、コーヒーとともに支払いを済ませ、トレーを持って一番奥の席に向かった。

「これも払ってもらっちゃっていいの?」
「元はと言えば俺が悪いんだから、今日の分は全部おごりだよ」
「でも、眼鏡ができる頃にはお昼になっちゃうよ」
「うっ... じゃあお昼は割り勘で」

二人で笑いながらひとしきり話したあと、彼がつぶやいた。

「今朝会ったとき、コンタクトを勧めようかと一瞬思ったんだけど、考え直したんだよね」
コーヒーを一口飲んでから、彼女は答えた。
「どうして?」
「眼鏡無しの君がとっても素敵だっていうことを皆が知ってしまうと、競争率が高くなりそうだから」
「え... それってひょっとして...」
彼は自分を落ち着かせるように、ゆっくりとコーヒーを飲んでから言った。
「そう。つきあってください」

彼がこんなに緊張しているのを見るのは初めてかもしれないと思いながら、彼の目をじっと見つめ、
「どうしようっかなぁ...」
と、いたずらっ子のような笑みを浮かべて、彼女が言った。

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2006/2/12

駅前の  彼と彼女の風景
花壇の周りにあるパイプでできた手すりに腰を下ろし、彼は彼女を待っている。

午前10時の待ち合わせより5分ほど早く、彼はここに着いた。
両手を上着のポケットに突っ込み、駅から出てくる人の流れを見るとも無く見ていた。

あと5m位の距離まで近づいて初めて、それが彼女であることに気がついた。見慣れた制服ではないうえに、いつもうしろで結んでいる髪を解いている。さらに眼鏡をしていないので、まるで別人のようだ。教室で、いつも斜め前の席に座っている彼女はこんなに美人だったのかと、彼は改めて思いながら、近づいてくる彼女に手を振った。

彼女も彼に気付き、笑顔になって小走りに近づいた。
「おはよう。ちょっと遅れちゃってごめんね」
「おはよう。制服じゃないとなんだか感じが違うね」
「そうかなぁ? きっと眼鏡が無いからじゃない? 今も手を振ってくれなければ、あなただって分からなかったかも」
「そんなに目が悪かったのか...」
「中学1年の夏くらいに、一気に悪くなっちゃったの。それからずっと眼鏡。本の読み過ぎだってみんなに言われた」
笑いながらそう言う彼女を見ていた彼は
「さて、出かけるか」
と言うと立ち上がり、彼女と並んで駅前通りに向かった。

二人は眼鏡屋に着くと店員に予算を告げ、いくつか候補を選んでもらった。彼女は次々に取り替えては鏡を覗き込んでいる。5分程そうしているうちに、彼女は候補を二つに絞った。
「どっちが良いと思う?」
「今かけているやつの方が似合うよ」
「やっぱり? 私もそう思ったけど、こっちの方がちょっと高いのよね。大丈夫?」
「全然OK」
彼女はフレームを決めたことを店員に告げると、検眼室に入っていった。
彼は店内をぶらぶら歩き回り、サングラスをかけたりしながら時間をつぶした。

「今回は度が進んでなかったみたい」
検眼室から出てきた彼女は、なんだか嬉しそうに彼に言った。
1時間くらいでレンズの加工が終わるというので、二人は支払いを済ませたあと一旦店を出た。

「マクドナルドに行ってコーヒーでも飲もうか?」
そう言う彼に彼女は頷くと、
「こうしているとなんだかデートみたいだね」
と、ニコニコしながら彼の左腕につかまった。

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2006/2/5

左脇に  彼と彼女の風景
本を抱えて、彼女が廊下を歩いている。

休み中に何か読もうと放課後図書館に寄ってみたら、新しい本が入っていたので2冊借りてきた。
もう少しで教室の後ろの入り口にさしかかる頃、右目のふちがかゆくなったので、彼女は眼鏡の内側に人差し指を滑り込ませた。右目を閉じて目をこすりながら教室に入ろうとした時、飛び出してきた男子とぶつかった。

バランスを崩した彼女が伸ばした右手が眼鏡を跳ね飛ばした。尻餅をついた彼女の右手のすぐ横で、レンズの割れる音がした。彼の右足が眼鏡の左のつるの付け根を踏んでしまっていた。
「ごめん、大丈夫だった?」
と彼が差し出した手に引かれ、彼女はゆっくりと立ち上がる。

彼は年明けの席替えで彼女の斜め後ろの一番窓際になった。日頃あまり話をしたことはないけれど、休み時間になると友人達と楽しそうな笑い声をあげている。

「私は大丈夫。でも眼鏡が...」
そう言い終わる頃には、彼はフレームが歪んでしまった眼鏡と、いくつかに割れてしまったレンズをを拾い上げていた。
「本当にごめん。俺、弁償するよ」
「え、いいの?」
「ぶつかったのも踏んづけたのも俺だから。それに、今日はちょうどバイトの給料日だし」
「なんだか悪いみたい...」
「今からバイトなんで今日はダメだけど、明日眼鏡を買いにいこうか? 都合はどう?」
「明日は本を読もうと思っていただけだから... でも、本当にいいの?」
「うん。朝10時に駅前で待ち合わせでどう?」
「わかった。明日の朝10時、駅前で」
「本当にごめんな。じゃあまた明日」
そう言うと、彼は廊下を走って行った。

自分の席に戻り、2冊の本と壊れた眼鏡をバッグにしまった彼女は、ふと窓の外を見た。
ちょうど校門を走り抜けて行く彼らしき姿を見つけ、彼女は思わず笑顔になった。

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